不動産投資物件の広告を見ると必ず目に付くのが「利回り」だ。それもそのはず、「不動産投資」にとって「利回り」は非常に重要な投資指標であるため、価格と並んで一番目立つように表記されていたり、検索条件項目になっていたり、「利回りランキング」などの見出しで大きく取り扱われていることも多い。

しかし、広告に表示された利回りが高い物件が必ずしも優良物件ではないという事実をご存じだろうか? 優良物件を見分けるには「実質利回り」の算出方法を知って、「真の利回り」を知ることが重要だ。

不動産投資広告における「利回り」は「表面利回り」のこと

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(画像=PIXTA)

不動産投資物件の広告で頻繁に目にする「利回り」とは、想定される年間賃料総額を単純に物件価格で割ったものだ。これは「表面利回り」(グロス利回り)と呼ばれており、不動産投資の目安として検索項目に用いられるのが一般的だ。広告に記載された「利回り」が高ければ、投資家が該当する物件の詳細情報を目にするきっかけにもなる。

この種の広告で頻出する「利回り」については、大抵の場合、物件ごとに次のような注記が付けられている。

「利回りは、満室であると想定した上での想定賃料を用いて、(共益費等を含む年間賃料総額÷物件価格)で算出される単純利回りを表しています。なお、この利回りには固定資産税・管理費等の必要経費は控除されていません」

つまり物件ごとに違う現況や立地条件、各種経費などが一切加味されていないことが明記されており、単純に表面利回りだけで他の物件との比較ができないことを示唆している。

利回りには「表面利回り」と「実質利回り」がある 重要なのは「実質利回り」

不動産投資物件の広告に記載されている「表面利回り」があくまで目安でしかないならば、投資家は何を見て利回りの良しあしを判断すればよいのだろうか? その答えとなるのが「実質利回り」(ネット利回り)だ。

実質利回りは、年間の家賃収入から、不動産運営に不可欠な管理費や固定資産税等の諸経費を差し引いた金額を、投資金額(物件価格+登録免許税など購入時における諸経費)で割って算出される。

このように、同一の物件であっても、目に見える「表面利回り」と物件の現況や経費等を反映した「実質利回り」では算定要素が違う。当然、利回りの数値にも違いが出てくるので、投資判断をする際には必ず「実質利回り」を確認する必要がある。

表面利回りと実質利回り 計算するとこんなに違う

次に、簡単な例を用いて表面利回りと実質利回りの違いを確認してみたい。 購入資金は全額自己資金であると仮定する。

「一棟売りアパートA」(1K×全6戸賃貸中)
・物件価格 4500万円
・年間賃料総額 432万円(1戸 6万円/月)
・年間管理費・修繕積立費等 7万2000円(1戸 1000円/月)
・購入時諸経費(不動産仲介手数料・登録免許税等) 170万円 
・固定資産税 9万円/年

「一棟売りアパートB」(2DK×全4戸賃貸中)
・物件価格 5000万円
・年間賃料総額 480万円(1戸 10万円/月)
・年間管理費・修繕積立費等 24万円(1戸 5000円/月)
・購入時諸経費(不動産仲介手数料・登録免許税等) 190万円 
・固定資産税 17万円/年

●表面利回り

一棟売りアパートAの場合
(年間賃料総額432万円)÷(物件価格4500万円)=0.096 →9.6%
一棟売りアパートBの場合
(年間賃料総額480万円)÷(物件価格5000万円)=0.096 →9.6%

●実質利回り

一棟売りアパートAの場合
(年間賃料総額432万円−年間管理費・修繕積立費等7万2000円−固定資産税9万円)÷(物件価格4500万円+購入時諸経費170万円)=0.0890
→8.9%
一棟売りアパートBの場合
(年間賃料総額480万円−年間管理費・修繕積立費等24万円−固定資産税17万円)÷(物件価格5000万円+購入時諸経費190万円)=0.0845
→8.5%

アパートAとアパートBの案件の場合、不動産投資物件の広告上に記載される利回り、つまり表面利周りは同じ9.6%で同じになる。しかし、年間諸経費や購入時諸経費を加味した実質利回りを見てみると、アパートAは8.9%、アパートBは8.5%と、いずれも表面利回りより若干低くなり、両物件の実質利回りにも違いが出てくる。

投資物件を購入して実際に不動産経営を始めると、購入時に掛かった諸費用以外にも、月々の管理費や修繕積立金等をはじめとしたランニングコストや毎年納付が必要な固定資産税は必ず経費として発生する。このことを考慮に入れて、投資物件を選ぶ際には、一見して分かる表面利回りは物件の絞り込みの目安程度に考えて、自分自身で各物件の実質利回りを試算してから、物件間の比較や優劣の判断をするのがよいだろう。