事業を跡取りの子どもに承継する際、子どもが困らないようにしておくことが大切です。実際に事業承継を行った後、跡取り社長ならではの悩みを抱える場合もあるようです。自分が跡取りとして事業を承継した時と同じ悩みもあれば、時代の流れとともに新たな悩みも生まれている可能性もあります。以下では、跡取り社長にとっての代表的な悩みを取り上げます。あらかじめ跡取りが悩みがちになることを把握しておくことで、さまざまなアドバイスをしたり、解決しておくこともできるはずです。

少数株主がうるさい

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(写真=PIXTA)

まず、株式会社であれば株主の意見を聞く場合もあることでしょう。「自社株の過半数を保有しているので安泰」と考えている人もいるかもしれません。しかし、過半数の株式を保有しているだけでは、会社の重要事項を決定する際に他の株主から拒否権を行使されるおそれもあります。そのため、発行済株式の少なくとも3分の2以上を確保することが大切です。

ところが、たとえ跡取り社長が3分の2以上の株式を確保したとしても、少数株主が残っている限り、自分の考えを十二分に反映した経営を行うのが難しい場合もあるのです。なぜなら少数株主の権利は会社法などの法律で保護されており、少数株主がさまざまな主張をしてくるおそれもあるからです。

実際にどのような主張がなされるのかについて調査した結果があります。最もよく聞かれるのが「株式買取請求権」です。会社に対して株式を買い取るよう主張されると、会社としては応じないわけにはいきません。当然、株式の買取資金が必要となりますので、会社にとっては急な出費となってしまいます。

そのほか、株主総会で反対意見を出されたりすることで議事が進まない場合があります。総会において少数株主が自身を役員に選任するように主張することも考えられます。

また、少数株主が「会計帳簿閲覧請求権」を行使するケースもあります。会計帳簿を見られた上に、根掘り葉掘りと詮索されるようなことがあれば、跡取り社長としてかなりのストレスがかかるのではないでしょうか。根堀り葉掘り詮索されるようなことのないよう、事業承継をする前に帳簿の確認を行い、会社の経営状況をより詳細に引継しておくことが肝心でしょう。

経営管理が分からない

会社経営には幅広い知識が求められます。後継者候補として製品やサービスの知識を身につけたり、取引先との関係構築や青年会議所やロータリークラブなどでのネットワーク作りに努力してきた跡取り社長でも、経理、財務、総務、法務など管理系の知識にまでは手が回らなかったというケースがあります。

公的機関が提供する後継者養成や経営塾などのセミナーで知識を補う方法もありますが、経理や財務については金融機関や公認会計士や税理士、総務や人事については社会保険労務士など外部専門家としっかりタッグを組んで対処するという方法も有効でしょう。自分のパートナーを跡取りに紹介するのはもちろんですが、完全に事業承継するまでの間に経理や財務についてよく跡取りに説明して、理解してもらうことが大事だと言えます。

資金調達の問題

会社の経営とはいっても、資金調達に関しては経営者個人の信用力に依存している部分は多いものです。先代社長が退任した後に金融機関からの融資が受けづらくなったというケースもあります。跡取り社長が新しいビジネスを始めたいと思っても、資金がないと思うようにはいきません。

会社が資金調達力を付けるためには、経営者個人と会社との関係を明確に区別し、事業用資産は会社が保有し、財務情報も積極的に金融機関に開示するなどして会社の信用度を高めていく努力が必要となります。

経営者貸付が問題に

先代経営者から会社への貸付金が残っていて、跡取り社長が苦労する場合もあります。オーナー社長と会社の間における金銭の貸し借りは「お金がある時に払うことにし、催促することはなし」などと不明確な条件になっていることがあります。普段はそれで問題がなくても、事業承継の際にはトラブルのもとになります。

先代社長から会社への債権は相続財産に含まれます。跡取り社長以外にも相続人がいる場合、会社への債権を他の相続人が相続し、会社に対して返済を要求することが考えられます。このように後継者にとってトラブルのもとになる貸付金は早いうちに解消しておくのが得策と言えます。

跡取りは覚悟が必要

今回は跡取り社長ならではの悩みを取り上げました。経営を取り巻くヒト・モノ・カネのそれぞれに跡取り社長の悩みのタネは潜んでいます。先代経営者としてはそうした悩みのタネをあらかじめ摘んでおくことが責務と言えるかもしれません。事業を跡取りに承継する時にはそういった悩みのタネや解決策を共有し、どう対策をとればよいかまで詳細に引継をしておきましょう。(提供:企業オーナーonline


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