アラフォーでの「転職」と聞くと、何を想像するだろうか。「新しいチャレンジ」といった前向きなものより、「未経験の職種や業種にチャレンジしたい場合は20代まで」や、35歳を機に転職成功率が下がるという「35歳転職限界説」といった転職市場でのネガティブな定説が頭によぎるかもしれない。しかし、最近では求人数や転職者も増え、状況が変化してきている。
企業はミドル世代の採用に積極的
35~45歳の世代(以下、ミドル世代)は、就職氷河期に新卒採用の試練を乗り越えた世代。今の「売り手市場」とは180度違う、非常に厳しい状況下で狭き門をくぐり抜けた優秀な人材が多いと言われている。
若手人材の採用難という事情もあるが、若い世代よりも優れた業務遂行力や管理能力が評価されているのだろう。企業における中途採用の方針として、ミドル世代は「良い人材であれば採用したい」が64.1%で、「積極的に採用を強化したい」と合わせると76.2%にものぼる(厚生労働省職業安定局の平成30年「雇用を取り巻く環境と諸問題について」)。
年齢別の転職入職数では、35~44歳の層が2000年では67万人だったのに対し、2016年には106万人と大きく増加している(厚生労働省の平成27年「雇用動向調査」)。なお、45~54歳の層も35歳の層に比べて少ないものの、2000年の62万人から16年間で84万人に増えている。
ミドル世代の転職には見えない壁がある?
転職活動に有利といえるミドル世代だが、実際に転職するとなると躊躇する人が少なくない。それは、一人で自由に決めて活動できる20代の転職と異なり、公私ともに責任が重いミドル層には見えない壁があるからだ。「35歳転職限界説」は、企業が若い世代を求めミドル世代を求めないということではなく、自分自身に見えない壁を作って転職に踏み出せない状況、限界を作り出しているという見方もできるのではないか。
見えないハードルとは、具体的に言えば「不安」だろう。例えば、「転職の際の不安」として上がった声では「年齢」、「年収」、「自分の希望する求人の有無」だった(「ミドルの転職」のユーザーアンケートより)。総じて言えば、「今よりいい仕事はあるのか?」だろう。よく出てくる言葉だが、少し掘り下げたいと思う。
そう思う気持ちはどこから出ているのだろうか。そもそも「いい仕事」とは何だろうか。その答えはそれぞれだが、一度自分の仕事への価値観と向き合うことをおすすめしたい。
今までの仕事人生を振り返るのに有効なキャリア・アンカーとは?
その際、シャインの「キャリア・アンカー」を手掛かりに考えてみるといいだろう。
MITの経営大学院の教授、組織心理学の研究者であるシャインは、「キャリア中期の危機」という概念を提唱。これは、まさにミドル世代を指し、キャリアに対して持っていた夢と現実のギャップをどのように解決するか決定することを求められる時期としている(出典:「新時代のキャリアコンサルティング」独立行政法人 労働政策研究・研修機構)。20代から始めた仕事、これまでの自分自身のキャリアを振り返り、今後どうするかを考えていく時期に当たると言える。
また、シャインは組織でキャリアを発展させるには、内的キャリア、キャリア・アンカーを重要としており、それは以下の8つに分類される。自分の専門性や技術が高まること、組織の中で責任ある役割を担うこと、自分で独立すること、安定的に1つの組織に属すること、クリエイティブに新しいことを生み出すこと、社会を良くしたり他人に奉仕したりすること、解決困難な問題に挑戦すること、個人的な欲求と家族と仕事とのバランス調整をすること(以上、出典「新時代のキャリアコンサルティング」独立行政法人 労働政策研究・研修機構)。
キャリア・アンカーとは個人のキャリアを船に例えた場合、それを繋ぎとめる錨(アンカー)の働きをするもの。これは、その人の譲ることのできない仕事の価値観を指し、人生を歩む中で自然と形成され、一度形成されると変化しにくいものと考えられている。
「中期の危機」を乗り越えるためにも、自分を見つめてみよう
ミドル世代、特に「中期の危機」にかかるタイミングは、自らの「これまで、これから」を見直すいい機会。今までのキャリアの棚卸し、仕事の価値観を整理して、これからを考えてみよう。具体的には、「何が得意か」、「何をやりたいか」、「何をやっている自分が充実しているか」などについて、これまでの職務経験に基づいて考えてみることが有効だ。はじめは、なかなか自分と向き合う時間には作りにくいかもしれない。しかし週末に1時間でも時間を設けて、書き出してみることをおすすめしたい。
その結果、転職活動へ踏み出す人もいるだろう。転職活動は、一般的な転職エージェントに登録する以外にも自分のペースでできる方法もある。例えば、現在の仕事を続けながらビジネス向けのSNSで自らの仕事やプロフィールを発信する方法や、自分の市場価値を同業他社での募集を利用して測る方法などだ。
「変わること」を選択することに価値があると考えがちだが、良く調べた結果、「変わらない」選択をするのもいい。自らのこれまでを改めて見直し、今後に対して柔軟な発想で計画・行動し、判断することが主体的にキャリアを積むことにつながるのだ。
文・左東ひさ子(キャリアコンサルタント)/MONEY TIMES
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