「思想のポジション」で世界の枠組みを捉える

世界史は国々の関係性が複雑すぎてよくわからないという人も多いはず。歴史における各国のポジションや利害関係を広い視野で理解するにはどうすればいいでしょう。そこで参考にしていただきたいのが、下の図です。近年の世界的指導者が掲げる思想やその支持層、メディアのスタンスを図上にマッピングしています。

国際情勢
(画像=THE21オンライン)

左上の「資本家寄り・グローバリズム」にあたるのは、ウォール街や多国籍企業など。左下の「労働者寄り・グローバル」は現在の中国共産党です。右上の「資本家寄りのナショナリズム」は保護貿易主義。日本で言うなら農業団体です。右下の「労働者寄りのナショナリズム」は、移民に雇用を奪われたくない人々の移民排斥運動です。

ちなみに、トランプの思想は右上ですが、右下の人々の票を得られる政策を提唱して選挙に勝ちました。対して、彼の敵であるアメリカの主要メディアは左上。スポンサーの多くが多国籍企業だからです。

こうして見ると、どの国の指導者がどのような思想を標榜しているのかが一目瞭然。また、それぞれの立場にあるメディアの立場の違いもわかり、それぞれの偏向ぶりも理解できるでしょう。

日本はTPPのリーダーになるべき!?

以上を踏まえ、今後の世界を予測してみると、アメリカの支配圏は北米に留まり、西ヨーロッパではドイツ、ユーラシアではロシアが覇権を握るようになるでしょう。南米はブラジルの混乱で先行き不透明です。

一番不安定なのは中東です。シーア派のイランとスンニ派のサウジアラビアが、ペルシャ湾の油田を挟んで緊張状態にあります。両国が核開発に本腰を入れれば、局地紛争の危険があります。一方、東アジアの掌握を目指すのは中国。南アジアや東南アジアに着々と手を伸ばしています。

では、日本の立ち位置はどうなるのか。ここで鍵を握るのが日本です。ポイントはTPP。アメリカの離脱後、日本がこの機構の主導権を握りました。少々過激かもしれませんが、TPPを軍事協力に発展させ、「アジア版NATO」を作ることも可能です。これにより日本は、アジアで存在感を示すことができます。アメリカの庇護を当てにできないなら、こうした選択も視野に入ってくるでしょう。

このように、近代史を学び直すことで現在の国際情勢を深く理解できます。各国の成り立ちや建国の主要人物の思想まで遡ってポジショニングをしてみれば、世界を捉える軸はより明確になるでしょう。

茂木 誠(もぎ・まこと)駿台予備学校世界史科講師
東京都出身。駿台予備学校やネット配信のN予備校にて世界史の講師として多数の受験生を指導している。受験の参考書のほか、『経済は世界史から学べ!』(ダイヤモンド社)『マンガでわかる地政学』(池田書店)『ニュースの〝なぜ?″は世界史に学べ』(SB新書)『世界史につなげて学べ 超日本史』など著書多数。《取材構成:林加愛》(『THE21オンライン』2018年7月号より)

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