患者のストレスには敏感に対応できても、自分のストレスには鈍感、あるいは解消できていないという医師が多いようです。勤務の過酷さや「ミスが許されない」というプレッシャー、複雑な組織体制、周囲のサポート不足など、医療現場はストレス要因であふれかえっています。
心身ともに燃え尽きてしまう前に、多忙な医師でも実行できる効果的なストレス解消法を習慣づけましょう。職場だけではなく、私生活でもストレスがたまりにくい環境を作ることが、ストレス解消のカギです。
(1) オンとオフの切り替え
オン(仕事)とオフ(プライベート)の切り替えが上手くできていないと、せっかくの休日でも心身が休まらず、ストレスがどんどん蓄積されていきます。しかしいざ実行するとなると、「仕事や患者のことが頭から離れない」「ついついメールをチェックしてしまう」など、なかなか難しいものです。
オンとオフの境界線があいまいになっている人は、それを少しずつでも改善していくために、「切り替え」を意識してみてはいかがでしょうか。例えば、勤務終了後に思いっきりストレッチする、美味しいコーヒーを飲む、顔を洗うなど、「仕事は終わり!」という合図を脳に送る習慣をつけます。同様に勤務前には「今から仕事!」とオンモードに切り替える合図を送ります。
(2) 忙しい時ほど一息つく
「忙し過ぎて一息つく間もなかった」という毎日を続けていては、心も体もくたびれてしまいます。どれだけ忙しくても仕事や雑用の手を止め、何もしない、何も考えない時間を1分でもいいので持つ。これだけで、不思議なぐらい気分がリフレッシュされます。
どうしても一息つく暇がない場合、あるいはストレスレベルが上がっていると感じた時は、深呼吸を数回します。
「忙しいから休んでいられない」という発想から、「忙しいからこそ一息つく」に切り替えると、仕事の効率アップにもつながり、ストレスが軽減されるでしょう。
(3) 気分がアップことを毎日3つする
音楽を聴く、ヨガをする、絵画を眺める、散歩をする、草花に水をやる――「いい気分」になるちょっとしたことを3つ、毎日の生活に取り入れてみましょう。
些細なことですが、気分がアップすると心の緊張がほぐれ、ストレスも感じにくくなります。
(4) 自分の時間を持つ
いくら多忙な生活を送っていても、「自分の時間」は必要です。むしろ忙しい人ほど、自分の時間が必要なのです。「自分の時間がない」と諦めず、「自分の時間を作る」ように心がけましょう。例えば「休日の午前中は自分の時間」など、患者が診療の予約を取るように、自分で自分の時間に予約を入れてみてはいかがでしょうか。
自分の時間の過ごし方は自由です。趣味や以前からやってみたかったことに時間を費やしても良し、ゆっくりとベッドでまどろむも良し。友人や家族と交流を深めるなど、あえて人と接するのも一案です。重要なのは、自分が自由になる時間を充実させることです。
(5) 定期的にエクササイズする
定期的な運動は、心のリラックスにも効果的です。
ジムに通ったり、スポーツを楽しんだりする時間がない人は、毎日の通勤に徒歩を20~30分取り入れる、あるいはランチタイムにあえて少し遠いレストランやカフェまで徒歩で行くなど、日常生活でできる範囲でエクササイズを取り入れましょう。
(6) サポート体制を築く
周囲からのサポートも、リラックスした環境を築くカギを握っています。ストレスや悩みをすべて自分ひとりで抱えこむのではなく、職場や家庭、信頼できる友人に相談し話を聞いてもらうだけで、心がずいぶん楽になるものです。身近な人に打ち明けにくいのであれば、セラピストに相談したり、同じようなストレスに悩む人たちのグループに参加したりするのも一案です。
「ストレスについて人と話すのが苦手」という人は、弱さを見せることを恐れている場合が多いようです。だからといって自分ひとりでは抱えきれないほどのストレスを無視していると、後で大きなツケが回ってきてしまいます。
周囲の理解とサポートを受けることによって、ストレスを感じにくい職場や家庭環境を作りやすくなるでしょう。
(7) 「瞑想」は究極のストレス解消法?
ストレス解消法として真っ先に挙げられることの多い「瞑想」。瞑想を習慣にしている著名人もたくさんいます。
「瞑想」と一言にいってもいろんな種類がありますが、ストレス解消目的で人気があるのは、「マインドフルネス瞑想」でしょう。これはGoogleやIntelといった国際企業も取り入れている瞑想法で、集中力を高めると同時に精神をリラックスさせ、睡眠の質や仕事のパフォーマンス向上に役立つとされています。
自分に合う瞑想法には人によって違うので、「自分の時間」にいろいろと試してみると良いでしょう。(アレン琴子、英国在住のフリーライター / d.folio)