「なりたい自分」になれるNLPのいろは
人は過去の体験による「プログラミング」に支配されている
『マンガでわかる! すぐに使えるNLP』はタイトルからもわかるように、心理学の一つであるNLP(Neuro Linguistic Programming)をわかりやすく解説したもの。
著者である藤川とも子氏は、教師時代、突如、同僚が様々な精神的プレッシャーから勤務できなくなるという出来事に直面したそうです。それをきっかけに、以前から関心があった心理学を深く学びはじめ、その延長線上で出会ったのがNLPでした。
NLPとは、
・Neuro 神経
・Linguistic 言語
・Programming プログラミング
以上の3つの単語の頭文字をとったもので、日本語では「神経言語プログラミング」と呼ばれています。
人は、「神経」(=五感【視覚・聴覚・身体感覚・嗅覚・味覚】)を通じて物事を認識・記憶し、「言語」を使い五感で収集した情報を処理・意味づけしていきます。そして、人はその認識や言語に基づいて“感情や行動のパターン”=「プログラミング」を形成し、それに即した行動をとるようになるのです。
たとえば、目をつぶって、「梅干し」を思い浮かべてください。すると、口の中に唾液が「ジワーッ」と出て来ませんか?
これは、あなたのなかで「梅干し」=「酸っぱい」という「プログラミング」が、これまでの体験の中でつくられているからです。このように、人は無意識のうちに自らの中のプログラミングに基づいて行動や反応を起こしています。
NLPは、こうしたプログラミングの構造を学問的に明らかにし、それを組み立てなおすことで「なりたい自分」を手に入れることを可能にする心理学のスキルです。この点を踏まえたうえで、第1章「人間関係はNLPで円滑になる」から、いくつかのポイントを見てみましょう。
人間関係のベースを生み出す「ビリーフ」
人間関係のベースとなっているもの、それは大きくわけて「環境」と「繰り返し」です。
「環境」とは、私たちが日常生活の中で習慣化していることであり、知らず知らずのうちに身につけたビリーフ(信念)という言い方もできます。環境の形成に影響を与えるものの1つとして、成長する過程で親からかけられる言葉があります。たとえば、親から「年上の人のいうことはよく聞きなさい」などといわれて育った人は、「年上の人を尊重する」というスタンスで物事を判断し、人間関係を構築しがちです。
またもう一つのベースである「繰り返し」は、人が無意識のうちに心の中で繰り返している「内的会話」です。たとえば、朝起きて「何を食べようかな」といいながら台所に向かう。「今日の天気は大丈夫かな」といいながらテレビをつけ、「雨だから傘がいるな」と傘をカバンの中に入れる……。
このように声には出さなくとも、私たちは日々、膨大な数の内的対話を行なっています。そのなかでも、とくに繰り返しいっていることは、自身に強い影響を与えます。たとえば、「馴れ馴れしい人は苦手」と内的対話で繰り返している人であれば、誰かがフレンドリーに接してきたとしても、相手を受け入れることに抵抗を感じてしまうのです。
「なんだか、人とのコミュニケーションが上手くいかないな」と感じるとき、まずは自分自身の「環境」と「繰り返し」を知ることが大切です。
自分自身で「○○すべきだ」「○○することが正しい」と思っていることをあらためて洗い出してみましょう。すると、
「親から『人に迷惑をかけるな』ってよく言われてたから、人と距離をとっていたな」 「でも『迷惑』といっても、人によって解釈はバラバラだから、そこまで気をつかう必要はないかも」
などと、いままでの人間関係を変えるきっかけに気づくはずです。
思わぬ発見が得られる「ポジションチェンジ」
会社の上司から毎日のように小言をいわれて憂鬱……。そんなときに使えるのが「ポジションチェンジ」という方法です。ポジションチェンジとは、言葉の通り「位置を変える」ということ。他者の視点から物事を知覚することを指します。
具体的には、
・第1ポジション(自分の視点)
・第2ポジション(相手の視点)
・第3ポジション(第三者の視点)
の3つの椅子(=視点)を用意します。
まず、自分の椅子(第1ポジション)に座り、関係がうまくいかない上司が相手の椅子(第2ポジション)に座っているところをイメージします。そして相手に向かって、自分が普段から思っていることを話します。
次にポジションを変えて、今度は相手の椅子(第2ポジション)に座ってみます。上司になりきって、動作や姿勢、声のトーンなどを真似しながら、自分に向かって、どんな風に見えているのか、何を期待しているのかなどを伝えます。
さらに、相手の椅子からも離れて、他人の椅子(第3ポジション)に座ります。たとえば、職場のビルの清掃員が、自分と上司が会話している様子を見ている、といったイメージです。第三者の立場から二人の関係を客観的に見つめ、二人の会話の内容を整理したり、第三者の立場からアドバイスをしたりします。
このポジションチェンジを何回か繰り返していくと、不思議なことに自分でも気づかなかった自分の特性に気づいたり、問題の解決策を思いつくのです。
たとえば、上司の視点から見ると「期待しているからこそ、厳しい言い方になってしまう」、第三者の立場から評価すると「なかなかいい師弟関係だ」などと、新たな発見を得ることができます。
苦手な人と会う前には「サブモダリティ」を使う
私たちは五感を通して世界を認識しています。この五感を構成するさまざまな要素のことをNLPでは「サブモダリティ」と呼んでいます。
視覚であれば「色・大きさ・明るさ・動き・距離」、聴覚だと「音量・振動・音程・スピード・リズム」、身体感覚では「湿度・温度・方向・感触・におい」などです。このサブモダリティは変化させることが可能。そうすることで私たちの感覚も変化させることができます。
たとえば、甲高い声で矢継ぎ早に話す上司のことを苦手に感じているとします。この場合、上司への苦手意識と聴覚のサブモダリティがセットになっています。そこで、サブモダリティを変化させてみましょう。
具体的には、上司の甲高い声がどんどん太い声になっていき、ものすごくゆっくり話しているところをイメージします。苦手な人がそんなふうに話していると想像したら、その人に対する受け止め方も違う形に変化するはずです。
ほかにも、たとえば視覚のサブモダリティを変化させて、強面の上司にミッキーマウスのような大きな耳をつけたり、ちょんまげのカツラをかぶせてみても面白いかもしれません。
いつも横柄な態度を取っている人がいて、その人と会うとどうしても萎縮してしまう場合は、自分がガリバーのように巨大化してみる。そして米粒のように小さくなった相手に向かいあうと思えば、横柄に感じるどころかむしろかわいく見えてくるのではないでしょうか。
苦手意識を持った相手と会う前にこうしたサブモダリティのワークをしておけば、今までと違った見方でコミュニケーションを取ることができるようになるでしょう。
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このように、NLPを日常に取り入れる方法をシチュエーション別にわかりやすく解説しているのが、『マンガでわかる! すぐに使えるNLP』です。人間関係に限らず、目標達成や時間管理、心と身体のリフレッシュなど、さまざまな場面で活用できる心理学のスキルが紹介されています。
「いまの自分を変えたいけれど、どうしたらいいかわからない」「NLPをつかって何ができるの?」と感じている人のための入門書として、最適な1冊だといえます。
(提供:日本実業出版社)
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