2017年9月、金融庁によって初めて登録された仮想通貨交換業者9社に名を連ねたQUOINE(コイン)株式会社。この度取引所サービスを刷新し、グローバルな総合取引プラットフォーム「Liquid by Quoine(以下Liquid)」の運営を始めた。「仮想通貨の流動性を高めて売買しやすく、使いやすい環境をつくりたい」という同社CEOの栢森加里矢(かやもり・かりや)氏に、公認会計士で作家、自身も仮想通貨を保有しているという山田真哉氏が率直な疑問をぶつけた。(構成=濱田 優 ZUU online編集長、写真=森口新太郎)

世界中に散らばる「流動性」を束ねるのがLiquid

山田 まずQUOINE(コイン)が社名で、御社が始めた仮想通貨取引所のサービス名がLiquid(リキッド)ということで合っていますか?

栢森 はい(笑)。金融業界では流動性がないことを「リクイディティがない」というような言い方をしますが、それが由来です。今でこそ仮想通貨、トークンは数多く存在していますが、創業当時は仮想通貨といえばほぼビットコインという状態でした。

山田 創業は2014年11月とのこと。その年は2月にマウントゴックス事件が表面化していますね。

栢森 当時のセンチメント(市場心理)は悪く、「ビットコインは終わった」と言われていましたね。マウントゴックスは交換所のセキュリティの問題であって、ビットコイン自体に問題があったわけではなかったのですが……。その後、2015年にイーサリアムが誕生するなど、新たな仮想通貨が次々に生まれました。仮想通貨やトークンが増えるにつれ、散らばっていく流動性を束ねようというのが我々のLiquidです。

山田 「流動性が散らばる」とはどういうことなのでしょうか。Liquidの仕組みについても教えてください。

栢森 まず仮想通貨の中でもビットコインは世界中で売買のニーズがあり、流動性もあります。ただマイナーな仮想通貨は流動性が低いし、国によっては投資家のボリュームも小さい場合があります。そうした流動性の差を我々が埋めるわけです。

たとえば米ドルでビットコインを買いたい人と、日本円でビットコインを売りたい人をマッチングさせる。ほかにも、リップルを日本円で買いたいけど日本円で売りたい人が居ないときに、ヨーロッパでリップル/ユーロを売りたい人のニーズをマッチングさせる。こうしたことができるのが、Liquidの「ワールドブック」という機能です。こんなふうに我々の取引所が、世界中に散らばっている流動性を束ねるわけです。

山田 それはすごい。世界の通貨を扱える取引所はほかにあるんですか?バイナンスなどはどうなんでしょうか。

栢森 いえ、できるのは我々だけです。そもそもバイナンスは法定通貨を扱っていません。その良し悪しは別として、彼らは規制の範囲外でやっている。銀行口座がなく、法定通貨を扱っておらず、売買は仮想通貨建てなんです。

法令を遵守して規制当局と足並み揃えてやっている取引所・販売所もあれば、規制の枠外でやっているオフショア型のところもあります。これにはバイナンスやフオビなど中国系が多く、一方で日本や欧米の取引所は、我々Liquidにしてもコインベースにしても、国の法令を遵守して必要なライセンスをしっかり取り、事業者登録しているわけです。

山田 先ほどのLiquidの説明ですが、ビットコインやリップルなど特定の仮想通貨を、円やドル、ユーロなど種類の異なる法定通貨で買いたい、売りたいというニーズをつなげるという理解でいいのでしょうか。

栢森 現状ではそうです。今後は異なる仮想通貨同士の売買ニーズもつなげられるようになります。たとえば、ヨーロッパにユーロでイーサリアムを売りたい人がいる。日本に日本円でビットコインを買いたい人がいる。国も通貨も全然違うけれど、Liquidはビットコイン/イーサのエクスチェンジもできるのでつなげられる。この場合、Liquidが間に入って、ビットコイン/円とイーサリアム/ユーロの取引をそれぞれの国で行います。

>> Liquid by Quoineのサービスについてより詳しく知る

「詐欺コイン」は日本では上場できない

QUOINE栢森CEO
栢森CEO(写真=森口新太郎)

山田 今扱っている仮想通貨、法定通貨の数って何種類くらいありますか?

栢森 今はグローバルで95種類、日本国内では5種類(ビットコイン、イーサリアム、ビットコインキャッシュ、キャッシュ、リップル)です。法定通貨としては、円、米ドル、ユーロ、豪ドル、香港ドル、シンガポールドルなど9種類です。

山田 私も少し仮想通貨に投資していますが、初心者の多くが「詐欺コインをつかんだら怖い」と恐れ、投資に二の足を踏んでいるのではないかと思います。

栢森 詐欺コインを英語で「スキャム」といいますが、我々の取引所に上場している95の中には一つもありません。なぜかというと審査プロセスがものすごく厳しいからです。プロダクト自体も、マネージメントチームも見ますし、開発が進んでいるのか、1年以内にプロダクトがローンチできることが分かるMVP(Minimum Viable Product)も確認します。信頼できる法律事務所から出てきているかも確認します。誇大広告のようなホワイトペーパーは全部審査で落ちるんです。

ただし、新しい仮想通貨・トークンを生んでいるのはベンチャーです。信頼できるメンバー、チームが高い志を持ってプロダクトを作ろうとしていても、残念ながら9割が日の目を見ない世界です。それも含めて「詐欺コインだ」となると可哀想ではありますね。

監査人がもっと機能する仕組みになって欲しい

栢森ー山田対談
栢森、山田の両氏(写真=森口新太郎)

山田 公認会計士であり、もともと監査法人に在籍した立場から業界に対して思うことは、もっと監査人に活躍させて欲しいということです。株投資の歴史をひもとくと、1602年にオランダ・アムステルダムで証券取引所ができて、会計士が誕生するまでに250年ぐらいかかっています。ただ監査人自体は結構早い段階で存在したそうです。仮想通貨業界でも、運営企業や取引所、各コインに対する第三者的な監査がもっとしっかりなされる体制にして欲しい。

栢森 おっしゃる通りです。実際、日本の改正資金決済法、いわゆる仮想通貨関連法で、財務諸表監査に加えて分別管理監査が義務付けられました。これは業者としては負担増ですが、素晴らしい動きです。我々のように資本金が10億以上の企業は、仮想通貨関連法案に基づく監査のみならず、会社法上の監査も必要です。

山田 海外の取引所はどうなんでしょうか。

栢森 先ほど触れたオフショアの取引所には監査がありません。仮想通貨の魅力はボーダーレスなことで、サービスは一気にグローバル展開できますが、法令や監査は国ごとのルールですから。「ハック件数ゼロ」「相場操縦していない」と言われたところで、会社を信用できるのかという懸念はあります。

山田 日本に居ながらオフショアの取引所に口座を開設している人もいるのでは?

栢森 ええ。日本で登録していない事業者は、日本のお客様を受け入れてはいけないのですが、実際に我々が日本在住の仮想通貨投資家に行ったインタビューでは、多くの方がバイナンスを使っていました。

日本のほとんどの取引所が扱っている通貨は5~6種類程度。我々もグローバルサイトでは95通貨ですが、日本で買えるのは5通貨です。一方、バイナンスは200近くの通貨を上場させています。やはり向こうのほうが魅力的に見えるのでしょう。

山田 昔で言う「闇市」のような存在に見えますね。ただ市場というものは、最初は混とんとして猥雑でも、やがて「安全が一番」となっていく。仮想通貨も何年かかるか分かりませんが、そうなるのでしょうね。

栢森 そうならないといけないと思っています。当社もコンプライアンスには注力していて、この分野の人材を一番増やしています。大手会計事務所の元フィンテック責任者や、メガバンクグループの役員経験者で金融庁参与を社外取締役に迎えるなどしています。

仮想通貨業界はもともとネット出身者が多く、金融業界ならではのリスクやコンプライアンスの意識、ガバナンス面が弱かったのですが、今はどこも注力しています。

ただイノベーションを目指す姿勢やベンチャースピリットを失うと進化しない。「規制でガチガチに固めよう」ではなく「みんなで育成していこう」とならないと。日本だけがガラパゴスになってしまうのは避けたいとは思っています。

山田 セキュリティ面にも力を入れているんですよね。

栢森 Liquidでは、お客様の資産をオンラインから切り離したコールドウォレットで管理していますし、マルチシグ対応も進めています。既にビットコインとビットコインキャッシュ(BCH)には対応しています。出金のプロセスも厳重にして、不正な資金移動が行われないよう対策に力を入れています。

>> Liquid by Quoineのセキュリティについてより詳しく知る

ビットコインは「デジタルゴールド」 機関投資家の参入で市場に厚みが出る

山田真哉氏
山田真哉氏(写真=森口新太郎)

山田 仮想通貨の可能性についてあらためて考えるとき、「通貨」という言葉にこだわらないで「資産」という見方をしたほうがいいように思えてきました。

栢森 そうですね、仮想通貨は送金手段にも運用対象にもなる。法定通貨のような性格の部分もあれば、コモディティ的なところもある。ブロックチェーンまで含めて考えると、いろんなソリューションのユーティリティになります。

ビットコインは、むしろデジタルゴールドという位置づけが正しい。僕は、ビットコインの時価総額は金より大きくなると思っているんです。というのも、ビットコインのほうが便利ですから。金塊は持ち歩けないし分割もできないし、支払い手段にも使えない。ビットコインは発行量が2,100万と決まっていて、小数点以下第8位まで分割でき、あげようと思ったらほぼリアルタイムで世界の裏側に送れます。

ただビットコインが生まれて、たかだか9年ほど。ICOはそれこそ1~2年ですから、ボラタイルな(価格が急に大きく動く可能性がある)のは自然です。だから「先物やオプションでヘッジしよう」といった具合に金融商品が生まれてきて、安定していくはずです。個人だけが売買しているとモメンタムやセンチメントで動きがちですが、機関投資家が入ってくると厚みも出てきます。

山田 仮想通貨の一般化には、「トークン」という概念が浸透するかどうかが大きい気がします。何かいい言い替えはないんですかね?

栢森 世界では既に「トークンエコノミー」と言われていますからね……逆に何かいいアドバイスがあれば教えてください(笑)。

人類の進化は技術の進化だと思うんです。火が使えるようになった、蒸気機関車が生まれた、電気が使えるようになった、インターネットが誕生した……。そして今は「お金」が一気に進化する段階、その幕開け・黎明期にあると思います。

だから我々業界側が「これが暗号通貨・仮想通貨ですよ、はい使ってください」と一方的に提供するのではなく、投資家・消費者含めてみんなでつくっていきたいし、業界を盛り上げていきたいですね。

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栢森加里矢(かやもり・かりや)QUOINE株式会社 代表取締役CEO 東京大学卒業、ハーバード大学MBA取得。三菱商事、Globespan Capital Partners、ソフトバンクグループにてシニアロールを歴任する中、日・米・アジアで投資・IT・ベンチャーに携わる。2014年11月にQUOINEを共同創業、2016年4月よりCEO。

山田真哉(やまだ・しんや)公認会計士・税理士 一般財団法人芸能文化会計財団理事長。大阪大学卒業後、中央青山監査法人/プライスウォーターハウス・クーパースなどを経て独立。『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社)は160万部突破。数多くの企業の会計監査や最高財務責任者、税務顧問などを歴任。

QUOINE栢森CEOと山田氏
QUOINE栢森CEOと山田氏(写真=森口新太郎)