株価急上昇すると誰もが利益確定したくなる

トウシル
(画像=トウシル)

大きく相場が上昇すると、その後には大きく下落するような乱高下もあり、利益確定の動きも出てきます。上昇と値上がりが顕著なほど利益確定したくなるのは心情です。

そこで今回、投資初心者、投資経験が浅い人に「売り方」について伝授します。「投資を続ける普通の個人の売り方」、特に「積み立て投資をしている人の売り方」を考えてみます。

あなたは「売る」とき、次の「買う」を考えている?

あなたがもし、完全なる余剰資金をもって投資をしているのであれば、満足感を感じるくらいの上昇があればいつでも売り、現金を手に何か遊興費に使えばいいでしょう。しかし、そういう資産運用をしている人はほとんどいないと思います。

もし、あなたの投資のゴールが半年後や1年後ではなく、もっと先にあるとすれば、投資を続けていくことを考えなければなりません。「売る」というのは次の「買う」を考えることとセットになるわけです。

一度動き出していた投資をいったんストップすると、「いつ買い直すか(しばらく値下がりを待つならいつまで待つのか)」、「買い直すときは何を買うことにするのか(同じ商品や銘柄か違うものにするか)」、など考え始めることになります。一歩踏み出しにくいのが「売ったあとに買う」という投資行動。

投資初心者ほど、「売る」はできても「売ったあとに買う」に悩むことになります。

全額売る、だけが選択肢ではなく、投資信託やETFなら部分的な売却ができる

ところで、投資初心者の多くが抱いている勘違いに「売るときは全額売る」というものがあります。電話口に向かって「全額売りだー!」と怒鳴っているイメージを持っている人がいるようですが、これはほとんど誤解です。

個別銘柄を単位株しか保有していない場合は確かに「すべて売る」しか選択できませんが、投資信託やETFであれば口数に応じて「部分的に売る」ができるからです。

実はこの「部分的に売る」が個人投資家が投資を継続しつつ、利益確定もやってみたいと思うときには有効な選択肢になります。部分的に売るということは、残りの資産については投資を継続することになるからです。

「全額売り」は投資のリスタートを難しくするだけでなく、その後の上昇も続いたときに動きにくくなります。たとえば、保有株やETFを全額売ってしまった人は、売ったあとにも価格上昇が続いてしまうとおそらくもう一度買うわけにはいかないでしょう。「せめて一度は、前の売値を下回ったら買おう」と思っていると、そのまま上昇相場が続いて、リスタートできなくなります。下手にすべてを売ったことでさらなる収益機会を逸することになってしまうわけです。

部分的に売ることで、残りの資産についてはさらなる上昇機会を待つこともできます。また部分的に売ったあとで下落に転じたとしても「この部分は利益確定をできた」という納得感も得られます。

「部分的に売る」やり方

部分的に売る、は投資テクニック的にいえばリバランスと呼ばれます。機関投資家では株式や債券等のアセットクラスごとに保有比率の目標を設定し、その乖離(かいり)を調整することで運用益を確保し、また安値水準にある資産の購入を行います。国の年金運用機関であるGPIFも基本的にはこの手法を実践しています。

個人投資家においては資産クラスごとの保有比率をシミュレーションすることはなかなか難しいので、「現預金:リスク資産」の比率に着目してリバランスを考えるといいでしょう。

この上昇相場前、あなたが投資をスタートしたころに想定していた「現預金:リスク資産」の保有割合の想定と現状がどれくらいズレたかを検証してみてください。

たとえば、1年前の投資割合が「現預金150万円:リスク資産100万円」であったとすれば、「3:2」の投資割合を想定していたということです。あなたはおそらく、「50%も投資するのはちょっと…」と考えてこの決断(投資割合は資産全体の40%)をしていたのではないでしょうか。

それが今、「現預金150万円:リスク資産120万円(市場が20%上昇した)」になっていたとします。投資資金の含み益には大喜びでしょうが、リスク資産の保有割合は44.4%に上昇しています。

そこで「部分的に売る」を実行します。このケースだと12万円分だけ利益確定し「現預金162万円:リスク資産108万円」に調整すれば投資割合は40%に戻り、投資も継続しつつ利益確定も実現することになるわけです。

上昇相場に直面すると、とにかくたくさん利益確定したくなります。この例なら上昇分に相当する20万円分を手放したくなるかもしれません。しかしあえてそうしないことが「部分的に売る」のコツなのです。

iDeCoやNISAでまだ投資を続けるなら、何もしなくてもよい

さて、ここまでの文章を読み進めてきた人がもし「売らない、というのもOKではないのか」と気がついたならそれもよい発見です。

NISA口座で保有している資産の場合、売却すると運用益が非課税になるものの、NISA口座からは出金された格好になり、その後の価格上昇があろうと非課税投資のチャンスを逃すことになります。また、改めてNISAで再投資をしたいと思っても、今年分のNISA口座の投資枠の残りを利用することになり、貴重な投資枠を消費してしまうことになります。NISA口座はあまり頻繁な回転売買には向いていないことを考えたいところです。

また、iDeCo(個人型確定拠出年金)の場合は、60歳までそもそも引き出しはできませんので、iDeCo口座の中にお金はとどまります。iDeCoには定期預金があるので「部分的に売る」をしてもいいのですが、将来に株価が下がったときには「部分的に買い直す」を行わなければ、何もせず売らないままでいたほうがいいことになってしまいます。

あなたの投資のゴールがいつになるかはわかりませんが、数年後あるいは数十年後にあなたが資産を手放すとき、日経平均株価で今より上をイメージできるなら、今売らないことでも十分に利益は得られます。

株価が急上昇しているときだからこそ、投資においては「売らない」という選択肢もある、ということは覚えておくといいでしょう。

「部分的に売る」と「あえて売らない」を上手に使いこなせるようになると、長期投資家としての第一歩です。ぜひ「全額売り」以外の選択肢もあなたの投資方針に組み入れてみてください。

山崎 俊輔(やまさき しゅんすけ)
フィナンシャル・ウィズダム代表 ファイナンシャルプランナー
1972年生まれ。中央大学法律学部法律学科卒業。企業年金研究所、FP総研を経て独立。企業年金連合会調査役として確定拠出年金の調査、制度改善要望等を担当。老後の年金や退職金制度も考慮したトータルな資産運用プランを提案。1級DCプランナー、消費生活アドバイザー。

(提供=トウシル

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