100円の商品が110円になると値段が「高くなった」と言われるが、これはなんとなく直感的に理解できる。ところが、1ドル100円が1ドル110円になった場合、「円安になった」と言われてもすぐにピンとこない人もいるのではないだろうか。
「安い」という言葉のイメージと実際の数字の動きが、逆のような気がして頭が混乱するが、慣れていない人が「為替って難しい」とつまずいてしまうポイントもここだ。「円安」「円高」を感覚的に捉えるためには、次のように考えてみると分かりやすい。
アメリカでりんごが1個1ドルの時、1ドル100円が1ドル200円になると、同じリンゴを1個買うのにより多くの日本円が必要になる。100円で買えたりんごが200円になるわけだから、円の価値が下がったということだ。為替では、この円の価値が下がった状態=円が安くなったことを「円安」と言う。
「円安」がわかりにくいのは、この言葉の説明が足りていないことも理由の一つかもしれない。1ドル100円が1ドル110円になると「円安になる」というのは、同時に1ドルが100円から110円に「高くなった」ことを意味する。つまり、「米ドルと日本円を交換する場合に、米ドルが高くなって日本円が安くなった」と言うべきところを「円安」の一言で済ましてしまっているのだ。
「円安」という言葉一つで難しく感じてしまいそうだが、今回はよくよく考えると実は理解しやすい外国通貨と為替について考えてみよう。
通貨の価値が変わる仕組み
外国為替は異なる通貨間で行われる売買のことだが、その特徴は「通貨の交換」を伴うこと。ある通貨を手に入れようと思ったら何か通貨を売る、つまり通貨を交換する必要がある。海外旅行に行く時に、外国通貨を手に入れるために日本円を売る(交換・両替)様子を思い浮かべると理解しやすい。
では、通貨の価値はどのように変化するのだろうか。最近は野菜の値段が値上がりしたというニュースを耳にすることが多いが、物の値段は基本的には需要(買いたい量)と供給(売りたい量)のバランスで決まる。例えば野菜の量が少ないと、多少高くても必要な人は野菜を買う。そうすると値段が上がるという仕組みになる。
通貨も基本的な考え方はこれと同じだ。ドルを買いたい人が多いと、多少高くても手に入れたい人が現れ、ドルの値段が上がる。売りたい人が多いと、少しくらい安くても手放してしまおうと考える人が出てきて、値段が下がることになる。
先ほど通貨は交換される、という性質について説明したが、買われる通貨がある=売られる通貨があるということだ。ある通貨がたくさん買われれば価格が上昇し、同時に売られた通貨は価格が下落する。例えば日本円で米ドルを買う流れがある時、日本円が売られて米ドルが買われている状態なので、「円安・ドル高」圧力となる。
通貨の価値が変化する基本的な仕組みはわかったが、それではどんな時に買いたい量と売りたい量は変化するのだろうか。言い換えると、どんな要因が為替の変動に影響を与えるのだろうか。相場を動かす要因には様々なものがあり、それぞれが複雑に絡み合いお互いに影響しあっている。そうした要因の総合的な動きの結果として相場が変動することを理解するために、いくつかの要素について見てみよう。
●金利差
ある2つの国の間で金利差がある場合、金利が高い方が得られるお金は大きくなる。例えば日本では金利0.5%で、アメリカでは2%だとすると、元手が同じでも当然アメリカの方が収益は大きい。こうした状況だと、有利な金利を求めて円よりもドルの資産を増やそうと考える投資家が増えてくる。金利の高いドルを買う動きが出てくることで、「円安・ドル高」になる。
こうした、低い金利の通貨を借りて、高い金利の通貨を運用して利益を上げる手法をキャリートレードと呼ぶ。先ほどの例だと、低金利の日本円で資金調達してアメリカドルを買い、稼ぐことは「円キャリートレード」と呼ばれる。このように金利と為替は密接に関係しているが、逆に為替の変動が金利に影響を与えることもある。
●物の値段(購買力平価)
ある2つの国で、それぞれの物価の水準が為替レートを決めるという考え方もある。例えば日本で1個100円のハンバーガーが、アメリカで1ドルなら、1ドル=100円で釣り合っているというわけだ。これは、すべての財やサービスが自由に貿易されれば、違う国でも同じ商品が同じ値段になるという法則に基づいており、絶対的購買力平価説と呼ばれる。
ただ、ある時点で2つの国の購買力を厳密に比較するのは難しい。そこで考えられたのが2つの国の物価の変動を比較する相対的購買力平価説という方法だ。
先に野菜を例に物の値段が需要と供給で決まる点に触れた。一度は聞いたことがある言葉かもしれないが、需要が供給よりも大きい状態が続き、物価が継続的に上昇することを「インフレーション(インフレ)」と呼ぶ。100円のハンバーガーが200円になると、100円の価値もハンバーガー半分に下がることになり、インフレが進むとお金の価値が下がることを頭に入れておこう。
物価上昇率が他の国より高くなると通貨の価値が減り、為替レートが下落する仕組みは次のようになる。日本で100円、アメリカで1ドルだったハンバーガーが、1年後にアメリカでは変わらず1ドル、日本で200円になるケースでは、商品の価値を等しくする為替レートは200円=1ドルになるのだ。
●実需(貿易収支)
具体的な貿易などのための実際の為替取引を実需と呼ぶが、輸出や輸入でも為替が動くことが知られている。よく使われる説明は、日本の自動車をアメリカで売る取引だ。
日本の自動車メーカーがアメリカに自動車を輸出すると、代金はアメリカドルで受け取ることになる。メーカーは国内でお金を使うためにドルを日本円に替える必要があるので、ドルを売って円を買う。輸出が増える貿易黒字の状態であれば、こうした取引が増えるので「円高・ドル安」の圧力となる。
輸入の場合はどうだろうか。貿易に使われる基軸通貨はアメリカドルなので、日本の企業はアメリカの企業に対し、製品の代金をドルで支払う。ドルを準備するためには、円を売ってドルを買う必要がある。そのため貿易赤字の状態は「円安・ドル高」の要因になるのだ。
なお、貿易の決済に日本円が使われた場合でも、アメリカの企業はその円を売ってドルに替えるので同じように「円安・ドル高」方向に進むことになる。
ところで、日本で自然災害が起こると「円高・ドル安」圧力になる場合がある。考え方はここまでの話と同じで、大きな被害が出ると自国通貨で復興費用が必要になる。外貨準備に余裕があればその外貨を売って日本円を購入することになるが、外貨準備の約6割以上はドルなので「ドル安・円高」圧力となるのだ。
意外に身近な為替
ここまで、通貨と為替についていろいろな要因を確認してきたが、グローバリゼーションが進んでいる現代ではもっと身近に感じることも多くなっている。
日本を訪れる外国人の数が年々増えているが、アメリカドルと比べるとここ数年は日本の物価が相対的に安くなっている。このような「円安・ドル高」は外国人旅行者にとってはお得なので、日本を訪れる人が増えるというわけだ。
難しそうでも、慣れると意外にわかりやすい通貨と為替。自分の周りの身近なところから考えてみてはどうだろうか。(提供:iyomemo)
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