はじめに

糖質制限,筋トレ,健康
(画像=PIXTA)

最近、健康やダイエットがブームになり、「糖質制限食で痩せた」とか、有名俳優を使ったテレビCMで、「個別トレーニングジムに通って、みちがえるように痩せた」といった情報が、ちまたにあふれている。こうした事象は本当なのか、また健康面で問題はないかと疑問をお持ちの方も多くいらっしゃるのではないかと思う。かくいう私も、昨年度までの不健康な生活をしていたことが災いしてとても健康とは言えない体型になってしまったので、今年の4月より、なんとかしなくてはいけないという思いで、半信半疑ながら、思い切って、個別トレーニングジム「R」に入会して、自分で体験してみることにした。以下は、その4ヶ月の体験レポートである。

Rでは、ダイエット期間中は、糖質制限と、原則週2回の個別トレーニングジムにおける筋トレが求められる。2章以降では、その内容と考え方、そしてその結果についてご紹介したい。

糖質制限について

糖質制限ダイエットのルーツは、アメリカ人医師のロバート・アトキンス博士が考案した炭水化物の摂取を制限する「アトキンスダイエット」にある。

まず糖質とは何か、糖質制限することの意義について説明する。

糖質とは、炭水化物、タンパク質、脂質の三大栄養素のうちの炭水化物の一部で、炭水化物は、糖質と食物繊維の二つからなる。糖質は、人にとって重要なエネルギー源のひとつになることはもちろん、脳や神経の活動を左右するエネルギー源になる。糖質というと、甘いものというイメージがあるが、糖質を含む食品には、甘い食品(EX.お菓子、果物)とそうでない食品(EX.ご飯、パン、小麦粉)の両方あることに注意する必要がある。

糖質をとると血糖値が上昇し、それを抑えるためにインスリンが分泌される。インスリンは分泌されると血液中のブドウ糖を筋肉に送ってグリコーゲンという形で蓄積する一方で、余ったブドウ糖を中性脂肪に変えて脂肪細胞に蓄積するため、内臓脂肪が増加することになる。これが太る原因になる。そのため、糖質を制限することで、インスリンの分泌を抑え、内臓脂肪を貯めこまないようにして、太りにくくするのが、いわゆる糖質制限ダイエットである(1)。それでは、糖質を制限するとエネルギー源がなくなってしまうのではないかと、心配になるが、実は、糖質を制限すると、人間の体は、体内のエネルギーをまかなうため、体脂肪を分解してエネルギー源とする。また、そのとき生じる遊離脂肪酸が多いと、肝臓に運ばれて、ケトン体が合成される。このケトン体も遊離脂肪酸同様に糖質の替わりにエネルギー源となる。そのため、1日50グラム以下に糖質を制限するレベルの糖質制限ダイエットは、ケトン体ダイエットとも言われている。

Rでは、ダイエット期間中の糖質を一日50グラムまでに制限するよう私の場合は指導された。また、糖質以外の食事については、バランスよく、特に、葉物野菜とタンパク質を多くとるように指導される。

一般的な食事をしていると日本人は、一日で糖質を200から300グラムくらいとっているといわれている。ご飯軽く一膳は、糖質約60グラムになるので、糖質を一日50グラムに抑えるためには、ご飯、パン、うどん、そば、パスタなどの主食はもちろんのこと、お菓子、果物などの甘いものもほとんど控えるようアドバイスを受ける。

なお、本当にこうした糖質制限をしてよいかについて心配だったので、事前にいろいろな文献、レポートをあたって調べてみた。

糖質制限については、賛否両論あり、200から300グラムの糖質をとっている日本人が諸外国の方に比べて、糖質を取りすぎているということは間違いないが、一方で、糖質制限を支持する人の中でも極端な長期に亘る糖質制限は、医学的に安全とはいいがたいので、注意が必要という意見が多い。そこで、私が、方針として採用したのは、「一日50グラム以下の糖質制限は短期間限定で行うのであれば許容される」というものだった。

(2018年3月の東北大学大学院の農学研究科の都築毅准教授らの研究によると、約1年に亘る糖質制限食についてのマウスを使った実験により、一般的な食事を与えたマウスの多くは、平均寿命より長生きしたが、糖質制限食では平均寿命まで生きられないという結果になり、しかも糖質制限の個体は見た目も一般食の個体に比べて、背骨の曲がりや脱毛がひどく、老化の進度が30%も高いという研究成果を学会発表している。ただし、これはインスリン遺伝子を2本も持ち合わせ、人と違って高脂肪食で食べ過ぎを起こすマウスなればこそのデータともいわれている。)

短期間とは、集中ダイエット期間の6ヶ月以内をめどとした。(2006年に報告されたNordmannのレポートによると、「低炭水化物ダイエットは6ヶ月までに有意な体重減少をもたらすが、1年で、低炭水化物制限を行った群団と、総エネルギーと脂質制限を行った群団では、両群に有意な差がなくなり、低炭水化物食では血中LDL(悪玉)コルステロールの増加をきたす」と指摘している。ただし、2012年に報告されたSantosらのレポートでは、「低炭水化物ダイエットは6ヶ月まででも、12ヶ月まででも、24ヶ月まででも体重、血圧、血糖、一部の脂質プロファイルの改善に有効である」としている。)一日の糖質摂取を50グラム以下に制限して、1年以上続けるなどの長期間に亘る糖質制限は、医学的にも安全性が確立されていないという意見が多く、明確な結論は出ていないが、自分を実験台に使うのは、止めたほうがいいと思う。

それでは糖質摂取の水準を、集中ダイエット期間後はどのあたりにすればいいかというと、日本糖尿病学会が2013年3月に発表した、「日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言」が参考になりそうだ。このレポートによると、「糖尿病における三大栄養素の推奨摂取比率は、一般的には、炭水化物50~60%エネルギー(150グラム/日以上)、たんぱく質20%エネルギー以下を目安とし、残りを脂質とする」と提言されており、炭水化物摂取は一日150グラムがひとつの目安になりそうだ。(日本糖尿病学会の提言には、個人差や既往症によっては、炭水化物の摂取比率を増減させることを考慮しても良いとされており、あくまでも目安である。)

糖質制限については、糖質さえとらなければ何でもいくら食べても飲んでもいいといったやり方で行うことは問題があると思う。たとえば、タンパク質を補うために大量の脂っこいステーキを食べるとか、糖質のないウィスキーや焼酎はいくら飲んでもかまわないと思っている人もいる(実際そのように書いてある本もある)が、動物性の脂質を大量にとると、体重が落ちにくくなるし、血中LDLコレステロールが上がるリスクもある。また糖質制限時には、肝臓が働いてケトン体を作るためにかなり負荷がかかるため、アルコールを大量に飲むと、肝臓が疲弊してしまい、実際自分でも体調が悪くなるといった事象を体験した。したがって、ケトン体を作るためにある程度のタンパク質、脂質は必要だが、過剰な摂取は好ましくないと思う。何事もほどほどが大切だと思う。

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(1)最近のHarvard大学のグループから提唱された仮説では、糖質摂取後のインスリン分泌による血中エネルギー基質の欠乏が飢餓感から食べ過ぎを生むともされており、糖質制限ダイエットは自動的に(満腹感を得ながら)食べ過ぎを予防する方法とも考えられるようになった。

実際の食事内容について

糖質制限といっても「実際に何を食べるのですか」と聞かれることが多いので、ここで紹介したい。Rでは、その方によって推奨量は異なるが、タンパク質を毎食できれば、30グラム以上とるようにすると言われる。これは後で述べる筋トレによる筋肉疲労を早く回復させ、筋肉量を増やすためである。しかしながら、普通の食事ではなかなかタンパク質をそこまでは取れないので、市販されている減量用のプロティン、具体的には、私は、明治の「ザバスソイプロティン100」を朝食と昼食の2回、一回約20グラムを水に溶かして飲んだ。

それから、エネルギー不足にならないように「中鎖脂肪酸」の多いココナッツオイルを勧められた。「中鎖脂肪酸」は、腸管から吸収された後、すぐに肝臓で処理され、すぐにエネルギー変換されるのが特徴である。私は、仙台勝山館のMCTオイルをこれも朝食と昼食に20ccずつ飲んだ。ココナッツオイルは味もなく、コーヒーなどに入れて飲む人もいるようだが、私はそのまま飲んでいた。なお、夕食時には、ココナッツオイルはとらないように言われる。これは、寝ている間に体脂肪を分解するのによくないと説明された。

食事については、野菜と肉、魚をバランスよく摂るように言われる。野菜は、キャベツ、レタス、ほうれん草などの葉物野菜を積極的に食べるようにし、ジャガイモ、にんじん、ごぼうなどの根菜類は糖質が高いため控えるように言われる。肉は、できれば、鶏の胸肉がいいので、スーパー、コンビニなどで売っている「サラダチキン」をよく食べた。ちなみにサラダチキンにはいろいろあるが、プレーンなものは続けて食べていると飽きてくるので、私は日本ハムの「やわらかチキンこがし醤油テリヤキ」をよく食べた。テリヤキ風の味付けでなかなか美味しくて、糖質ゼロはとても助かった。

朝食は、ほぼ毎日、サラダ(キャベツ、ベビーリーフ)、サラダチキン、チーズ、ゆで卵1個、プロティン20グラム、MCTオイル20ccを食べた。

昼食が困った、Rでは、コンビニでも糖質の低いものを選んで食事ができると言われたが、毎日実行するのは難しい。そこで活用したのが、糖質オフ弁当だ。ネットで調べて一番人気の日清医療食品の「食宅便低糖質セレクト」を定期的に購入して食べた。これは、糖尿病などをお持ちの方向けの糖質を抑えた弁当で、糖質は、5グラム程度に抑えてある。全部で21種類あり、基本は、肉1品、魚1品、その他の小鉢系の野菜などが3品入っていて、1食600円程度である。もちろんご飯はない。冷凍で7食ずつ届けられるので、冷凍庫に保管していて、電子レンジで温めて食べた。味はあまり期待していなかったが、食べてみると案外おいしかった。野菜も適度に盛り付けられており、栄養バランスもよさそうである。Rのトレーナーと相談して、これだと少しタンパク質が足りないので、サラダチキンとチーズを一緒に食べた。

糖質制限,筋トレ,健康
(画像=ニッセイ基礎研究所)

最後に夕食だが、これは自宅で食べるケースと、会食など外で食べるケースに分けて説明する。

自宅で食べるときは、最初は野菜、肉、魚を食べていたが、これだとなかなか体重が減らない。特に牛肉、豚肉、脂の多い鶏のもも肉はあまりよくないのだと感じた。そこで、肉を食べるのを止めることにした。具体的には、サラダ、魚(主に刺身の盛り合わせ)、枝豆または豆腐、ゆで卵1個だけにしてみた。すると体重が減りだした。よく糖質制限中は、牛肉のステーキをいくら食べてもいいとか、アブラっぽいものを一杯食べてもいいなどと言われているが、私の体験上、夕食でこれをやると、体重は増えないかもしれないが、一方で体重がなかなか減らないと思われる。

外食の場合は、なるべく和食系の居酒屋、料理屋にしてもらい、乾杯はハイボール、その後は焼酎の水割りにした。私はビール、日本酒が好きだが(これは最初はつらかったが)、次第に慣れてきた。もちろん、〆のごはん、麺類とデザートはパスした。ビール1本で糖質は約20グラム、日本酒一合で糖質は約10グラムに対し、ウィスキー、焼酎はゼロである。ただし、これも糖質ゼロだからといって、飲みすぎると、肝臓がケトン体を作るのに負荷がかかるからか、飲みすぎたときは肝臓のあたりが重苦しくなり、自然と量もほどほどになった。会食の際には、糖質の多い、中華料理、イタリアンはなるべく避けてもらった。

この食生活をほぼ4ヶ月続けたが、最初の一週間を過ぎると慣れてきて、それほどつらく感じることはなかった。

筋力トレーニングについて

もう一つの柱である筋力トレーニングについて述べたい。なぜ筋トレが大事かというと、糖質制限だけにより体重を落とすと、脂肪と合わせて筋肉も落ちてしまい、基礎代謝も落ち、少しの食事でも体重の増加につながり、リバウンドしやすくなる。そこで、筋トレにより、極力筋肉量の減少を抑えて、体脂肪だけを落とすようにして、基礎代謝を上げて太りにくい体を作るためである。合わせて、筋トレにより脂肪を燃焼させて、体重を落とす、もちろん筋トレでマッチョになって見た目もかっこよくなるという効果もある。

Rでは、原則として、週2回、トレーナーとのマンツーマンによるトレーニングが50分間行われる。このうち私の場合は、1回は上半身のトレーニングの日、もう1回は下半身のトレーニングの日であった。上半身の代表的なトレーニングは、胸の筋肉を鍛えるベンチプレスや腕立て伏せ、背中の筋肉を鍛えるラットプルダウンなどであり、下半身の代表的なトレーニングは、脚の筋肉を鍛えるスクワット、片脚ずつ行うスプリットスクワット、バーベルを持って行うバックスクワットや腹筋を鍛えるクランチ(起き上がり腹筋)、脚上げ腹筋などである。

Rでは、自分の限界を超える負荷をかけてトレーニングする。たとえば、ベンチプレスでは、楽に持ち上げられているとトレーナーが判断すると、すぐに重さを限界まで上げる。そして、トレーナーからの補助を受けながらなんとか持ち上げ、もう持ち上げられなくなると、5キログラム落として持ち上げ、またそれもできなくなるとさらに5キログラム落として持ち上げる。筋肉は、「刺激」と「修復」を繰り返すことで、以前より強く太い筋肉になる。この過程を「超回復」と呼ぶ。したがって最大の負荷をかけてトレーニングして筋肉を「刺激」させるのだと説明を受けた。

筋トレの中で最も大切と言われたスクワットについて述べたい。スクワットで鍛えられる大腿四頭筋は人間の体で最も筋肉があるところで、加齢により最も早く衰えるといわれている。スクワットはこの大腿四頭筋だけでなく、太もも裏のハムストリング,お尻の大殿筋などの鍛錬になるので、Rで最も重要視されている。初日は、食事のとり方や食事の管理アプリの説明があり、トレーニングは最後の15分間でスクワットをやったがこれが大変だった。まずベンチプレスを行うときに使用するアジャスタブルベンチ(低めの腰掛をイメージしてもらえばいい)に最初座って、立ってと10回行い、次におしりがベンチ台に触れると同時に立ち上がることを10回、そして最後にベンチ台をとってスクワットをやった。もちろん膝が前にでないようにお尻を落として太ももが水平になるくらいに深く曲げて20回を3セットほどやったが、帰りは階段が降りられなくなり、壁にすがりつきながら降りたのを覚えている。自分がこれまでスクワットと思ってやっていたことは、単なる屈伸運動だったと思い知った瞬間だった。その後、片足スクワット、そしてバックスクワットとどんどんきつくなっていった。自分でもやった方がいいといわれて、毎日昼休みに自分でスクワットを20回×5セットをやるようにした。その成果か、トレーニングを始めて4ヶ月後には、70キロのバーベルを肩に担いで、バックスクワットをやれるようにまでなった。

Rでは有酸素運動はほとんどなく、筋肉を鍛える無酸素運動中心のトレーニングメニューである。さまざまな筋トレをするが、毎回やったトレーニングはすべて記録されていて、前回の負荷を見ながら少しずつ負荷を上げていく。毎回トレーニングが終わるとへとへとになったが、一方で達成感もあった。

当然トレーニングをやった1~2日後には、筋肉がパンパンに張るので、ストレッチや整体に通ったりして、自分なりに体のケアを行った。だんだん筋トレに慣れてきて、自分でもできるようになってきたので、通っていたスポーツクラブでも、フリーウェイトゾーンでベンチプレスやバックスクワットなどの筋トレをやるようになった。これまでフリーウェイトゾーンで筋トレに励んでいるマッチョな人たちの気持ちがわからなかったが、だんだん筋トレするのが楽しくなり、休日だけではなく、平日の仕事の後も、スポーツクラブに行くようになった。スポーツクラブでは、これまでは、主にダイエットにいいと思って、ウォーキングなどの有酸素運動を中心にしていたが、有酸素運動だけでは一時的に体重は落ちても太りにくい体にはならないということを教えられてからは、最初に筋トレを集中してやり、最後にウォーキングをやるように変わった。

そして一番うれしかったのが、筋トレの成果で、ゴルフの球が飛ぶようになったことである。スクワットに取り組んだことが大きいと思うが、減量すると飛距離が落ちると心配していたのだが、逆に下半身の筋力アップで、ドライバーが20ヤード程度飛ぶようになった。

結果について

それでは、Rに通った結果である。Rでは毎回、体重、筋肉量、体脂肪率の測定をされるので、そのデータの変化(差分)を図表1にグラフで表してみた。

糖質制限,筋トレ,健康
(画像=ニッセイ基礎研究所)

4月4日から始めて、約4ヶ月経過で、体重は15.6キログラム減、腹囲は14センチメートル減と自分でもびっくりする成果となった。図表1をみていただくと、体重が落ちているのに、筋肉量は3.0キログラム減とあまり落ちていないことがわかる。これが筋トレの成果と考えられる。また脂肪が燃焼して、体脂肪率も6.7%減となった。

糖質制限,筋トレ,健康
(画像=ニッセイ基礎研究所)

ちょうどRを始めて約2ヶ月後の6月13日に人間ドックを受けたので、その中の特定健康診査受診結果の一部のデータを図表2にまとめてみた。見ていただくと、血圧、脂質、肝機能、糖代謝の数値がいずれも改善している。脂質は、中性脂肪が大きく改善、LDLコレステロールが低下した。肝機能については、GOT、GPTといった脂肪肝が関係する数値が改善し、お酒の飲みすぎによる肝機能の悪化を示す指標であるγ-GTPも改善した。糖代謝では、糖尿病の指標であるHbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)が改善した。糖負荷を見るため、トレーランを服用した経口ブドウ糖負荷検査も行っている。これはサイダーのような甘い液体を服用して、1時間後、2時間後に採血して、血糖値を調べるものだが、トレーラン服用2時間後の血糖値が大きく改善している。これは血糖値が上がるのに合わせて、インスリンが出て血糖値を下げている証であり、糖尿病になりにくい体質に変わってきていることを示している。産業医の先生も、わずか2ヶ月程度でRに通った効果が明確に数値に表れていると驚かれていた。このように体重減少だけでなく、健康になるという意味でも大きな成果があったと思われる。

まとめ

以上が私の体験記である。あくまで私一人の結果であるので、皆さんにこれがあてはまるとは限らないのでご留意いただきたい。ただ私個人の感想としては以下のとおりである。

表題にある「糖質制限と筋トレで本当に健康的に痩せられるのか?」については私に関しては成果が出たといえる。(ただし、糖尿病や腎臓病などをお持ちの方は事前に主治医によく相談する必要がある。)

筋トレをやらずに糖質制限だけをやった場合は、体重は減るが、合わせて筋肉量も落とし、基礎代謝も下げてしまい、リバウンドしやすくなると思われる。これでは「健康的に痩せる」のではなく、「やつれる」ことになる。また極端な糖質制限を長期間に亘って続けることは、医学的にも安全であるという証明がされていないので、止めたほうがいいと思う。

糖質制限とカロリー制限のどちらがダイエットにいいかといった議論がされているが、どちらも有効だと思うが、糖質制限の方が、計算がしやすい、たとえば、朝から食べた糖質量を計算していき、一日の糖質摂取量をコントロールすることが簡単にできるといったメリットがあり、短期間集中のダイエットとしては成果が出やすく向いているように思う。一方で長期に亘る極端な糖質制限は好ましくないので、集中ダイエット期間後は、糖質制限を緩和しながら、カロリーにも気を配った食生活を心がけるのが望ましいと思う。

また糖質制限しても、ステーキなどはいくら食べてもいいとか、糖質ゼロのアルコールはいくら飲んでもいいなどの考え方で糖質制限に取り組むのは好ましくなく、野菜、魚や鳥の胸肉などを中心にして、LDLコレステロールを上げないような食事に気をつけたほうが良いと思われる。

Rでは、この集中ダイエット期間後のリバウンドが心配であるといわれている。Rによれば、リバウンド率(元の体重まで戻る人の割合)は7%となっているが、私の知っているRに通った人を見ると体重が戻っている人もいるようだ。集中ダイエット期間中は、すべての食事を報告し、それに対するアドバイスもくるので、ほとんどの人ががんばって減量するが、プログラム終了後、元のような不健康な食生活に戻ってしまうと当然、元に戻るのだろう。私もそうならないよう今後も健康に気をつけた生活を続けたいと思う。

おわりに

世の中健康ブームで、多くの人が、食生活、運動を意識するようになり、企業サイドにも健康経営(2)が求められる時代になってきた。ただし一方で、健康に関する誤った情報が世の中に多く存在するのも事実である。

ニッセイ基礎研究所では、2018年2月より、「医療制度・ヘルスケア早分かり」のコーナーを立ち上げ、健康、医療に関する情報提供を行っている(3)。また2018年4月より、ヘルスケアリサーチセンターを新設し、今後、さらに健康に関する研究を深め、皆様のお役に立てるような情報発信を進めていきたいと考えている。

ぜひ読者の皆様にお読みいただき、ご意見、ご感想をお聞かせいただきたい。

よろしくお願いいたします。

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(2)「健康経営」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標
(3)http://www.nli-research.co.jp/report_tag/tag_id=161?site=nli

【参考文献・資料】
1.日本糖尿病学会(2013)「日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言」
2.白澤卓二(2013)『肥満遺伝子-やせるために知っておくべきこと』祥伝社

手島 恒明
ニッセイ基礎研究所 代表取締役社長

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