ラジオ番組を、インターネットを通じて、スマートフォンやパソコンなどで聞けるサービス『radiko.jp(ラジコ)』。ラジオの新たな聴き方として広く受け入れられ、ユーザーを増やし続けている。ラジコは、「放送のコンテンツを通信に乗せる」ことに、なぜ成功したのか? そして、これからどこに向かうのか? 〔株〕radikoの青木貴博社長に取材した。

「放送コンテンツを通信に乗せる」というチャレンジ

radiko,青木貴博
(画像=The 21 online)

――今、ラジコのユーザー数はどのくらいですか?

青木 日間ユニークユーザー数が約120万人です。

この数には、まだまだ満足していません。日本国民全員がユーザーになることはないにしても、それに近づくよう、一人でも多くの方にユーザーになっていただくことが使命だと思っています。

――ユーザーには、どんな人が多いのでしょうか?

青木 ボリュームゾーンは40代男性サラリーマンです。朝の通勤時間帯の利用が多いですね。電車の中でニュースを聴いているようです。

電車の中ではスマホの画面を見ている人が多いですが、ラジオ番組は耳で聴く音声コンテンツなので、目で見るコンテンツと競合しません。また、画面が見られないほど混んでいても聴けます。そこにメリットを感じていただけているのではないでしょうか。

――御社は、2010年に株式会社になりましたが、もとは2009年に発足したIPサイマルラジオ協議会という任意団体でした。

青木 ラジオ業界には、聴取者が漸減し続けているという課題がありました。一方、スマホやタブレットは、どんどん普及していくことが予想されていました。

そこで、ラジオという放送のコンテンツを、インターネットという通信に乗せて、それらの端末でも聴けるようにしようということで、そのチャレンジのために、関東と関西の13の放送局が参加して始まった団体です。

その事務局が電通の中に置かれて、当時、電通の社員だった私もそこに加わりました。今も、持ち株比率は12.4%ですが、電通が当社の筆頭株主です。

――13局の足並みは、当初から揃っていたのでしょうか?

青木 はい。危機感が共有されていたのだと思います。

――今、ラジコに参加している放送局は92に増えました。それでも足並みが揃っている?

青木 もちろん、放送局の間には、競争領域があります。一方で、協調領域もあって、そこを当社が担っているわけです。

最近の例だと、スマートスピーカーのAmazon Echoでラジコを聴けるようにしたのですが、各放送局がそれぞれAmazon Echoで番組を聴けるようにするよりも、協調してやったほうが、コストの面でもいい。その窓口を当社が務めているような形です。

――テレビ放送では、各放送局が協調して番組を通信に乗せる動きが、鈍いように感じます。

青木 恐らく、ラジオ放送局のほうが、より危機感が強いのでしょう。だから、92局が心を一つにできているのだと思います。