相続税の計算は一般的にややこしいものだと思われていますが、しっかりと理解して正しい手順を踏めば、決して難解であるとは言えません。

相続税を計算するためには、一般的に4つのステップを踏みます。第1ステップが「各相続人の課税価格と合計額の計算」、第2ステップが「相続税の総額の計算」、第3ステップが「各相続人の相続税額の計算」、最終ステップが「各相続人の納付税額の計算」です。

具体例として相続人が「妻と子供2人(長男・次男)」の場合を想定し、各ステップで計算をしながら進めていきます。記事で登場する「被相続人」とは亡くなった方を指し、「相続人」とは財産を相続する人のことを指します。

第1ステップ――各相続人の課税価格と合計額の計算

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(画像=PIXTA)

各人の課税価格の計算では、被相続人から贈与によって財産を取得した相続人ごとに財産を評価し、課税価格を計算することから始まります。

課税価格は財産(相続開始前3年以内の贈与財産を含む)から借入金などの債務や葬式費用、保険金などの非課税財産を差し引いて算出されます。保険金の非課税限度額は「500万円×相続人の数」で計算されます。

想定ケースでは、妻が預金・株式8000万円を取得し、債務500万円を負担。長男が土地3000万円を取得し、葬式費用が300万円を負担。次男が生命保険金2500万円を取得(保険金の非課税額が1500万円(500万円×3人))としたものとします。この場合は以下のように3人それぞれの課税価格と合計額が算出されます。

妻:8000万円 - 500万円 = 7500万円
長男:3000万円 - 300万円 = 2700万円
次男:2500万円 - 1500万円 = 1000万円
7500万円 + 2700万円 + 1000万円 = 1億1200万円(課税価格の合計額)

第2ステップ――相続税の総額の計算

続いて相続税の総額の計算をします。まず第1ステップで計算した課税価格の合計額から基礎控除額(3000万円 + 600万円 × 相続人の数)を差し引いて、「課税遺産総額」を算出します。想定ケースでは基礎控除額は「3000万円 + 600万円 × 3人= 4800万円」となります。

1億1200万円 - 4800万円 = 6400万円(課税遺産総額)

続いて、各相続人の相続分を計算します。想定ケースの場合は民法で定められた法定相続分で分割したと想定し、妻が1/2、長男が1/4、次男が1/4を相続するとします。各相続人の相続分は以下の通りとなります。

妻:6400万円 × 1/2 = 3200万円
長男:6400万円 × 1/4 = 1600万円
次男:6400万円 × 1/4 = 1600万円

ここから相続税の速算表に合わせて相続税の総額を計算します。

妻:3200万円 × 20%(税率) - 200万円(控除額) = 440万円
長男:1600万円 × 15%(税率) - 50万円(控除額) = 190万円
次男:1600万円 × 15%(税率) - 50万円(控除額) = 190万円
440万円 + 190万円 + 190万円 = 820万円(相続税の総額)

決定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1000万円以下 10%
3000万円以下 15% 50万円
5000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

第3ステップ――各相続人の相続税額の計算

第3ステップでは各人ごとの相続税額を計算します。計算式は「相続税の総額 × 各人の課税価格 ÷ 課税価格の合計額」となります。想定ケースでは以下の通りとなります。

妻:820万円 × 7500万円 ÷ 1億1200万円 = 549万1071円
長男:820万円 × 2700万円 ÷ 1億1200万円 = 197万6786円
次男:820万円 × 1000万円 ÷ 1億1200万円 = 73万2143円

第4ステップ――各相続人の納付税額の計算

最終ステップとして、各相続人の相続税額から必要がある場合は税額控除額を差し引いて、それぞれの納付税額が決まります。想定ケースの場合、妻が配偶者控除を受けることができます。具体的には、取得財産が1億6000万円以下か相続分(想定ケースの場合は3200万円)以下なら、相続税の納付税額はゼロ円になります。すなわち想定ケースでは最終的に納付税額は以下の通りとなります。

妻:0円
長男:197万6786円
次男:73万2143円

専門家の確認を

相続税の計算は4つのステップを踏まえて、正しく理解すれば決して難しいものではありません。ただ細かい点については、税理士などの専門家に相談しながら進めるのが良いと思います。(提供:事業承継ガイド

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