安倍政権下では、将来に向けたキャッシュレス決済の推進がなされている。これには、来日する外国人の増加に伴う環境整備の必要性が関係しているという。ある調査では、クレジットカード派の貯蓄額は現金派よりも多い、といった結果が出たことからも、政府はキャッシュレスでの支払いを推進したい考えだ。日本政府が力を入れて取り組むキャッシュレス決済について詳しく見ていきたい。

政府が定めたキャッシュレス決済推進の方針

キャッシュレス
(画像=PIXTA)

日本政府がキャッシュレス決済を推進する動きには、2020年の東京オリンピック・パラリンピックなど、主要国際イベントの開催が大きく関係している。

2016年時点の日本におけるキャッシュレス決済の比率は20%で、50%を超える韓国や中国、約40%のアメリカと大きく差が開いた。この数値は、日本が他国より後れを取っていること、そして日本を訪れた外国人客が商業施設や観光地などで支払う際、現金払いのみとなるケースが多いということを示している。

訪日外国人客数の大幅な増加が見込まれるもキャッシュレス化が浸透していない状況を鑑みた政府は、2014年にキャッシュレス決済の推進方針を定めた。この方針は毎年打ち出されており、外国人客が利用するであろう施設でのクレジットカード決済可能率とIC対応決済端末設置率を、2020年までにそれぞれ100%とする目標を設定。さらに、2027年に向けてキャッシュレス決済比率を4割まで増やそうともしている。

キャッシュレス決済のメリットと推進していく上での課題

政府が推進するキャッシュレス化のメリットなどを解説する前に、まずはキャッシュレスの種類について簡単に説明したい。

キャッシュレスは、プリペイド・ポストペイ・リアルタイムペイメントからなる3種類のツールがメインとなっている。プリペイドは、現金をあらかじめチャージしておいたカードでサービスや物を購入する決済方法のことで、交通系ICカード「Suica」や「WAON」、「nanaco」などが該当する。自分がチャージした料金の範囲内で支払うことになるため、いつのまにか大金を使ってしまうという心配は無用だ。

それに対し、ポストペイは後払い型のツールで、クレジットカードがこれにあたる。日本のキャッシュレス決済比率のうち9割を占める、最も利用数の多いカードだ。

プリペイド・ポストペイの両方とも異なるのが、即時払い方式をとるリアルタイムペイメントである。購入と同時に口座から引き落とされるもので、デビットカードのほか、財布の代わりにスマートフォンで決済するモバイルウォレットを指す。

さまざまな種類があるキャッシュレスのメリットだが、消費者は現金を持たずに買い物ができるだけではなく、カードなどのツールを紛失した際の被害を最小限に抑えられる点が挙げられる。種類によっては決済履歴が口座の通帳に自動で記入されるため、家計簿として支出状況を確認することも可能だ。また、事業者側には、現金の盗難リスク軽減や訪日客の消費が増える利点がある。経済産業省によれば、クレジットカード決済を選ぶ訪日外国人が5割を超え、支出金額も現金払いより高い傾向にあるという。

さらに決済記録の残存による脱税・賄賂・資金洗浄の防止などのメリットもある一方、キャッシュレス決済に対する課題も残されている。世界では決済で得られるデータを利用して事業戦略を練るが、日本においては決済時に発生する手数料で利益を図る事業者が多い。有益な情報を活用した消費拡大を目指すのではなく、目先の収益を重要視しているとも考えられる。

愛媛県内のキャッシュレスに向けた取り組み

政府がキャッシュレス化を推進する中で、愛媛がキャッシュレス化のモデル県となりそうな取り組みが開始されている。

2017年9月、決済関連事業を担う「NIPPON PAY」が、松山市にキャッシュレス専用のタブレットを発送する拠点を開設した。キャッシュレス化が進むことで流通にかかるスピードが早くなり、日本経済のさらなる成長を促せるのではないか、などメリットの多さから、キャッシュレス化の推進に踏み出したという。

発送するタブレットの数は、取り組み開始から2年間で20万台にも上る。各商店街に無償で提供することで雇用者数の増加を促し、ひいてはキャッシュレス化の波が愛媛から全国へと広がっていくことを期待しているそうだ。

キャッシュレス決済の推進方針を決定してから、決済比率は徐々にアップしているものの、ナイジェリアまたはケニアといった開発途上国よりも低いのが現状だ。キャッシュレスを促進するためには、端末導入時に発生するコストや手数料、浪費の可能性など事業者・消費者ともに抱える不安や懸念の払しょくが必要と考えられる。全国で一足早くスタートした愛媛の取り組みと併せて見守っていきたい。(提供:iyomemo

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