「億り人」という言葉を聞いたことがあると思います。近年誕生したばかりですが、投資家であればおそらくご存じでしょう。「億」という単語が入っていることから予想できますが、「資産1億円を達成した人」のことで、このところ多く生まれているようです。果たしてなぜ1億円もの額の資産が短期間で生まれるのでしょうか。

億り人とは

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(写真=Africa Studio/Shutterstock.com)

億り人は株やFX、仮想通貨などでの投資において、資産1億円を達成した方を億り人と呼びます。野村総合研究所では富裕層の定義は資産1億円以上と分類されており、億り人とは投資によって富裕層になった人たちという意味でもあります。

東洋経済新報社が公表している生涯給料ランキングによりますと、2017年のサラリーマンの平均生涯給料は2億1,803万円となっています。総資産1億円を達成した億り人達は平均的な生涯給料の約半分を手に入れたということになり、これをきっかけに仕事を退職する方や投資を引退する方も中にはいるようです。

大ヒット映画も影響?

億り人自体は造語で2008年に米国アカデミー賞外国語映画賞を受賞して一躍有名となった映画「おくりびと」が語源と言われています。映画は納棺師という職業にスポットが当てられたものですが、投資の世界での億り人という言葉は映画の内容と何も関係がなく、単に映画の名前をもじって億り人となっています。

2012年以降は数多くの億り人が誕生しました。2012年からは第2次安倍内閣による経済政策、いわゆるアベノミクスが実施されました。2012年当時の日経平均株価は1万円前後の水準で推移していましたが、アベノミクス政策によりその後2015年には一時2万円を超える水準にまで回復しました。2018年現在も日経平均株価は2万円の大台を超えた水準で推移しています。

このアベノミクスによる株高や為替の変動によって株式投資やFX投資において多くの億り人が誕生しました。その後さらに一般的に億り人という言葉が認知されるようになった大きなきっかけが仮想通貨バブルです。

仮想通貨で大量の億り人誕生

2017年は仮想通貨元年とも呼ばれ、仮想通貨に関する法律も整備され、様々な仮想通貨が大きく値上がりをするなど、仮想通貨が賑わいを見せた年でもありました。仮想通貨の代表格であるビットコインは2017年12月半ばに1ビットコイン=2万ドルに迫り、2016年末と比較すると約20倍の上昇を記録する場面も見られました。

2017年はビットコイン以外の仮想通貨においてもメジャーな通貨からマイナーな通貨まで様々な仮想通貨がバブルの如く上昇する場面が見られました。この仮想通貨バブルに乗って、仮想通貨投資により億り人になった投資家も数多く誕生しました。

国税庁の発表によると、2017年に仮想通貨取引を含めた収入が1億円以上あったと申告したのは331人とされています。2017年の急激な仮想通貨の上昇によって331人もの億り人が誕生した事が分かります。

ただし331人という数字は申告手続きをした人のみの数字となっており、申告をしていない投資家を含めると実際にはさらに多くの億り人が誕生した可能性があります。億り人とまではいかずとも2017年は周囲でも仮想通貨投資によって儲かったという人がいたのではないでしょうか。

億り人から一転、資産を失った「戻り人」も誕生

仮想通貨の上昇により数多くの億り人が誕生しましたが、その後の仮想通貨は盛り上がりに欠ける展開が続いています。

中国や韓国など各国が仮想通貨に対する規制を強化するなどの流れもあり、仮想通貨の人気が下落する中、仮想通貨の信頼性を揺るがす事件としてコインチェックのネム(XEM)流出事件などもありました。これらの要因も重なり、ビットコインは2017年12月をピークに下落基調となり、現在もビットコインを含む仮想通貨全体で軟調な相場が続います。

その結果、仮想通貨の上昇により億り人になった投資家が仮想通貨の下落と共に資産を大幅に減らし1億円未満の資産に再び戻る「戻り人」なる投資家も数多く誕生してしまいました。昔から投資の格言で「利食い千人力」という言葉がある様に、やはり利益確定が投資では大切であると実感させられます。(右田創一朗、元証券マンのフリーライター / d.folio

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