東京株式市場は上昇後の一服場面を迎えています。世界的な貿易摩擦問題への不安が後退し、外為市場で円安が進む中、日経平均株価は10/2(火)に一時24,448円まで上昇しました。しかし、その後は上昇ピッチの速さや米長期金利の上昇等に対する警戒感もあり、同平均株価は再度24,000円を割り込んでいます。

そうした中、株式市場は名実ともに年度後半相場入りとなるとともに、10月下旬から本格化する決算発表が意識される時期となりました。メディア等で好業績が観測され、株価が動意を示す銘柄が増えてくる可能性もがあります。

そこで、「日本株投資戦略」では、これまでの四半期決算が好調で、今後業績予想の上方修正が期待できる銘柄をスクリーニングにより抽出してみました。前回はその第1回目として、9月決算および12月決算の銘柄を分析対象としました。今回は主力の3月決算銘柄を分析対象としたいと思います。業績予想の上方修正が期待される銘柄にとり、足元の相場下落局面は投資チャンスとなるかもしれません。

「上方修正」期待の銘柄はコレ!?~3月決算銘柄編

日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
(画像=PIXTA)

それではさっそく、四半期決算が好調で、今後業績予想の上方修正が期待できる銘柄をスクリーニングにより抽出してみたいと思います。今回は「主力」の3月決算銘柄を分析対象にしてみました。

(1)東証1部上場銘柄であること
(2)3月決算の銘柄であること
(3)時価総額1,000億円超の銘柄であること
(4)広義の金融を除く業種に属していること
(5)アナリスト2名以上が業績予想を行っていること
(6)過去4週間で市場予想EPSが低下していないこと
(7)第1四半期(2018年4~6月期)の営業増益率(前年同期比)が中間期(2018年4~9月期)および通期(2019年3月期)の会社予想営業増益率(前期比)を上回っていること
(8)中間期について、予想営業利益の市場コンセンサスが会社予想を10%超上回っていること
(9)通期について、予想営業利益の市場コンセンサスが会社予想を5%超上回っていること
(10)来期(2020年3月期)について、予想営業利益の市場コンセンサスが10%超の増益予想となっていること

上記の全条件を満たした銘柄を(8)の数字、すなわち中間期について予想営業利益の市場コンセンサスが何%、会社予想を上回っているのかを示した数字が大きい順に並べたものが表1になります。「日本株投資戦略」ではこれらの銘柄は、今後業績予想の上方修正が期待できる銘柄であると考えております。

日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
(画像=SBI証券)

表1:業績予想の「上方修正」が期待される東証1部銘柄(3月決算銘柄)
コード / 銘柄名 / 株価(10/5) / 中間期市場予想営業益(上振れ率) / 第1四半期営業増益率(前年同期比) / 通期会社予想営業増益率 / 投資ポイント
<3635> / コーエーテクモホールディングス / 1,966 / 62.9% / 133.0% / 2.5% / 海外「ゼルダ無双」好調
<7296> / エフ・シー・シー / 3,235 / 47.8% / 58.9% / 3.2% / トヨタ向けに新規受注
<6967> / 新光電気工業 / 910 / 23.9% / 415.1% / 57.2% / IoT分野でリードフレーム増加
<4528> / 小野薬品工業 / 3,209 / 22.7% / 26.0% / 1.3% / オプジーボの需要増加続く
<4023> / クレハ / 8,430 / 20.5% / 44.9% / 7.9% / 自動車向け拡大に期待
<4849> / エン・ジャパン / 5,500 / 16.1% / 26.8% / 11.1% / 働き方改革が派遣に特需
<6197> / ソラスト / 1,390 / 15.2% / 33.5% / 13.2% / 介護事業が着実に増加
<6005> / 三浦工業 / 3,530 / 14.2% / 45.0% / 6.7% / 観光業拡大が追い風

※各種資料および会社公表データをもとにSBI証券が作成。「中間市場予想営業益」(上振れ率)は上記スクリーニング項目の(8)で用いた数字で、中間期について予想営業利益の市場コンセンサスが何%、会社予想を上回っているのかを示した数字です。中間期の予想営業利益の市場コンセンサスは第1四半期実績に第2四半期の市場予想を合計して求めています。なお、業績データ・ニュースに関しては10/4(木)現在の情報を使っております。それ以降に情報等が更新される可能性も想定されますので、ご注意ください。

「トップダウン」でみた場合に有望な業種は?

図1はドル・円相場、ユーロ・円相場、NY原油(WTI先物)の四半期平均相場を前年同期と比較した数字の推移をみたものです。2018年7~9月期のドル・円相場について日々の終値を平均すると1ドル111円49銭で、前年同期比0.5%の円安・ドル高となります。ちなみに、4~6月期は同1.8%の円高・ドル安でした。ちなみに、日銀短観(9月調査)で2018年度上期の想定為替レートは1ドル107円52銭です。自動車などの輸出企業にとり、ドル・円相場は総じて、業績の上振れ要因になったと考えられます。

また、2018年7~9月期のNY原油相場は前年同期比44.0%の増加でした。図1にも表れているように、原油価格は前年同期比での上昇傾向が長期化しています。これは石油・石炭製品や卸売にとって、業績の上振れ要因になると考えられます。

表2は日銀短観(9月調査)で「予想」(前回調査における「先行き」)より業況判断指数(今回の「最近」)が良かった業種を示したものです。建設や不動産が引き続き好調なことを示しています。また、自動車や卸売(商社などを含む)が含まれていますが、図1が示している為替相場や原油相場の動きとつじつまが合っています。これらの業種の銘柄にも注目したい所です。

図1:為替・原油相場の前年同期比変化率(四半期)

日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。ドル・円相場、ユーロ・円相場、NY原油(WTI先物)の四半期平均相場を前年同期と比較した数字の推移をみたもの。(画像=SBI証券)
日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
※日銀短観をもとにSBI証券が作成。日銀短観(2018年9月調査)の大企業業況判断指数(「良い」-「悪い」)において、前回(2018年6月)における「先行き」見通しに対し、今回の「最近」が大きく上振れた業種を(B)-(C)の数字が大きい順に並べたもの。(画像=SBI証券)

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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鈴木英之 SBI証券 投資調査部

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