「金融リテラシー」とは、お金やお金の流れに関する知識や判断力のことをいい、社会の中で経済的に自立していくために必要なものといわれています。

しかし、「日本人は金融リテラシーが低い」という話を聞いたことがある人もいることでしょう。果たして、それは本当なのでしょうか?今回は日本人と金融リテラシーについて考えてみます。

日本人の金融リテラシーレベルを諸外国と比較すると?

金融リテラシー
(画像=PIXTA)

日本における金融リテラシーの現状把握のために、金融広報中央委員会は2016年に「金融リテラシー調査」を行いました。

18~79歳を調査対象とし、金融リテラシーに関する問題の回答を求めた結果、全体の正答率は55.6%という結果でした。この結果は、米国でも同様の調査を行った際の正答率と比べると10%程度下回っています。ドイツ、英国と比較しても7~9%下回っており、「諸外国と比べると、金融リテラシーは低い」という実態が見えてきたのです。

しかし、日本は国内総生産(GDP)が世界第3位の経済大国であり、2017年の家計の金融資産額は1,800兆円を超え、過去最高となっています。日本人は損失回避傾向が強い人の割合が高いと言われており、真面目で堅実な性質が資産形成を促してきた一因であると考えることができます。

そんな性質であるにもかかわらず、なぜ日本人の金融リテラシー調査の正答率は低かったのでしょうか。

「金融リテラシー」4つの分野と15項目とは

そもそも「金融リテラシー」とは、どんなものを指すのでしょうか?金融庁・金融経済教育研究会の報告書では、次のように定められています。

最低限に身につけるべき金融リテラシーの4分野15項目

分野 項目
«1»家計管理
  • 1)適切な収支管理(赤字解消・黒字確保)の習慣化
«2»生活設計
  • 2)ライフプランの明確化及びライフプランを踏まえた資金の確保の必要性の理解
«3»金融知識及び金融経済事情の理解と適切な金融商品の利用選択

【金融取引の基本としての素養】

  • 3)契約にかかる基本的な姿勢の習慣化
  • 4)情報の入手先や契約の相手方である業者が信頼できる者であるかどうかの確認の習慣化
  • 5)インターネット取引は利便性が高い一方、対面取引の場合とは異なる注意点があることの理解

【金融分野共通】

  • 6)金融経済教育において基礎となる重要な事項(金利(単利、複利)、インフレ、デフレ、為替、リスク・リターン等)や金融経済情勢に応じた金融商品の利用選択についての理解
  • 7)取引の実質的なコスト(価格)について把握することの重要性の理解

【保険商品】

  • 8)自分にとって保険でカバーすべき事象(死亡・疾病・火災等)が何かの理解
  • 9)カバーすべき事象発現時の経済的保障の必要額の理解

【ローン・クレジット】

  • 10)住宅ローンを組む際の留意点の理解
    • 無理のない借入限度額の設定、返済計画を立てることの重要性
    • 返済を困難とする諸事情の発生への備えの重要性
  • 11)無計画・無謀なカードローン等やクレジットカードの利用を行わないことの習慣化

【資産形成商品】

  • 12)人によってリスク許容度は異なるが、仮により高いリターンを得ようとする場合には、より高いリスクを伴うことの理解
  • 13)資産形成における分散(運用資産の分散・投資時期の分散)の効果の理解
  • 14)資産形成における長期運用の効果の理解
«4»外部の知見の適切な活用
  • 15)金融商品を利用するにあたり、外部の知見を適切に活用する必要性の理解

  • 金融庁 「金融経済教育研究会」平成25年4月30日研究会報告書より

日本人の正答率が低かったのは?

それでは、話を金融リテラシー調査に戻しましょう。前出の調査において、日本人の正答率が低かった項目は「生活設計」と「金融・経済の基礎」という項目でした。たとえば、今後必要となる資金(結婚費、老後費など)の金額を把握していなかったり、比較せずに生命保険に入ったりするという、お金に対する意識の低さが見えてきたのです。

反対に、正答率が高いグループでは、以下4つの特徴がありました。

  • 金融経済情報を見る頻度が高い
  • 家計管理がしっかりしている
  • 金融商品の内容を理解した上で商品を選択している
  • 損失回避傾向や横並び意識は低めである

この結果から、金融リテラシーを高めるためには、毎月の収支管理や貯蓄によりお金への意識を高めることが大切といえるでしょう。さらに、「いつ・いくら」お金が必要なのかという生活設計を立てた上で、経済の流れを読んだ貯蓄法や金融商品の選択ができると良いですね。

まとめ

以上のことから、金融リテラシーを高めることが、お金と上手に付き合うポイントになりそうです。しかし、お金の知識や判断力は、一朝一夕で身につけることはできません。日々、お金に対するアンテナを張り、理解を深めていくことが、より良い生活への近道となることでしょう。(提供=auじぶん銀行)

執筆者:冨士野喜子(ファイナンシャルプランナー)

【おすすめ記事 auじぶん銀行より】
もうすぐ「平成」が終わる…元号の変更でどうなる?昭和から平成はどうだった?
その買い物、本当にお得ですか?松竹梅で竹を選ぶ理由―損しないための心理学
40歳からのお金のやりくり、貯蓄のコツ。
新築以外のマイホームの選択肢 中古物件を買う時のポイント
初心者がNISAで始めるカンタン分散投資