仮想通貨技術を活用した資金調達の枠組みである「ICO」が、世界的に注目を浴びている。証券取引所に上場されていない企業や開発チームなどでも、世界各地から資金を調達しやすい。よく似た「IPO」とはどう違うのか。そもそもICOの仕組みとは。整理しておこう。

ICOとはそもそも何か

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(画像=Siberian Art/Shutterstock.com)

ICOとは、独自トークン(仮想通貨)を発行・販売し、投資家から事業資金を集める仕組みのことを指し、「アイ・シー・オー」と呼ばれている。Initial Coin Offeringの略だ。

発行された独自トークンが仮想通貨取引所に上場(売買開始)すると、広く売買が行われるようになり、保有する独自トークンの価値が高まっていく可能性がある。そのためICOプロジェクトに対して投機的な目的で投資を行う個人投資家が増え、世界的にICOが盛んになっていったという背景がある。

ICOで発行・販売されるトークンの多くは、各プロジェクトがICOで調達した資金によって開発する商品やサービスの中で利用できるようになるのが一般的だ。各プロジェクトの商品やサービスはさまざまだが、ブロックチェーン技術を活用した事業であることが多い。

ICOとIPOの違いは?

各国がICO実施に対する法的要件を整備し始めているが、当初ICOは誰でも資金調達を世界中から行える枠組みとして注目を浴びた。現在ではアメリカなどでは、政府当局の認定を受けなければICOを合法的に実施することはできなくなっている。

ICOと似た呼び方のものに「IPO」がある。ICOは「新規仮想通貨公開」と日本語訳されるが、IPOは「新規株式公開」。つまり資金調達の手段が「株式発行」であるか「仮想通貨(独自トークン)発行」であるか、という違いだ。

またIPOが審査制であることに対し、当初ICOは誰でも自由に実施できるという特徴があるとされていた。しかし各国が法規制やルール作りを進めるにつれて、ICOも政府への登録や事前審査が必要になりつつある。

ICOの規模は?

仮想通貨やICOの調査や統計情報などを発信しているコインデスクによれば、2017年のICOにおける全世界の調達額の総額は約60億ドルと言われている。このままのペースでいけば、2018年は1兆円を超える規模になると言われている。

2018年における最大のICOは、チャットアプリ世界大手の「テレグラム」が行った資金調達だ。2018年2月と3月に2回の独自トークンのクラウドセール(一般販売)を実施しており、合計で約17億ドルを調達した。

2018年4月現在、流通量がビットコインに次いで多い「イーサリアム」も、ICOによる資金調達を過去に実施している。実施したのは2014年で、日本円にして約20億円の調達に成功している。スイスに拠点を置くブロックチェーン組織であるカルダノ財団が2017年に実施したカルダノコイン(ADA)も、ICOの代表例の一つとして挙げられる。

ICOの注意点は?

ICOにおいては、実施主体側が集めた資金を持ち逃げするなどの詐欺事件も起きている。これらの詐欺事件は「スキャム」と呼ばれ、世界的にスキャム排除が大きな課題となっている。そのため投資家保護の観点から、各国政府は2017年ごろから投資家保護に向けて本格的な規制を始めている。

しかし現在のところ、ICOはIPOに比べて投資家保護の仕組みが整っているとは言い難い。そのため、ICO投資には一定のリスクがあることを理解しておく必要がある。例えば、各プロジェクトが公表している「ホワイトペーパー」と呼ばれるプロジェクト概要を読んだり、実施元や開発メンバーの顔写真やプロフィールが公開されているかもチェックしたりすることなども必要だろう。

ホワイトペーパーには、ICOの実施スケジュールや事業内容、開発ロードマップなどが示されている。しかし一般的にホワイトペーパーのページ数は数十ページにも及ぶ膨大なものが多いため、最近では投資家向けに「ワンペーパー」や「スリーペーパー」と呼ばれる簡易版も用意されるようになってきた。

ICOによっては、公式サイトなどに「◯◯年◯◯月に上場確定」などと掲載しているプロジェクトもあるが、実際にこのスケジュール通りに上場せず、購入した独自トークンを円やドルなどの法定通貨に交換できない状況に陥るケースもある。

このように、現在のところICO投資は、「ハイリスク」の投資であると見られている。さらにこのところ、日本ではICOプロジェクトの話はほとんど進んでいない。今後またICOの動きが国内で再燃するのか注目したいところだ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)/MONEY TIMES

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