栄養の基本を知ればもう俗説には騙されない!

栄養の基本
(画像=THE21オンライン)

「視力回復にはブルーベリー」「抜け毛予防には海藻が一番」──。症状や不調を改善するために良いとされている、その食材は本当に正しいのか。もっと効果的なものがあるのではないか。栄養に対する正しい知識が、食の選択を変える。そう指摘するのは、料理研究家であり管理栄養士として、健康的な献立を提案する牧野直子氏。現代人の栄養事情、働き盛りが知っておきたい栄養の基礎知識、タイプ別の症状や不調に効く食べ物についてうかがった。

腸内のお掃除屋さん食物繊維は侮れない!

管理栄養士の立場から、これまで様々な方の食生活をチェックしてきました。その中で、30~40代のビジネスパーソンに共通して言えるのは、とにかく食物繊維が足りないということです。

とくに、男性は要注意。朝食はコーヒーだけ、昼食は天ぷらソバ、夜はビールを飲みながら鶏の唐揚げや刺身などという食事では、圧倒的に食物繊維が不足しています。

食物繊維には「腸内環境を整える」「血糖値の上昇を抑える」という、私達の健康を保つために欠かせない2つの働きが備わっています。食物繊維が不足すると、腸内にゴミや悪玉菌が溜まり、発酵して毒素が充満してしまうので、肌荒れや慢性疲労の原因となるだけでなく、がんや生活習慣病のリスクも高まります。

それを防ぐには、腸内のゴミや悪玉菌を包んで体外に排出してくれる食物繊維の存在が欠かせないのです。

また、栄養が腸内で食物繊維に包まれると、吸収速度が遅くなり、血糖値の急激な上昇を抑えてくれるので、肥満防止にもつながります。コレステロールなどの余分な脂質を吸着して排出する役割も見逃せません。これだけ大切な役割を担う食物繊維が不足すれば、様々な不調を引き起こすのも当然でしょう。

では、実際にどれくらいの量の食物繊維をとれば良いのか。

目安は1日350g以上、加えて、きのこや海藻類、豆類など約20gです。野菜のおひたしが入っている小鉢を1日5皿と考えるとわかりやすいでしょう。

小鉢の中身は野菜サラダでも、キュウリの酢の物でも構いません。こんぶやわかめ、コンニャクなどに含まれる「水溶性食物繊維」か、大豆やゴボウなどに含まれる「不溶性食物繊維」を欠かさずとるよう意識しましょう。

1つの栄養素だけでは効果はあまり期待できない

食物繊維が不足している半面、働き盛りのビジネスマンがとり過ぎなのは糖質(炭水化物)と脂質。昼食はラーメン&ライスで夜は肉中心の食事が習慣になっていませんか。

もっとも、糖質は脳の唯一のエネルギー源なので、とってはいけないわけではありません。さらに、1g9キロカロリーの熱量がある脂質も、パワフルに身体を動かすうえでは欠かせません。この2つと、筋肉や血液の元となるタンパク質を加えた三大栄養素は、身体の土台を作るために、どれも必要不可欠なのです。

ただ、とり過ぎは禁物です。とり過ぎた糖質や脂質は脂肪として体内に貯蔵され、体内に貯蔵できないタンパク質は尿として体外に排出されます。そのせいで肝臓に負担がかかり、疲労や免疫低下につながります。

また、糖質、脂質、タンパク質の三大栄養素を体内でエネルギーに変換するためには、ビタミンとミネラルが欠かせません。糖質をエネルギーに変えるにはビタミンB1が必要ですし、脂質をエネルギーに変えるにはビタミンB6が必要。鉄や亜鉛などのミネラルも調整役として不可欠です。

いくらタンパク質をとっても、鉄をとらないと赤血球ができないので貧血になりますし、骨を丈夫にしようとカルシウムをたくさんとっても、同時にマグネシウムもとらないとカルシウムは吸収されにくい。

つまり、三大栄養素が車を動かすガソリンだとしたら、ビタミンとミネラルはオイルの役割を担っているのです。どちらが欠けても車は動きませんし、動いてもすぐ故障してしまいます。

だからこそ、一つの栄養素に偏らず、様々な栄養素をバランス良くとる食事が大切なのです。

ただ、あまり複雑に考える必要はありません。毎食、おにぎり1~2個ぶんの主食(糖質)と、タンパク質がメインの主菜、食物繊維が豊富な副菜をとれば、サプリメントや栄養ドリンクに頼らなくても、病気や疲労に負けない身体を保てるのです。

また、ちょっとでも栄養に対する知識があれば、目的によって適切な食事を選ぶことができます。健康を維持したいのか、個別の症状や不調を改善したいのかによって、そのとき何を食べるべきか、自分で判断できるのです。そのヒントとなる考え方を上でご紹介したので、参考にしてください。