アメリカ一強体制の終焉で世界は大きく変わる
グローバルに活躍するビジネスマンだけでなく、日本にいても外国人ビジネスマンと接する機会が増えてきた。彼らと良好な関係を築くには、各国の情勢や歴史を知らなければならない。とはいえ、何から理解すればいいのだろうか──。そこで、まずは現在の国際情勢を理解するために、ビジネスマンに最低限必要な近現代史を学んでいきたい。大学受験世界史講義・時事問題解説の双方で活躍する茂木誠先生にお話をうかがった。
世界は100年に1度の大転換期を迎えている
「世界史を学び直す」というと、つい雑学系の教養を連想しがちです。しかし、歴史を学ぶ意義は些末な情報を収集することではありません。過去を俯瞰的に把握することで現代を読み解き、そこで得た情報を未来に生かす力を持つことが大切なのです。
今、まさにその力を磨くべきときがやってきました。世界は、100年に1度の歴史の転換期を迎えているのです。
ポイントは、アメリカ一強体制の終焉。アメリカは、第二次大戦以降、莫大な軍事費をかけて「世界の警察」を務めてきました。朝鮮戦争やベトナム戦争などを通じて、「自由と民主主義の拡大」に努めてきたのです。しかし、今ではその立場から退きつつあります。トランプ大統領は、可能な限り国際問題へ関与しない孤立主義を掲げて当選したからです。これは、アメリカの歴史において「モンロー主義」と呼ばれるアメリカ人の「草の根保守」的な考え方なのです。
米国の内向き化により相対的にロシアや中国の存在感が増しています。ただ、力不足のロシアや中国がアメリカに取って代わることはありません。それぞれの地域のボスを目指す「地域覇権」に徹しているのです。
ロシアは、シリアや東欧に影響力を持つことで、悲願である不凍港の獲得を目指し、地中海やバルト海への進出を虎視眈々と狙っています。一方で中国は、南アジアや東南アジアへと進出し、「一帯一路」という経済圏構想を着々と進めています。
アメリカが弱体化し、列強が乱立する世界が再び訪れようとしている。そんな中、日本は今後どう振る舞うべきか選択を迫られています。日本は敗戦後、日本国憲法で自主防衛を制限され、日米安全保障条約で米軍に守られてきたからです。
しかし、同じ敗戦国でも東西分裂を背景に持つドイツは少し違います。敗戦直後は日本同様に再軍備を禁止されたものの、共産主義陣営の東ドイツはワルシャワ条約機構(WTO)、民主主義陣営の西ドイツはNATO(北大西洋条約機構)に参加しています。東西ともに、軍備を増強して自衛力を高めてきたのです。東西統一後、東ドイツの国家人民軍は西ドイツのドイツ連邦軍に吸収合併されました。