米国で1年以内に結婚を予定しているカップルの7割以上が結婚式の費用を借りるつもりで、6割以上がクレジットカードの利用を予定していることが分かった。

米国の2017年の平均的な結婚式費用は3.3万ドルと減少傾向にあるが、ゲストひとり当たりにかける費用は過去最高水準に達していたという。「豪華な結婚式を挙げなければ」というプレッシャーをメディアなどから感じているカップルが、10年間で2倍に増えている。

しかし6割以上は平均的な価格よりも低くおさえようとしているなど、経済的な価値観の差が目立つ。

1割以上が結婚式のために500万円を超える借金を計画

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(画像=Africa StudioShutterstock.com)

米学生ローンサイト「スチューデント・ローン・ヒーロー」が2017年2月、1年以内に結婚を予定している米国の成人1063人を対象に調査を実施したところ、74%が費用を借金するつもりであることが明らかになった。

30%が1万ドル(約110万円*2018年5月9日為替レート、1ドル=109.7円で換算)未満、16%が1万以上〜2万ドル(約110万〜219万円)未満の借入を希望している。

回答者の70%が貯蓄、53%が給与で費用の一部または全額をおぎなう予定である一方で、61%がクレジットカード、21%が個人ローンでの借り入れ、52%が家族や友人の援助を費用のあてにしている。この質問では複数の回答を選べたため、例えば貯蓄と給与、あるいは貯蓄で足りない分をクレジットカードや個人ローンで補うといったパターンも考えられるだろう。

クレジットカードで借りる予定の回答者のうち、22%が「すぐ全額返済するつもり」と答えているが、10%は「1年以上かかる」と予想している。返済期間が長くなるほど金利がかさんでいくことはいうまでもなく、新婚生活を負債の返済でスタートさせることになる。

結婚式で重要な要素は「ゲストへのおもてなし」?

多くのカップルが結婚式の費用を借金するのはなぜなのか。

結婚式情報サイト「The Knot」の調査によると、2017年に結婚式を挙げた米成人1.3万人の平均費用は3.3万ドル(約362万ドル)。ハネムーン費用はここに含まれない。平均的な支出やゲスト数は年々減っている反面、ゲストひとり当たりにかける費用は平均268ドル(約2.9万円)と過去最高額だ。

特にゲスト用にカスタマイズされたエンターテイメント(式場での演奏・花火・セルフィーステーションなど)にお金をかけるカップルが多い。2009年と比べるとゲストひとり当たりにかける費用はほぼ140%増、エンターテイメント費用は40%増である。

そのほかの内訳は結婚式場1.5万ドル(約165万円)、指輪5764ドル(約63万円)、写真2630ドル(約29万円)、装花・デコレーション2379ドル(約26万円)、タキシード2311ドル(約25万円)、ウェディングドレス1509ドル(約17万円)など。

ゲストを50人招くとゲストの費用だけで1.3万ドル(約143万円)以上になる。つまり総費用のおよそ4割をゲストのために使うということだ。最近のカップルにとって「ゲストをもてなす結婚式」がいかに重要な要素かがよく分かる。

2割が結婚式の費用でストレスを感じている

しかし後先をあまり考えず、豪華な結婚式に憧れるカップルばかりではない。借金をしないで結婚式をする予定の回答者も27%いる 。

また63%は費用を平均よりも低い3万ドル以下におさえると答えている。23%は1万ドル以下という低予算でおさえようとしているほか、24%が1万以上2万ドル以下での結婚式を予定している。

多い・少ない問わず、10人に1人が予算を決めており、48%がかなり細かく支出を振り分けている。51%が経済的な理由から結婚式を1年あるいはそれ以上延期するなど、理想の結婚式の実現よりも将来的な経済状況を優先させている。

結婚式の費用に関するストレスも珍しくない。23%が「ある程度あるいは相当ストレスを感じている」と答えた。「結婚式の費用を出す経済的余裕がない」のは38%。

71%が贈り物、55%が現金、38%がハネムーン費用を、家族や友人に頼んでいる。

女性より男性の方が結婚式費用のプレッシャーを感じている?

豪華な結婚式が新郎新婦の希望ではないケースも少なくない。63%が「豪華な結婚式を挙げなければ—というプレッシャーを、家族・友人・社会から感じている」。こうした傾向は男性に強くみられるようだ。家族からのプレッシャーを感じている男女の割合はそれぞれ34%、27%で、友人からのプレッシャーを感じている割合はそれぞれ24%、14%だ。

ライフスタイルライター、ナターリヤ・ゴンチャローワ氏は、メディアからプレッシャーを感じているカップルが、過去10年で20%超えから40%へ増えている点も指摘している。インターネットでより多くの情報が簡単に手に入る上に、SNSで自分の生活を世界中に発信できる時代だ。「SNSでほかのカップルのようにインスタ映えする結婚式を挙げないと」「Facebookで世界中の人にみせびらかしたい」という気持ちになっても、不思議ではない(リファイナリー29、2017年5月19日付記事)。

「スチューデント・ローン・ヒーロー」の調査員アリサ・カーカム氏は、借金をしてでも盛大な結婚式を挙げたいという人々の心境を、「結婚式は自分の感情や価値観と深く結びついた人生の一大イベントであるから」 と分析している。たった数時間のイベントのために新生活を借金とともにスタートさせるか、その分のお金を新生活や将来の住宅ローンの一部などにとっておくか—まさしく個人の価値観が試される。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)