カルダノが解決しようとしているブロックチェーン3つの課題

――カルダノが取り組んでいることは具体的にどんなことなのでしょうか。

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エマーゴ・児玉CEO(撮影=ZUU online編集部)

カルダノが取り組んでいることは大きく分けると3つあります。スケーラビリティ(拡張性)、インターオペラビリティ(相互運用性)、サステナビリティ(持続可能性)の問題解決です。

まずスケーラビリティ(拡張性)ですが、世界中の何十億人がもし同時にブロックチェーンを使うとなると、技術的に情報量が書き込みきれなくなってしまう。イーサリアム上で運用されるクリプトキティ―が人気過ぎて遅延問題が発生したのが良い例です。何十億人が使えるようなブロックチェーンを構築しようと、学者や研究者を含めてこのカルダノは研究開発しています。

2つ目にそのインターオペラビリティ、相互運用性の問題についてです。今日ではブロックチェーンは世界中に何千種類とあり、今後もいろいろなブロックチェーンが生まれてくると思います。淘汰されるものも多いでしょうが、残っていくブロックチェーン同士、そこで動くサービスはお互いにコミュニケーションが取れるようになる必要がある。たとえば カルダノブロックチェーン上ではADA(エイダ)という仮想通貨が取り扱われていますが、イーサリアムのブロックチェーンに移すこともできるといったことです。

3つ目がサステナビリティ、持続可能性についてはまだはっきりとした答えは出せてないのですが、ビットコインは分散型で管理する会社もなく、コミュニティー参加者だけで意思決定されているわけです。

例えば従来の金融取引では銀行や取引所が行っていた取引の監視もマイナー(採掘者)がしてくれている。マイナーが居るから、ビットコインの取引が成り立っているわけです。そして、マイナーは基本的には報酬、インセンティブが発生しているからやってくれている。すべてのマイナーが、というわけではありませんが。

現状、仮想通貨に関わっているエンジニアやデベロッパーを見ると、技術開発やアップデートに従事するのは報酬目当てではなく、ビットコインが好きだからやっている人もいます。しかし、これから50年後、100年後、そうしたインセンティブがない中で、果たして継続的に技術的なサポートをしてくれる人たちが残ってくれるのかというと、分からないし、おそらく難しい。そこで我々は、デベロッパーに対してもそういったインセンティブは発生できるような設計を構築しようとしています。

――分散型のプロジェクトやサービスにおける意思決定のアルゴリズム・過程は大きな課題ですね。

はい。ブロックチェーンの仕組みや概念をほぼ完全に理解している人もいれば、一般の投資家で全然詳しくない人もいる。何かを決めるために票を投じるとして、いずれも同じ一票ですが、本来は重みが違うはずですよね。

例えばブロック容量を引き上げようとか、ハードフォークをしようとか、そういった意思決定をどう実現するのかというとき、ただ一人が決めてしまう、例えばイーサリアムのヴィタリック(ブテリン氏。1994年ロシア生まれ、イーサリアムの開発者の一人)のような存在とか、スペシャルな誰かが一人で決めてしまうと、結局、中央集権型になってしまう。そういう存在がいなくなったらどうするかも考えなければいけない。

分散型は投票型にして皆で決めることはできるのですが、意思決定には時間がかかるし、参加者の理解度にも大きな差があるなかで、それが正しい方向に向かうかというとなかなか難しい部分がある。誰が本当に意思決定をするのか、どうやってそのプロセスを進めるのかについては、今後も検討を続ける必要があるでしょう。

今はカルダノも中央集権型ですが、将来的には分散型で継続的に発展するような、そういったガバナンスの構築にも取り組んでいます。

――企業も規模が小さければ社長が一人でどんどんと決めていったほうがビジネスの速度は上がりますが、組織が大きくなるとそうもいかなくなります。

そのバランスをどうするのか。学術的な観点からどういう意思決定プロセスがいいのか、どういうインセンティブの設計がいいのか、そういうところも研究をしていきたいですね。