ライバルは同じPoSを志向する「イーサリアム」

ブロックチェーン,ICO,仮想通貨,暗号通貨
エマーゴ・児玉CEO(撮影=ZUU online編集部)

――学術的な観点とおっしゃいましたが、そこもカルダノの特徴ですね。

ええ。カルダノの開発は学術的な論文の作成、査読(学術雑誌などで、寄せられた原稿を編集者側でまず読み、誤りの有無や掲載の適否について判断意見を出すこと)や暗号学会での発表などを受けながら、既存通貨が抱えるような問題が起きないように進められていて、ブロックチェーンの学術的な研究という意味ではカルダノが最も進んでいると自負しています。

――世界にブロックチェーンに関するプロジェクトはたくさんありますが、ライバルといえるのは?

大きく分けるとブロックチェーンをイチから作っている会社とアプリケーションを作る会社でしょうか。プロトコルレベルで作っているのはイーサリアム、イオス(EOS)、ネオ(NEO)やネム(NEM/XEM)などですが、その中でもやっぱりイーサリアムが一番の競合でしょう。

イーサリアムもコンセンサスアルゴリズムをプルーフ・オブ・ワーク(PoW)からキャスパー(Casper)というプルーフ・オブ・ステーク(PoS)に移行する研究をしていますね。我々のコンセプト「ウロボロス」もPoSなので、その意味でもイーサリアムが一番近しいかなと。

※注)PoWもPoSもブロックチェーンの合意形成アルゴリズムの一種。PoWは直訳すると仕事量の証明。ハッシュパワーのある(計算力の高い)マイナーのほうがブロックの承認率が高くなる。要は最も仕事をしたマイナーがブロック作成できて報酬が受けられる仕組み。これに対してPoSの「ステーク」はStake(コインを持っている割合)のこと。トークンを多く(または長く)保持しているバリデーター(PoWにおけるマイナー)ほどブロックが承認されやすくなる。メリットとしては、ブロック承認の時間が早くスケーラビリティ対策になること、51%攻撃に強いこと、PoWほど消費電力が要らないので環境負荷が低いと考えられることなどがある。

――ウロボロスについてはホスキンソンさんがGoogleからレクチャーを請われたという話もあります。

はい。様々な話をオープンにディスカッションしたようです。民間・公的機関問わず、カルダノやブロックチェーンの普及活動に我々は力を入れています。イーサリアムも、スタンフォード大学が設立したブロックチェーン研究センターを支援し、5億円の投資をしていますが、我々は2015年の時点でいろんな大学に投資していますし、論文もいくつも出してます。「クリプト2018」という世界一といっていい暗号学会でも、PoSの論文を発表しています。イーサリアムではまだそういったものは発表されてないという意味でも、カルダノが進んでいると考える理由です。

エチオピアでコーヒー豆の管理にブロックチェーンを活用

――海外での取り組み状況や今後の予定などを教えてください。

エチオピア政府と提携してコーヒー豆の原産地をブロックチェーンで管理するためのPoC(概念実証)をカルダノプロジェクトとして行っています。またアフリカなどの新興国、発展途上の国では、土地の所有者が適切な記録がないゆえ土地を追い出されているという実態があります。そこでルワンダ、ケニア、ガーナなどでブロックチェーンを使った土地登録に取り組んでいます。

またインドネシアではジョイントベンチャーを立ち上げています。提携したのはヒーローというサプライチェーンの会社。インドネシアでIKEAなどとビジネスをしている大企業で、600店舗くらいあります。そこもサプライチェーンに、ブロックチェーンを入れると効率が良くなるので是非導入したいと言ってくれていますね。

――近いうちの予定はありますか?

9月以降に、東京理科大学で「ハッカソン」をやります。対象はエンジニアやビジネスプランナー、学生ですが、テスト環境でカルダノ上で開発をして、スマートコントラクトの実感をしてもらおうと思っていますし、10月にあるオープンカレッジでは実際にブロックチェーンを使う必要があるものを実際に開発するなど、ICOを体験していただけるような、実践的な講義というか、場にしたいですね。

――仮想通貨やブロックチェーンは今後どうなっていくと思われますか?

仮想通貨もユーティリティートークン、セキュリティートークンといったように、いろいろなトークンに分類できます。ユーティリティートークンとは、あるサービスにアクセスするためのトークンなどをいい、セキュリティートークンとは有価証券に近いような性質を持ったものです。私は後者のほうが今後大きくなっていくだろうと思っています。

日本やアメリカ、ヨーロッパなどでは有価証券に近い規制が今後整備されていくでしょう。規制が整えば大手企業が本格的に参入し、ユーザー保護などの規制の議論も進むし、機関投資家なども入ってきて、トークンの市場も一気に大きくなると思います。

世界には現段階でも銀行口座を持ってない人の多い新興国や、身分証明書がないなど、お金の管理が困難な状況にある国や地域もあります。ブロックチェーンや仮想通貨を活用することで、そうした国でもスマートフォン1台あれば、さまざまな取引や取引の管理ができるようになる。

ブロックチェーンに関しては、インターネットのTCP/IP(コンピュータネットワークやインターネットを動かしている通信技術を一式として総称したもの)のようになるでしょう。TCP/IPの存在やその名前を知らなくても、誰もがインターネットを使えるし、使うことで生活がより豊かで便利なものになる。ブロックチェーンも同じで、将来はブロックチェーンという言葉はあまり知られていないが、生活のあらゆる技術やサービスでブロックチェーンが使われているというような最重要インフラになると思います。