11月6日に行われた米中間選挙では与党・共和党が上院で過半数を維持する一方、下院では野党・民主党が8年ぶりに過半数を奪回することが確定した。この結果、来年1月から始まる米議会では4年ぶりに「ねじれ議会」が発生する。ねじれ議会の発生によって与野党で意見が対立する法案が議会を通過する可能性は大きく低下する。ねじれ議会でもインフラ投資など超党派での合意が得られる政策は実現可能だが、合意までに長い時間を要する可能性がある。

また、議会を通じた政策実行が困難になる結果、2020年の大統領選で再選を目指すトランプ大統領は外交・通商政策を中心とする大統領権限による政策を一段と重視することになろう。その場合、中国を中心とする貿易相手国への強硬姿勢が続く可能性に注意が必要だろう。

米中首脳会談は物別れに終わる可能性も

日本株,見通し
(画像=PIXTA)

トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は、11月30日~12月1日にアルゼンチンで開かれるG20首脳会議にあわせて会談する予定だ。トランプ大統領は11月16日に、中国との貿易戦争を巡って「中国は142項目の行動計画を提出してきた」と記者団に述べ、「(米中首脳会談で)取引で合意するかもしれない」と期待感を示した。しかし、「大きな懸案がいくつか残っており、現時点ではまだ受け入れられない」とも述べ、中国側に一段の譲歩を促した。

一方、習近平国家主席とペンス米副大統領は11月17日に開幕したAPEC首脳会議の関連会合で演説し、米中貿易戦争に関して習氏が「いかなる国家も中国がより良い生活を追究することを妨げられない」と主張する一方、ペンス氏は「中国が態度を改めるまで行動を変えない」と強調した。また、11月18日に閉幕したAPEC首脳会議では米国と中国の通商政策を巡る非難合戦が激化し、首脳レベル間の協議でも歩み寄れなかったことから、1993年の第1回会議以来初めてとなる首脳宣言の採択断念に追い込まれた。さらに、USTR(米通商代表部)は11月20日に中国の貿易・投資政策を巡る報告書を発表し、制裁関税発動後も「技術移転など中国の不公正な行動は基本的に変わっていない」と厳しく批判した。米中首脳会談が物別れに終われば、米中貿易戦争が続くとの警戒感から日本株は上値の重い展開が続く可能性があろう。

米ハイテク株は当面冴えない動きが続く可能性が高い

米中間選挙後の11月12日、「iPhone」向けに顔認証用センサーを供給している米ルメンタム・ホールディングスが大口顧客から出荷を大幅に削減するよう要請されたと公表した。同社は顧客の企業名を明かさなかったが、「アップルが減産を要請した」との見方が広がり、同日の米国株はアップル株主導で急落した。また、画像処理半導体大手のエヌビディアが15日に発表した2018年8~10月期決算では売上高が市場予想に届かず、2018年11月~2019年1月期が減収見通しとなったことから、同社の株価も大幅に下落した。さらに、19日の米国市場では米ウォール・ストリート・ジャーナルが、アップルが今秋発表した新型iPhoneの全3モデルの発注を減らしたと報じたことからアップル株が大幅に下落し、主力ハイテク株全般にも売りが広がった。アップルを中心とした米ハイテク株は当面冴えない動きが続く可能性が高い。

目先の東京市場は好業績企業の買いの好機

東京証券取引所と大阪取引所が発表する投資部門別株式売買動向によると、海外投資家の日本株売買差額は年初から11月第2週までの累計で、現物が約4兆2000億円の売り越し、先物が約6兆7000億円の売り越し、現物・先物合計で約10兆9000億円の売り越しとなっている。また、海外投資家の先物売買と連動する東証の裁定買い残金額は10月第4週末時点で1兆614 億円と2016年11月以来、約1年11カ月ぶりの低水準となった。過去20年で裁定買い残が1兆円を明確に割り込んだのはアジア通貨危機、ITバブル崩壊、リーマン・ショック、東日本大震災、Brexitなどの局面に限られ、いずれも株価底入れのタイミングとなった。今回も裁定買い残金額の水準から見ると海外投資家の先物ポジションは歴史的な低水準まで減少した可能性があり、買い戻しの余地は非常に大きいと考えられる。

一方、日本経済新聞社の集計によると、11月15日までに出そろった上場企業1585社(金融を除く)の4〜9月期決算の経常利益は12.2%増と4〜6月期の16.5%増から減速したが、2019年3月通期予想の経常利益は6.2%増と4〜6月期の決算発表終了時点の予想2.1%増から小幅ながら上方修正された。また、11月9日までに下期の想定為替レートを公表した131 社を集計したところ、平均値は1 ドル=108.6 円だったことから、輸出企業を中心に下期の業績には上振れ余地があるといえる。海外投資家の買い戻しを想定する場合、目先の東京市場は好業績企業の買いの好機とも考えられる。

野間口毅(のまぐち・つよし)
1988年東京大学大学院工学系研究科修了後、大和証券に入社。アナリスト業務を5年間経験した後、株式ストラテジストに転向。大和総研などを経て現在は大和証券投資情報部に所属。日本証券アナリスト協会検定会員。米国CFA協会認定証券アナリスト。