医療技術の進歩で平均寿命が高くなり、平均余命は長くなる。このまま少子化が進めば日本はますます高齢化が進み、現役世代がより少ない人口で高齢者を支える時代が来る。高齢者に対するサポート・サービスの充実がより必要となってくるだろう。今回はAIがそのサポート役となることができるのか、どのような場面で活躍が期待できるのかを考えていきたい。

日本の高齢化社会、介護業界の状況

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(写真=PIXTA)

国立社会保障・人口問題研究所の人口統計資料集 (2018年版) によると、2025年における65歳以上の人口は全人口の30%に達するとされている。2015年と比較すると3.4ポイント、人口で330万人増加して3,670万人となる試算である。それに対して15歳から64歳までの人口は割合で2.3ポイント、人口で640万人減少して8,570万人となる試算だ。2人の現役世代で1人の高齢者を支える時代にいよいよ突入することになる。

現役世代の人口が相対的に減ると高齢者をサポートする人員も減る。介護分野で言えば、介護職員はここ10年で80%近く増加したが、厚労省はさらに裾野を広げるべきだと指摘している。また、介護ニーズの多様化を受けて専門性の高い人材の育成も必須だ。

AI視点から考える高齢化対策とは

高齢者をサポートするために、AIのさらなる普及に期待がかかる。高齢化社会のどのような場面でAIは活躍するのだろうか。代表的なものとして次の3つが考えられる。

1つ目は、従来からニーズが高い「医療・介護」の現場であろう。厚生労働省では2017年から厚労大臣らが出席する「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」が開催されている。高齢化社会、人口減少、医療費増大などの課題克服のためのAIの活用や、基盤構築に向けた議論を進めている。その中でも手術支援に対するAIの活用は大きく期待されているものだ。医師の数が増加している一方で外科医の数は減少している現状もあり、外科医の負担軽減は喫緊の課題だ。高齢者の増加に伴い増大する手術の負担をAIが軽減することができれば、外科医不足の改善や高齢者に対する医療・治療の充実が期待できる。

2つ目に、「移動手段」を確保するためのAI活用が考えられる。自動車メーカー各社はしのぎを削って自動運転車の開発を進めているが、現状の自動運転はドライバーの存在が必須だ。つまり条件付きの自動運転で、AIが自動運転の継続が困難と判断した場合には、人間がその後の運転操作を担うことになる。将来的に完全自動運転が実現すればすべての運転操作をAIが担うことになる。都会では公共交通機関が発達しているが、自動車が主な交通手段である地方では、自動車に乗れなくなった高齢者が遠出をするときや買い物で重たい荷物を持つ場合はタクシー移動をすることもあるという。こういったサポートがあれば、高齢者も自動車を移動手段として生涯にわたり活用出来るようになる。

3つめは、コミュニケーションツールとしてのAI活用である。すでに日本でも、大手企業が人と共存できるロボットの開発を進めている。高齢者のニーズに対応するロボットが広く普及すると、日常のコミュニケーションはもちろん、見守りサービスや緊急通報など、ロボット1台で対応可能な領域がさらに広がれば、高齢者にとって最強のパートナーになるかもしれない。

AIは実生活にどれだけ浸透するのか

医療支援・自動運転・コミュニケーションのためだけではなく、いわゆる「お掃除ロボット」にもAIは使われている。また、スマートフォンを持っているということは、インターネットの検索エンジンに搭載したAIを間接的に持ち歩いているということでもある。このように、普段当たり前のように利用しているものに実はAIが使われてたというケースが今後さらに増えるのではないだろうか。私たちが考えている以上に、すでにAIは生活に浸透し始めているのかもしれない。

より豊かな社会づくりのための共存を

業種や職業によっては「AIに仕事が奪われる」と懸念する声もあるが、AIは進行する高齢化・少子化・人口減の社会をサポートする役割を担うだろう。AIと共存すれば、高齢者のみならず全ての人間にとって暮らしやすい、より豊かな社会が実現できるのではないだろうか。(提供:大和ネクスト銀行


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