「キャリア」と言われ思い浮かぶ言葉は「仕事」、「仕事人生」という人が多いだろう。「キャリア」の語源は、車輪が通った後に残る「わだち」で、自分が歩んできた人生全体がキャリアだと考えられている。しかしキャリアを「仕事人生」という観点でのみとらえていると、ほんの一部分を見ているに過ぎないことになる。
男性の家事・育児参加時間は大して増えていない
米国のキャリア研究者、ドナルド・E・スーパー(Donald E Super)によると、キャリア発達は人生上における役割(ライフロール)と密接な相互関係があり、ライフロールには9つある。働く父親はそのうち7つ、「子ども、余暇人、市民、労働者、配偶者、家庭人、親」の役割を持っている。
6歳未満の子どもを持つ男性の家事・育児関連時間は、2011年は総時間1日当たり67分、 2016年は16分増えて83分になった(総務省「平成28年社会生活基本調査」)。
その内訳は家事17分、看護・介護1分、育児49分、買い物16分。なお2011年の女性の家事・育児関連時間は461分。1996年以降の夫の家事・育児関連時間は増加傾向にあり、女性の2016年は454分と5年で7分減っているものの、夫のそれは妻と比較すると圧倒的に短い状況だ。
豊かな人生を歩むための「統合的人生設計」とは?
さまざまな事情で環境をがらりと変えられない人も多数いるだろう。環境を変えられないのならば、まず自らの視点を少しとらえ直すといいかもしれない。
カウンセリング心理学が専門で、女性のリーダーとして全米職業指導協会(NVGA)やアメリカカウンセリング学会(ACA)の会長を務めたサニー・ハンセン氏は「統合的人生設計」を説く中で、キャリア概念の家庭における役割から社会における役割まで、人生における役割をすべて幅広く盛り込むことを提唱。4つのL、仕事(Labor)、学習(Learning)、余暇(Leisure)、愛(Love)のLからはじまる4要素がうまく組み合わさってこそ、「意味ある全体」になるとしている(出典 宮城まり子著「キャリアカウンセリング」)。
仕事人生のみならず、余暇や学習、愛といったプライベートな部分、子育てや妻との時間なども含めてバランスよく持つことで、豊かな人生が歩めるとしたわけだ。
これらを考えると、家族と一度これからの人生設計を話し合う時間を持つ必要があるとは考えられないだろうか。
「できない」と決めつけないでやってみる
さらに「できない」と思っている固定観念をとりはらい、「できるはず」と行動してみるといいだろう。例えば、「有給休暇の完全消化を目指す」という目標はどうだろうか。
年次有給休暇の取得状況は、2016年には1人平均 18.2日付与されているのに対し、取得した日数は9.0日と半分以下だ。企業によっては、時間で有給休暇が取得できるところもある。労働者に与えられた権利なので活用し、平日の育児や自己研鑽のための学びの時間として活かしてもいいのではないだろうか。
最近では仕事と家庭の両立を考えセミナーを自治体などで開催することもある。参加をすることで、地域や同じ立場の人との交流を通して、働く上でのヒントを得ることが期待できる。まずは身近な目標を決め、できるところから行動することが重要だ。
文・左東ひさ子(キャリアコンサルタント)/MONEY TIMES
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