(本記事は、山﨑拓巳氏の著書『お金のポケットが増える スゴイ! 稼ぎ方』かんき出版、2018年6月11日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
【『お金のポケットが増える スゴイ! 稼ぎ方』シリーズ】
(1)数値目標は設定しない お金を生むためのうまくいく考え方とは?
(2)自分を騙して自信を付ける方法とは
(3)仕組みづくりはトイレのスリッパを揃えて出ることから
(4)稼ぐ人と儲かる人の違いとは?
(5)世の中には「失敗」に対して2種類の反応をする人がいる あなたはどっち?
本当に恥ずかしいことは何かを知っている人
子どもの頃、父が酔っ払うと良くしてくれた話があります。
父は昭和7年生まれで、10代前半で終戦を迎えた、あの時代の日本人でした。
父は走るのが早く、地元では有名だったようです。
運動会の日、周りから期待されながら短距離走に出ました。走り始めるとブッチギリでその日も周りをビックリさせました。
ところが、履いていたフンドシが途中で、ほどけて取れそうになったのです。父は、ほどけかけたフンドシで股間を押さえながらゴールしました。
周りはみんな大笑い。
その中に混じって先生も笑っていました。
父はこういうのです。
「周りが笑っても先生は笑っちゃいかん。フンドシがほどけそうになっても立ち止まりもせず、走った生徒を褒めなければいかん!よくぞ立ち止まらなかった、と褒めなければいけない」
といつも酔っ払いながら言うのです。
では、恥とは何なのでしょうか?
ある著名な作家は、「人間は恥と反対方向に進む動物だ」と語っています。その人の進む方向は、その人が恥と感じるもので決まるというのです。
では、あなたにとって恥ずかしいことはなんでしょうか?
自分が成長する人間だと思っている人は「トライ&エラー」を続けて、自分を前進させていきます。
自分は成長しないと思っている人は、「すごくなれない」とわかっているから、逆に周りから、「すごく思われること」に勤しみます。
だから、「トライ&エラー」は極力避け、他人からよく思われるように演じるのです。
ここに、失敗することが恥と思う人と、真理を追求しないのが恥だと思う人の違いがあります。
僕にも人生を振り返ってみると、「苦い思い出」というものがいくつかあります。
起業したばかりの頃、保険会社の女性営業のみなさんが集まる詰所で、実演販売をやったらいいのではと思いつき、やらせていただくことになりました。
いざ、行ってみると、彼女たちの放つ迫力に20代前半の僕はたじろぎます。
「みなさま!今日はヨロシクお願いします!」と元気よく話し始めますが、誰も聞いてはいません。終わったあとに、「ありがとうございました!」とその場を去りましたが、あのときの砂を噛むような思いが今でもよみがえります。
学生時代、事業が軌道に乗り、陸上部を退部するとき、同級生が円陣を組み、ひと言ずつ投げかけてくれました。
みんなの口からは吐き出された言葉は、僕の想像を裏切る罵倒の数々でした。
「違います。なぜなら......」と説明できる余地もなく、悔しくてしゃくり上げながら泣いてしまいました。
「大人になったとき、言われたことへの決着を必ずつける」と心に誓ったことを覚えています。
父とぶつかり、部屋に閉じこもったとき、母から、「あんた、それでいいの?」と言われ、父の前で土下座して謝った夜のことを忘れません。
「家族が一枚岩じゃなかったら夢は叶いません。今日のことは許してください。そして、もう一度、チャンスをください」
と謝りました。
25歳のとき、周りから人がいなくなりました。
いえ、そんな僕でも付いてきてくれるわずかな人を除いて、周りから人がいなくなりました。
あのとき、そばにいてくれた人には今でも感謝しています。
人から拒絶される恐ろしさを知りました。それでも愛してくれる人たちの優しさを知りました。
嵐が過ぎ去り、自分の体力が戻り、「もう一度、立ち上がれるようになるまで」と力をつけたあの3年間が、今の自分を創ってくれていると信じています。
これらは今、思い浮かんだ僕のめちゃくちゃカッコ悪い場面ですが、振り返ると、実は人生の名場面であったと思います。
恥の反対方向に進んだとしたなら、何を恥だと、僕はそのときどき、考えていたのでしょうか?
本当にカッコ悪いのは、格好をつけて、チャレンジをしない自分を選択したことだと思います。
それが、僕が思う恥です。
アセスメントする人
何か、新しいことに挑戦して、その挑戦が失敗に終わったとき。
世の中には、その「失敗」というフィードバックについて、2種類の反応をする人がいます。
1つは、ジャッジ(判定)する人。
もう1つは、アセスメント(評価)する人。
ジャッジする人は、「チャレンジした結果」というフィードバックに対して、「判断」または「批判」します。ですから、失敗した場合は、結果に対して自分を責めてしまい、自分を傷つけてしまう。
疲弊したり、チャレンジを続けられなかったり、続けても悲壮感が漂うチャレンジになってしまいがちです。
一方、アセスメントする人は、「チャレンジした結果」というフィードバックに対して、「評価」または「情報分析」をします。
「なるほど、こうやるとこういう結果になることはわかった。それなら、今度はああすればこうなるんじゃないか?」
って、次の仮説が生まれます。
アセスメントする人は、ガッカリしている暇がなく、すぐに次のトライアル、検証を始めたくなるのです。そうすると、次の結果が出て、その結果について、またアセスメントして、次の検証がしたくなる。
「成功の反対はなんだと思う?」と昔、ある先輩から質問されたことがあります。
「失敗です」と即答すると、「違うよ。成功の反対は何もしないってことだよ」と教わりました。
「失敗の向こうにしか成功はない」という深い教えでした。
異性も、人も、お金も、何もかもが「追いかけると逃げる」という法則があるのではないか、と僕は思います。
人間がポテンシャル以上のパフォーマンスを引き出してしまう心理状態を「フロー」とか「ゾーン」と呼び、一般的に、「数値目標」にするとフローに入りにくく、「テーマ目標」を掲げるとフローに入りやすい。
「数値目標」......たとえば、「客単価3000円を3500円に」とすると、かえって達成できない。
「テーマ目標」......たとえば、「目の前のお客さんを笑顔に」とするほうが、「客単価3000円を3500円に」という数値目標が達成されやすいのだそうです。
ジャッジとアセスメントの違いからもわかると思いますが、目の前の現実のなかから「ワクワクを見つける」ことができる人は、高い成果を出しています。
人は感情によって動かされている動物です。気持ちが前向きかどうかは、結果にハッキリと反映されますし、継続的な努力ができるかどうかの生命線にもなります。
僕が子どもの頃、和式のトイレに入ると足元にはいろんな色の丸いタイルが貼られていました。
そのタイルをしばらく眺めていると、「あ!バンビだ!」「あ!ドラえもんだ!」と少し濃い色のタイルを点に見立て、いろんなキャラクターを取り出していました。
その感覚と似ていて、目の前の現実から、驚きとともに物語を紡ぎ出すことができれば、あなたの心にスイッチが入ります。
「この世に偶然はない!」
と思った瞬間にあなたは映画の主人公になっていくのです。すべてがメッセージと捉えられ、見ること聞くことすべてが、人生で成功するヒントになっていきます。
山﨑拓巳(やまざき・たくみ)
1965年三重県生まれ。広島大学教育学部中退。20歳で起業。22歳で「有限会社たく」を設立。以来30年間、多岐にわたり事業を同時進行に展開中。現在まで40冊以上を上梓し、累計140万部のベストセラー作家でもある。主な著書に、『さりげなく人を動かすスゴイ!話し方』(かんき出版)、『やる気のスイッチ!』『人生のプロジェクト』『気くばりのツボ』(いずれもサンクチュアリ出版)などがある。