相場格言では「小回り3カ月」という。3カ月程度で相場の短期的な流れが変わるという意味だ。ところが最近は「小回り2カ月」。営業日でいうと40日前後で潮目が変わる。
昨年秋、日経平均が16連騰という新記録を更新した上昇相場は9/8を起点に、11/7の高値まで40営業日続いた。そこから一旦調整局面に入る。2万3000円の壁が意識され、終値で2万3000円を超えられずに結局越年に至った。この揉み合い期間が38営業日。年明け、一気に2万3000円をクリアして2万4000円超の年初来高値まで駆け上がる。その高値をつけたのが1/23。そこから一転、下げ相場に転じ底が入ったのは3/23。下げ相場でも、やはり丸2カ月で底打ち~反転上昇に転じている。その3/23の安値から今週月曜日2万3000円の大台回復までが39営業日。そろそろ潮目が変わるころだった。ここから2カ月程度の調整局面入りか。
調整といっても下げは限定的でボックス相場で日柄調整だろう。ここから2カ月というと7月下旬。ちょうど第1四半期の決算発表が始まるころだ。1-3月期は世界的に景気が減速したが、4-6月期は米国減税効果の顕在化もありグローバル景気も勢いが戻るだろう。企業の第1四半期の決算も良好なものとなると思われる。日本株相場は、それを確認してから再度上昇基調となろう。第1四半期の決算では堅調さは確認できても、まだ上方修正に踏み込む企業は少ないだろう。通期予想を据え置いても、第1四半期が好調なら進捗率などから先行きの上方修正期待が高まり、バリュエーションを切り上げる格好で株価水準は上昇する。次の上昇局面で年初来高値に迫るだろう。
終了した決算発表では例によってポジティブ・サプライズ、ネガティブ・サプライズで株価が大きく反応した。グラフは、TOPIX500構成銘柄で4月下旬から5月半ばに決算を発表した銘柄(すなわち3月・12月決算企業)を対象に、決算発表の翌営業日の株価騰落率の大きさで5分位に分け、その決算発表の翌営業日から日経平均が2万3000円の大台を回復した今週月曜日(5/21)終値までのパフォーマンスを見たものだ(第1分位はもっとも決算発表翌日の上昇率が高いグループ。反対に第5分位は下落率が大きいグループ)。取引時間中に発表した銘柄の取り扱いは難しいため、一律翌日の株価の反応で分位分けした。よって厳密さは欠くが、おおよその傾向はつかめるだろう。
直感と違うのは第5分位のパフォーマンスがもっともよいという点だ。ネガティブ・サプライズで一旦は売られるが、だいたい過剰反応であることが多いため、その後見直し買いが入って株価が戻るケースが少なくないということを示している。会社側発表の数字がコンセンサスに届かなかった銘柄はプログラム売買が文字通り機械的に「失望売り」と対処することも一因だろう。
例えばエムスリーやシスメックスといった好業績の医療関連は決算発表翌日に6%前後の急落となったがその後再評価され下げ幅を埋めている。エムスリーは窓埋め完了、シスメックスに至っては高値更新である。
次によいのは第1分位。好決算を受けて株価が跳ねるが、その後も勢いを保つ銘柄が多いということだ。順張りが報われるということでもある。好業績を確認して上がった銘柄に素直について正解ということだ。
トクヤマ、太陽誘電、スタートトゥ、カプコンなどがこのグループである。さすがに利益確定が入って最近では上値が重くなっているが、決算で上に放れてなお上昇した銘柄である。
この第1分位でも最上位にくるのが資生堂だ。「疾風に勁草を知る」と推奨してから抜群のパフォーマンスである。それゆえ決算で大きく買われてからは上値を追えないが、それでも下げない。日経平均は今週は9週ぶりに下げて終わりそうだが、資生堂は逆行高。再度、高値をつけにいく態勢である。
そして名古屋セミナーや「Market Talk」でも改めて強調した僕のトップピック、リクルートHDもここに分類される。まったく押し目を拾うチャンスすらない。<データ至上主義>と<強い個性の人間力>の組み合わせ。最強のビジネス・モデルである。
広木隆(ひろき・たかし)
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト
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