(本記事は、安井元康氏の著書『会社では教えてもらえない 一気に伸びる人の自己投資のキホン』すばる舎、2018年5月28日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

【『会社では教えてもらえない 一気に伸びる人の自己投資のキホン』】
(1) 自己投資を始める良いタイミングとは?
(2) 1000円で超一流の頭脳に触れられる身近なものとは?
(3) 「スクールに通う=自己投資」の3つの落とし穴
(4) 株を始める前に考えたい「効率の良い投資対象」とは

会社では教えてもらえない 一気に伸びる人の自己投資のキホン
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

基本は「余裕資産」の運用

「なんだかんだお金は心配だから、今から株や投資信託を勉強しておくべき?」

こんな声もよく聞きます。

お金の問題と人生は切っても切れない関係です。

よほどの資産家の家庭に生まれたのでなければ、きれいごと抜きに、真摯にお金について考えなければなりません。

資産運用などのお金に関する勉強は、すべての社会人の必修科目としてとらえる必要があります。他人任せにしたり、世の中にあふれる情報に惑わされたりしないように、自分なりのお金の管理や資産運用の指針を固めておきたいところです。

しかし、そのタイミングは誤ってはいけません。

最近では、「3000円から始める投資」など、少額でも投資できる投資対象と機会が広がっているため、若いうちから積極的に投資に参加する人が増えています。

それ自体は良いことなのですが、投資の基本はあくまでも「余裕資産」の運用です。

貯金はどれくらいあるのか。今そのお金を投資に回してしまっていいのか。十分考慮したうえで、投資に参加するタイミングは計るべきだと、基本的には考えています。

本業でしっかり稼げるようになるのが最優先

会社では教えてもらえない 一気に伸びる人の自己投資のキホン
(画像=Rawpixel.com/Shutterstock.com)

ただし、大前提として、考えておいてほしいことがあります。

世の中で一番効率の良い投資対象は自分自身です。

仕事の能力を高め、結果を出せば、それが昇給や出世などといったリターンが、一時的ではなく再現性のある能力の結果として返ってきます。

投資は自分の実力だけでなく、タイミングや運といった、自分ではコントロールできない要素に大きく結果が左右されるため、勝ち続けることや、同じリターンを毎回上げることは不可能です。

一方で、自分の実力で勝負する仕事の世界では、自分自身の要素に依存します。

評価がいきなり反対になる可能性は低く、スキルを持っていれば、場所が変わったとしても通用する可能性が高い。

つまり、確実性に加え、継続性が非常に高いわけです。長距離走の人生を歩むうえで、長期リターンを確保できる投資対象として、これを見逃すわけにはいきません。

まずは、仕事に関わる勉強と実務を通じた学びに邁進し、時間と資産に余裕ができたら、資産運用の勉強を始めるくらいがちょうど良いのではないでしょうか。

繰り返しますが、自分の仕事に対する投資以上に効率の良い投資対象はないのです。

また、資産運用とは一発逆転を狙うような短距離競走的な代物ではなく、長期でつき合うべき対象です。

したがって、資産運用への取り組みも長期的な目線で考えるべきです。

孟子の言葉に「恒産なくして恒心なし」というものがあります。

自分自身の基礎が固まっていない段階では、心の余裕も生まれない、という意味です。

日々の値動きが気になって、仕事に集中できないなどという、本末転倒な状態には、決して陥ってはいけません。

社会人にとっての基礎とは、まずは仕事において稼げるようになり、自分自身の生活の面倒を自分で見られるようになることです。

経済の仕組みをリアルに理解できるのは大きい

ただ、先ほど投資を始めるタイミングを「基本的には」図るべき、と言いました。というのも、私は社会人になるとほぼ同時に、投資活動を開始したからです。

その理由は、ファイナンスやIR(投資家向け広報)の分野も自分の仕事の一部だったため、株式市場や投資に関わる知識が仕事上必須だった、という背景があります。

身をもって経験すること以上の勉強はありませんし、何よりも仕事に直結することなので、自分の時間の投資対象としても非常に効率が良かったのです。

いわゆる頭でっかちで、実用性に欠ける“ブックスマート”になることではなく、実務で使える能力を身につけることが社会人の目的です。

仕事に直結するのであれば、勉強しつつ先んじて実際にやってしまうのもありでしょう。

実際に自分の身銭を切って資産運用すると、金融や経済、世の中の仕組みがリアルに理解できます。

いずれにしても、限りあるお金と時間を投資するのですから、安易に「お金が心配だから株を始めよう」などと思わないことです。

自分の人生における段階を考慮しつつ、お金と時間の双方で、一番効率の良い投資対象は何かを考えていきましょう。

安井元康(やすい・もとやす)
株式会社MCJ取締役社長兼COO。明治学院大学を卒業、GDH(現株式会社ゴンゾ)に入社。翌2002年株式会社エムシージェイ(現MCJ)に転職。同社のIPO実務責任者として、2004年東証マザーズへ上場達成後、26歳で執行役員・経営企画室長(グループCFO)に。その後、ケンブリッジ大学大学院でMBAを取得。2007年、株式会社経営共創基盤に入社、2008~2010年には、ぴあ株式会社の財務担当執行役員、2013年に金融庁検査局専門調査官に就任。2017年より現職。著書に、『非学歴エリート』『下剋上転職』(いずれも飛鳥新社)、『99.9%の人間関係はいらない』(中央公論新社)がある。