世の中には主に節税を目的として利用される金融商品や契約がある。リース、不動産などを活用したものが多く、節税商品と呼ばれることもある。このような商品は本当に節税に役立つのだろうか。今回は主な節税商品の概要と仕組みについて解説する。
かつて流行したリース商品は今も健在
まずはオペレーティングリースと呼ばれる商品を紹介しよう。日本型オペレーティングリースやJOLとも呼ばれるこの商品は、匿名組合という仕組みを通じて航空機、船舶、コンテナなどを保有するものである。
匿名組合というのは、営業者が主体となって投資家などから資金を集め、その資金を運用して、再び投資家などに還元する商法上の契約だ。具体的には、リース会社が設立したSPC(特別目的会社)が営業者となって、投資家からの出資と銀行からの融資により航空機などを購入し、投資の成果を投資家に配分する仕組みとなっている。
例えば、購入対象が航空機の場合には、これを航空会社などに貸し出してリース料を受け取ることになる。そのための費用として、航空機に対する減価償却費やメンテンス費用などが発生する。また、リース期間の終了時にはその航空機を売却する。
こうした「収益」や「費用」は本来SPCに帰属するものだ。しかし、匿名組合から投資家に損益が分配されると、法人税法上は投資家の益金や損金として処理されることになる。これが一つのキーポイントになっている。
この仕組みを利用すると、リース期間の前半は多額の減価償却費が計上され、損益はマイナスとなるのが一般的だ。これを投資家の決算に取り込むことができるので、本業で所得が発生していても法人税を低く抑えることが可能となるのだ。
かつては投資した額以上の損金を決算に取り込むことのできるリース商品が流行したこともある。現在では計上することのできる損金は投資額までに制限されているが、節税商品としては健在である。
管理の手間を省いて節税できる不動産小口化商品
不動産小口化商品とは、都心のオフィスビルなど多額の取得資金が必要となる不動産に少額から投資できるようにした商品だ。不動産小口化商品には組合を利用したもの、信託を利用したものなどいくつかのタイプがあるが、いずれも証券化され、100万円や1,000万円という小口投資に適したものとなっている。
不動産小口化商品の税務上の特徴に、不動産を直接保有しているのと同様の効果が得られることが挙げられる。相続税で例えると、相続税法上の不動産の評価方法がそのまま適用されるということだ。一般的に、不動産の相続税評価額は実勢価格より2~3割低くなると言われることが多い。そこで不動産小口化商品を購入すれば、その分、資産を現金などで保有しているよりも税負担が軽減される可能性が高くなる。
また、賃貸不動産であれば、建物は「貸家」、宅地は「貸家建付地」として評価されるため、相続税評価額はさらに低くなる。小規模宅地等の特例の「貸付事業用宅地」に該当すれば、土地面積200平米まで50%の評価減となる可能性もある。
加えて、不動産を直接保有すれば管理業務が必要となるが、不動産小口化商品ではそのような煩雑さもない。つまり、税務上のメリットだけを享受できる節税商品だと言える。
自分に適した節税商品を探すことが大切
起業して順調に利益が出始めると節税商品に興味を持つこともあるだろう。節税商品にはリースや不動産だけでなく、生命保険などを活用したものもある。節税商品を選定する際には、どの商品が自分に適しているのか十分に検討することが大切だ。
個人事業と法人とでは、対象となる税金も、利用できる節税商品も異なる。また、契約期間の前半では所得が抑えられるものの、後半では所得を増加させるタイプの商品も多い。そのため、どの時期にどの税金を抑えたら有利になるのか、しっかりとタックスプランニングを行うことが節税商品を上手く活用するコツと言える。