信用取引について、少しでも株に興味があれば「言葉自体は耳にしたことがある」という方が大半ではないでしょうか。実際に、ネット証券の普及に伴ってかなり身近なものになりましたし、信用取引の仕組みや魅力をやさしく解説している書籍やWEBサイトなども数多く存在しています。

信用取引,トウシル
(画像=トウシル)

「信用取引とは、資金や株式を借りて元手以上の売買を行う取引」のことです――。

大半の信用取引の解説はココから始まります。そして、元手資金の約3倍の取引ができる、売り建てを使えば相場の下落局面でも利益が狙える、同じ銘柄を一日に何度も売買できるので資金効率が良いといった魅力を伝えつつ、追証や具体的なコストなど、信用取引独自の取引ルール、リスクについて説明して行きます。最後は「信用取引はリスクもあるけど、きちんとそのリスクを理解してコントロールすれば大丈夫」的な結論で締めくくるのが一般的な流れです。

確かにその通りなのですが、それでも依然として「信用取引はイヤダ」という方は多いようです。恐らく、「信用取引を活用するメリット」よりも「信用取引を行うリスク」の方が大きく感じられ、バランスが取れていないものと思われます。別の機会でも詳しく説明しますが、信用取引で株を買うと、金利というコストが日々発生しますし、レバレッジをかけている分、株価が下がると損失も大きくなるわけですし、制度信用取引では6カ月間という期限も決められているわけですから、「敢えて信用取引を利用しなくても…」ということなのかもしれません。

株式投資では「何を取引するか?」「いつ取引するか?」の2つが重要です。

「何を取引するか?」を重要視している例として、著名投資家のウォーレン・バフェット氏が挙げられます。会社の価値を徹底的に分析し、株価と比べて割安であれば買いを仕込んで、ひたすら株価が上昇するのを待つという投資スタイルです。

ただし、このスタイルは株価が上昇するまで中長期で保有する可能性があり、コスト面や時間的制約のある信用取引にはあまり向いているとは言えません。むしろ、トレンドを捉えたり、デイトレードのような「いつ取引するか?」に重点を置く、短期の投資スタイルの方が向いていると考えられます。

もっとも「保有している銘柄の株価が一時的に下がりそうだから、信用取引の売り建てを行って損失をカバーしよう」といった具合に、中長期の投資スタイルでも信用取引を上手く利用することで得られるメリットもあります。

仕組みやルールはもちろん、それと同時に投資スタイルに合わせた活用法を理解し、「メリット」と「リスク」のバランスをとることが、信用取引をマスターする上でのポイントになります。

土信田 雅之(どしだ まさゆき)
楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト
1974年生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒業。国内証券会社にて企画や商品開発に携わり、マーケットアナリストに。2011年より現職。中国留学経験があり、アジアや新興国の最新事情にも精通している。

(提供=トウシル

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