中国の国家衛生健康委員会が6月中旬に発表した「2017年健康事業発展統計公報」(公報)で、2017年の新生児出生数は1758万人で、2016年の一人っ子政策廃止以来2年目にして、“二人目”が50%を超えたことが分かった。「捜狐網」「網易新聞」など多くのメディアが取り上げている。日本と比較しつつ、中国の人口動態をみていこう。

二人目、出生の過半数を超える

中国経済,高齢化,人口
(画像=PIXTA ※写真はイメージです。)

2016年1月“全面二孩政策”二人っ子政策が正式に導入された。政策の成否は各界の注目を集め、世界も注視した。公報によれば、2017年の全国新出生嬰児数は1758万人、二人目の比率は51%である。国家衛生健康委の責任者は、出生人口規模は平穏を保っている、と評価した。

その1年前、2016年の数字からみていこう。同年の新出生嬰児は1846万人、合計特殊出生率は1.7を超えた。これは2013年に比べ200万人増加している。そして二人目の比率は45%だった。

2013年は一人っ子政策末期のどん底の数字だろう。それに対して2016年は、解禁1年目である。そこですでに45%、つまり831万人が二人目だったのである。それでも底の時期から200万人しか増えていない。もし解禁していなかったら、出生数はどれだけ減少していたのだろうか。

2017年は、二人目比率は45%から51%へ増加した。しかし総出生数は1846万人から1758万人へ88万人、5%減少している。

日本との違いは?

ここで日本の状況と比較してみよう。日本では2016年に初めて出生数が100万人を下回った。97万6979人で、合計特殊出生率は1.44だった。2017年は、推計値94万1000人とさらに減少している。

内閣府は、少子化進行の原因として、未婚化・晩婚化の進行や第1子出産年齢の上昇、長時間労働、子育て中の孤立感や負担感、を挙げている。日本政府は2007年以降、少子化対策担当大臣を任命し、対策に取り組んできた。それにも関わらず2017年の出生数は、統計のある1899年以来の最低数となっている。

また日本の乳幼児死亡率(1000人当たり死亡数)は2.0と世界で最も低いレベルにある。中国はどのくらいだろうか。今回の公報によれば、乳幼児死亡率は7.5%から2017年には6.8%に下降し、中高収入国家の平均的水準になったと評価している。しかし日本に比べれば、まだ改善の余地は大きい。

出生率の低下は続く?

しかし解禁と同時に二人目の比率が45%というのは、どうもしっくりこない。これは2013年以降、一人っ子政策の執行が緩み始め、実際は解禁以前から、二人目の比率は上昇していたためと思われる。中国人には、法律や規則を前にして、行動を躊躇するような感性はない。バランスが崩れれば、もう当局の力など及ばないのだ。

2017年の出生数が88万人減少した原因は、第一子出生の減少にある。直近の結婚数を調べてみよう。

2014年 1306万7000組 2.98%減(前年比、以下同)
2015年 1224万7000組 6.3%減
2016年 1132万9000組 7.5%減

どんどん減っている。第一子減少の直接的な理由に違いない。それでは、結婚減少の原因はどのように説明されているのだろうか。

・経済的なプレッシャー、終身の大事だが本当に幸福になれるかどうかわからない。この30年で中国人の結婚にかけるコストは1000倍になっている。
・現代女性の要求は厳しい。結婚と同時にマンションを手配して当たり前である。
・結婚に至るには、結婚コストと相手の条件を、両親に丸投げするほどのあつかましさが必要である。

結婚は精神的にも経済的にも、相当な苦痛となっているのがわかる。これは内閣府の挙げる原因や日本社会の感覚とも大差ない。結局、産児制限をしようがしまいが、生活水準が上がり、高等教育を受ける人が増えれば、出生率は下がる。しかし一人っ子政策の当時は、そうした確信はなかったのだ。

中国社会の先進国化は、若い世代の進出とともに急速に進んでいる。出生数の低下は、これから当分の間続くのではないだろうか。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)