富裕層を呼び込むための様々な施策を推進中
大阪の観光業を基幹産業へと成長させ、関西経済の起爆剤とするためには、外国人観光客の数だけでなく、1人当たりの支出額を増やすことも重要だ。大阪を訪れた外国人の1人1日当たり平均支出額は2万5,574円と、すでに全国平均の1万6,914円よりも多いが、さらに増やすための施策を進めている。そこでもやはり、重視しているのはデータだ。
「支出額の内訳を見ると、飲食費は15%、娯楽・サービスは7%と、割合が低い。これを増やすために注目したのが、ナイトタイムエコノミー、つまり夜の時間帯の消費です。
というのは、GPSを使って、道頓堀エリアなどの繁華街での外国人観光客の動きを時間帯ごとに調べると、22時以降は滞在する人が急減することがわかったからです。ホテルに帰ってしまうのです。
そこで、道頓堀エリアの店舗を中心に、21~24時に飲食店やエステ店、クラブなどで使えるクーポンを発行する『Osaka Night Out』という実証実験を、今年2月28日~8月31日に行なっているところです(取材時)」
外国人観光客の支出を増やしてもらうための施策は、他にもある。
「今は、中間層の方に多く来ていただいているのですが、富裕層にも多く来ていただきたい。
僕は大阪府・大阪市IR推進会議の座長も務めているのですが、カジノを含めたIR(統合型リゾート)を招致しているのも、富裕層を増やすためです。
飲食にしても、『安くて美味い』が大阪の良いところではあるのですが、高級店も充実させていきたいと考えています。
また、国際展示会や国際会議を多く誘致することで、それらに参加する支出額の多い方々に来ていただく活動もしています。
周辺自治体との連携もしています。なんらかのテーマやストーリーに基づいて、関西を周遊していただくことで、滞在日数を長くしていただくのです。
支出の半分を占めるショッピングについても、現状では、金額で言うと化粧品や医療品・健康グッズ、電気製品が多いのですが、堺の包丁など、ブランディングすれば売れる地元の名産品はまだまだあります」
大阪では、これからも大規模なスポーツイベントやインフラ整備が予定されている。これらも、さらなる外国人観光客を呼び込む契機となり得る。
「来年は日本で初めてのG20サミットが大阪で開催されますし、花園ラグビー場でラグビーワールドカップの試合も行なわれます。25年の万博は誘致活動を進めているところです。
鉄道も、JR桜島線、京阪電鉄中之島線、大阪メトロ中央線の延伸が計画されていますし、31年には大阪の中心部と関空を結ぶなにわ筋線が開業する予定です。リニア新幹線も開業予定ですから、大阪へのアクセスはますます良くなります。
関空と伊丹空港、神戸空港の機能について見直す協議会も近く開催される予定で、より効率的に運用されるようになります。
成長著しいアジアのダイナミズムを取り込んで、かつて『大大阪』と言われた時代の繁栄を、再び取り戻したい。そのために、スティーブ・ジョブズではありませんが、『stay hungry』の精神で、チャレンジを続けていきます」