サッカーのワールドカップ、ロシア大会が開幕した。ロシアは2013~18年の間に108億ドルを投じている。これは150億ドルの経済効果を見込んでのことだ。

しかし実はスポンサー獲得には苦心した。FIFAは2015年5月の汚職事件によって、スポンサー離れを招いたからである。ジョンソン&ジョンソンやソニーなどのスポンサー撤退した後、カタール航空や中国企業がその穴を埋めたようなかっこうだ。

「新浪財経」「東方体育」など多数のネットメディアが、ワールドカップにおける中国企業を特集している。

3カテゴリー7社のスポンサー

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(画像=PIXTA)

サッカーワールドカップのスポンサー契約には3つのカテゴリーがある。

一つ目はFIFAとのパートナー契約である。コカ・コーラ、アディダス、ガスプロム、カタール航空、VISA、現代自動車、に加え中国不動産大手の「万達集団」が名を連ねている。

二つ目は、ワールドカップ大会のみのスポンサー契約である。バドワイザー、マクドナルドに加え、3社の中国企業が契約を締結した。家電の「海信/ハイセンス」食品の「蒙乳」スマホの「VIVO」である。

三つ目は、アジア地区リージョナルサポーターで、中国企業はバイクの「雅迪集团」VRの「指点芸境」紳士服の「帝牌」の3社である。

以上7社の中国企業がロシア大会を支えている。情報によると、パートナー契約の年間費用は1億8000万ドル、ワールドカップ契約は1億ユーロといわれている。リージョナルは公開文書に明示されており、2000万ドルである。

ブラジル大会では大きな効果

約1ヵ月の大会期間中、スポンサー企業の投入する広告費は24億ドルにのぼる。そのうち中国企業7社は8億3500万ドル、35%を占める。米国は4億ドル、開催国ロシアは6400万ドルにすぎない。

前回2014年、ブラジル大会の中国企業スポンサーは、太陽光発電パネルの「英利」1社だった。今回7倍増となったことを“大爆発”と表現するメディアもある。中国企業は、ロシア大会の屋台骨を支えているといってよい。

その英利はどのような宣伝効果を得たのだろうか。中央電視台(CCTV)によると、2014年ブラジルワールドカップ期間中、試合と関連番組の視聴者は、7億9000万人、累計視聴時間は34億時間だった。平均視聴率は13%を上回った。モスクワ大会は、時差も小さく、関心はさらに高まると思われる。

企業は自社ブランドを、メディアのど真ん中へと投入することができるのだ。通常の営業費用を大きく上回る効果を見込める。

2010年~2014年に第二カテゴリーのワールドカップスポンサーだった英利の販売(電力)量は、2010年から、1.06、1.64、2.3、3.2(単位ギガワット)と大きく伸び、知名度も大いに上がった。

中国企業は成功するか

今回第二カテゴリーのスポンサーとなった蒙牛集団は、試合会場で飲料やヨーグルトを独占販売する。海外進出、世界的ブランドへの大きな一歩となる。

蒙牛集団は自社の4大商品カテゴリー、27ブランド161の商品を、次々とワールドカップ仕様にモデルチェンジしている。また大会期間中、蒙牛アプリ使用で値引き、スタンプカード値引きなど、さまざまな販促活動を行う。そしてもちろん英利以上の経済効果を狙う。

ロシア大会は、FIFAにとって2015年の不祥事発覚後初めてのワールドカップである。この間、スポンサー構成は中国企業へ大きくシフトしていた。とにかくスポンサー企業にとって最大のイベントが始まった。テレビ中継で彼らの存在を確認できるだろうか。裏の楽しみの一つとして注視しておきたい。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)