東南アジア諸国連合(ASEAN)の10ヵ国の総人口は6億人を超えており、巨大な市場を形成しています。シリーズCラウンドでは史上最大規模の資金調達(8,700万ドル)を行った物流スタートアップ「Ninja Van」の話題が2018年の1月から世の中を沸かせるなど、東南アジアのスタートアップが勢いを増しています。そこで、東南アジアの勢いのある企業を3つ紹介しましょう。
スタートアップ・エコシステムが東南アジアでは形成されている
東南アジアはここ数年、ベンチャーキャピタルなどからの投資が増えていると言われています。日本のベンチャーキャピタルや企業も、東南アジアの国々に投資を行ったなどの報道が行われることがありますが、なぜ東南アジアへの投資が増えているのでしょうか。
これは、スマホの普及が進んでいることに加え、政府の後押しも大きいことが要因です。新しいアイディアやイノベーションによって企業が成長すれば、雇用や市場の拡大につながるためです。インターネットの発達により、世界のどこにいても成功しているベンチャーのことを調べることができる環境があります。それにより、起業家が自分でもやってみようとチャレンジができる土壌が生まれているのです。
東南アジアではシンガポールを中心にスタートアップが生まれているだけではなく、それらのエコシステムが徐々に形成されています。2017年にStartup Genomeが出した「Global Startup Ecosystem Report 2017」によれば、2017年の世界のスタートアップ・エコシステムのランキングでは12位にシンガポールがランクインしています。なお、1位がシリコンバレー、2位がニューヨーク、3位がロンドンです。日本は上位20位内にランクインしていません。
東南アジアの国々がスタートアップ・エコシステムを形成するのには、シンガポールのようにイノベーション大国としても自分たちの地位が欲しいと思う国もあれば、インドネシアやフィリピンのように国として更なる成長を遂げるために生産性を引き上げようと考えている国もあります。また、ベトナムのように産業国としての仲間入りを果たしたい国など、理由はさまざまですが、共通しているのは、国として新しい企業が生まれ、成長することを歓迎している点だといえます。
配車サービス「Grab」-東南アジアのUber
配車サービスGrabはハーバードビジネススクール卒のアンソニー・タン氏とタン・ホーイ・リン氏によって2012年に設立されました。本拠地のシンガポールのみならず、マレーシア、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピンでサービスを展開しています。
GrabはUberとほぼ同様の配車サービスです。基本的にGrabはタクシーと比べても乗車料金が安く、乗車前に料金とルートが確定するのでぼったくりに遭う心配は不要です。ドライバーは提供されるGrabアプリのナビゲーションに従って運転しているため、道を間違うこともなく乗客はフラストレーションがたまりません。
そして、GrabはUberと異なり、ドライバーが登録する際に面談を行っています。これによりドライバーの質の向上と安全性の確保に成功したのです。
これらの利用メリットが東南アジアの人々に支持され、東南アジア各国で日常的に利用されるサービスとして根付いています。
ECサイト「Lazada」-東南アジアのAmazon
ECサイトLazadaは2011年にインキュベーターRocket Internet社によって設立され、シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピンでサービスを展開しています。
ちなみにRocket Internet社はシリコンバレーのビジネスのクローンをアジアやヨーロッパに移植することで知られているインキュベーター。Ladazaも東南アジアのAmazonのクローンと呼ばれています。実際、Amazonとの共通点も多いです。
Amazonの強みは配送センターを充実させる物流にあるといわれていますが、同様にLazadaも物流に力を入れています。Amazon同様に出品者はLazadaに配送業務をアウトソーシングでき、簡単に商品を販売することが可能です。
LazadaサイトはAmazonと似た商品基準のサイト構成となっており、ユーザーは商品名から簡単に商品を探すことができます。商品ページは複数ページではない1ページのみに限定しており、消費者を混乱させません。Amazon同様に消費者にとって使いやすいサイト構成となっています。
しかし、LazadaはAmazonと異なる点もあります。それは出品者の利益についても考慮がなされている点です。Amazonの場合、消費者は返品が容易にできます。これがAmazonの出品者にとって大きな負担となっています。Lazadaでは出品者に不備がある場合以外に返品は受け付けていません。Amazonのクローンでありながらも、東南アジア現地に合わせたローカライズをしている点が興味深いです。
ホテル予約サイト「Hotel NIDA」-提携ホテルの空室を販売
ホテル予約サイトHotel NIDAは2015年にインドネシアを拠点に設立されました。マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピンでサービスを展開しています。
Hotel NIDAはビジネスモデルがユニークです。提携ホテルの空室を低価格で販売し、さらに部屋の質の高さをHotel NIDAが担保しています。
東南アジアにおいては安いホテルであれば部屋が汚い、Wi-Fiがない、エアコンが効かないことが多々あります。そこでHotel NIDAは提携ホテルに同社のスタッフを派遣して部屋を点検し、部屋の質を保証します。Hotel NIDAは宿泊客から支持され提携ホテルの数も増大し、現在提携しているホテルは4,000以上となっています。
東南アジアのスタートアップの勢いはこれからも続く
上記スタートアップと同様のビジネスモデルのスタートアップは、シリコンバレーにも存在します。しかし、上記のスタートアップは東南アジア現地に合わせてローカライズし、成長を遂げているのです。ITサービスといえどもユーザーは人間。ユーザーの性質や置かれた状況に合わせたサービスこそが支持される条件だといえます。
東南アジアのスタートアップは各国の政府やベンチャーキャピタルの後押しを受け、更なる成長を遂げることでしょう。東南アジアから21世紀を担う起業家が多く生まれ、世界中にその名を轟かせる日も近いのではないでしょうか。(提供:J.Score Style)
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