中国で白領(ホワイトカラー)という呼び名が誕生したのは1951年のことだった。新興の中産階級を表す、新時代の誇らしさ、輝きを伴う響きがあった。もちろん頭脳労働のエリートで、その高い所得は、羨望を集めていたものだ。

それから60年以上が経過した。今でも“白領”は中産階級の中心なのだろうか。ニュースサイト「今日頭条」が、ホワイトカラーを分析した。給与所得ではすでにワーキング・プアではないか、との見方さえある中、“白領”の本音とは、どのようなものだろうか。

ホワイトカラーの心境

中国経済,意識調査,転職
(画像=PIXTA)

求職サイト・智聯招聘は、2万8270人のホワイトカラーに聞き取り調査を行い「2018年白領生活状況調査研究報告」にまとめた。以下ポイントを見ていこう(1元=0.16ドル、17.2日本円)。

白領は孤独感に苛まれている

快調なリズムで、充実した生活に見えても、白領たちは孤独感を払拭できない。彼らの情緒や感情は、決して明るいものではなく、52.9%は、日常生活において孤独を感じる、と答えている。

孤独を脱するために、何が必要かという問いには、金儲けと答えたのは39.4%、伴侶22.2%、友人14.6%の順だった。孤独感は“銭”で解決したいようだ。

白領は焦燥に駆られている

彼らの間には、焦燥感が蔓延している。白領の94.9%が何らかの焦りを感じていて、それらは日常生活に影を落としている。29.9%は、希望するレベルの生活ができていない。27.9%は個人の職業発展、つまり出世の見通しは立っていないと答えている。

ホワイトカラーの職場環境

白領は報酬に不満。現状からの脱却を渇望している

彼らの能力は高い。しかし白領の66.5%は、自分の報酬は、能力に見合ったものではないと考えている。不遇を嘆く気持ちは高まるばかりで、スキあらば転職のチャンスを狙っている。

40.9%は、低い報酬の原因は雇主側に問題があるとしている。見る目がないのだ。

白領は常に待遇改善を求めてやまない

彼らは常に不遇と感じている。実際に34.5%は、これまで昇給経験がない。31%は昇給したが、1~10%の小幅に過ぎず、焼け石に水である。6割近くの人は、物価上昇などの生活圧力をかわすには30~40%の昇給が必要と答え、常にワーキングプア化する恐れを抱いている。

そして36.6%は、1年以内に転職の計画を持っている。

最先端ホワイトカラーたちの群像

マッキンゼーの定義によると、中国の中産階級の収入を1万3500~5万3900ドルとしている。フォーブス誌は1~6万ドルとみており大差ない。中国国家統計局の定義では5~42万元(8000~6万7200ドル)である。

ここでは最先端の中産階級を、収入10万元(1万6000ドル)以上と定義し、“新鋭白領”と呼ぶことにする。彼らは次のような特性を持つ。

生活の質を重視

彼ら新鋭白領の32.7%は、昼食に21~30元(360~517日本円)20.4%は31元~40元を消費する。普通の弁当なら12元程度から買えるため、日本なら1000円~2000円を費やしている感覚だ。

また32.9%は、住宅ローンを抱え、29.1%はマイカーを所有している。

人は孤独と向き合わなけばいけないという人生観・哲学

新鋭白領は、孤独に直面したとき、一般人のように娯楽に走ったり、仲間内に逃げ込んだりしない。自己を見つめ直し、学習する好機と考える。人は生涯、孤独と伴走していかなければならない、という哲学を持つ。

一方、仕事においては、科学的な態度、積極的な表現を旨としている。仕事の計画は具体性に富む。

将来への焦燥

高給の職位を維持するため、才能以外にも代価を払わざるを得ない。新鋭白領の42.6%は、仕事のプレッシャー、早出残業などが、健康被害をもたらしている、と答えた。

将来に対する不安の根源は、企業成長の限界を垣間見てしまうこと、仕事と生活の平衡が崩れることの2つである。

タフ・ネゴシエーターに陰り?

かつて「一億総中流」の空気を嗅いだ記憶のある、日本人ホワイトカラーなら、新味はなく何をいまさら、といった感想を持つかも知れない。

しかし中国のホワイトカラーたちは、ここへきてついに最先端の産業社会のきしみに翻弄されるようになったのである。この面でもグローバルスタンダードに近づいたといえるだろう。

タフ・ネゴシエーターだった中国人も、ワーキングプア化の恐れを抱えた、ごく普通の悩めるサラリーマンとなりつつある。今後、中国人との交渉はやりやすくなるかも知れない。じっくり見極めたいところである。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)