最近、アメリカや中国の車の自動運転の開発競争が激しさを増しています。一方で、ヨーロッパの高級自動車メーカーや日本企業でも自動運転の導入を本格化し始めました。この流れによって、次の自動運転の世界はどのように再構築されていくのかを読み解きます。

ベンツ、ポルシェ、BMWの自動運転開発から見えるもの

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(写真=PIXTA)

今、世界中で起きているIT企業と既存自動車メーカーの開発競争。この流れに乗ろうと、ヨーロッパの高級自動車メーカーも本格的に技術開発に乗り出しています。一般自動車メーカーとの相違点は、自動運転技術を取り入れつつも、高級車ならではの「独自の世界観」を追究する姿勢です。では、代表的な高級車メーカー3社の具体的な取り組みを確認していきましょう。

メルセデス・ベンツ

安全性で高い評価を受けてきた歴史を持つメルセデス・ベンツだけに、「安心して運転するため」の自動運転にこだわっています。例えば、Sクラスセダンでは、前を走る車との適正な距離を保ちながら、車線のカーブの操作などをサポートする技術が搭載されています。これにより、ドライバーは従来の運転時はもちろん、高速や渋滞の時でも負荷が軽減されます。幅広いクラスで同様の技術を採用し、「ベンツの自動運転基準」を模索・構築しています。

ポルシェ

ポルシェの自動運転に対するスタンスは明確です。自動運転の技術によってどのような快適性を実現するか以前に、「顧客が自由に機能を選択していくこと」を重視しています。画一的な自動運転の提供ではなく、例えば、走る喜びを追究するドライバーの多い911には自動運転は「あまり意味がないかもしれない」、快適性も重視する顧客が多いパナメーラーやカイエンでは「うれしい機能だろう」とした上で、それぞれのドライバーがポルシェの複数の提案の中から自由な選択ができる世界観を描こうとしています。

BMW

BMWは自動運転技術を実用化し、その技術を搭載した電気自動車「BMW iNext(アイネクスト)」の2021年の市販車投入を目指しています。この車の自動運転技術では、危険が迫った時に緊急停止する「レベル3」を予定。同社の取締役クラウス・フレーリッヒ氏が自動運転と配車サービスを組み合わせた「高級志向のライドシェア(相乗り)」に興味を示していることも話題になっています。

こうして高級自動車メーカーの動向を見ていると、自動運転開発でリードしているとまでは言えない一方、独自の世界観の追究にこだわっているスタンスが鮮明です。高級自動車メーカーは、その長い歴史の中で、独自性の高いフォルムやエンジンを実現したように、唯一無二の自動運転をつくりあげようとしています。

日本企業の自動運転開発から見えるもの

まず、グローバルでは、アメリカが自動運転をリードしてきました。しかし、中国では、都市を丸ごと自動運転仕様にする計画が進められ、自動運転の覇権を狙っています。いずれもその中心はIT企業です。

次に、日本の動向も見てみましょう。日本の自動運転の開発は、前述の高級自動車メーカーと似た部分があります。高級自動車メーカーや日本企業は後追いの印象でしたが、最近では一気に自動運転の技術開発を本格化させています。

日本の自動運転開発で大きな話題を投げかけたのが、2018年10月上旬発表のトヨタ自動車とソフトバンクグループの協業です。両社が共同で設立した「MONET Technologies(モネ テクノロジーズ)」は、自動運転の配車サービスなどを展開する予定です。その先には、交通弱者の増加などの社会的課題の解決という目的があります。具体的事業として、家の前まで商品を届けてくれる「移動コンビニ」や診察前検診を受けながら病院に送迎してくれる「病院シャトル」などを考えているようです。

こういった動きは、超高齢化社会という課題を新しいビジネスモデルに転換する有意義な試みといえます。

自動運転は実用化・成長期に向かって進化している

自動運転の技術が語られる時、「アメリカや中国が覇権をとる」という見方が有力かと思われます。しかし、こうやって高級自動車メーカーや日本企業の動きを細かく追うと、自動運転の世界に多様な価値観が生まれはじめていることが分かります。

そのため今後は、グローバル企業の最先端の自動運転開発の動向をウオッチするだけでなく、独自の世界観をつくったり、社会問題を解決するサービスに昇華したりする動きも見逃せません。自動運転は、より進化した形での実用化〜成長期に向かっています。(提供:Wealth Lounge


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