飽きっぽい人のためのキャリア戦略
今、世界で580万回以上再生され、注目を集めているTEDトークがある。タイトルは「天職が見つからない人がいるのはどうしてでしょう?」――やりたいことがたくさんありすぎて天職がなかなか見つからないと悩む人に向けて、「マルチ・ポテンシャライト」という新しい生き方を提案する内容だ。今回、そんなTEDトークの内容をもとに執筆された『マルチ・ポテンシャライト好きなことを次々と仕事にして、一生食っていく方法』の翻訳者である長澤あかね氏に「マルチ・ポテンシャライトが、なぜ今こんなにも注目されているのか?」その理由について伺った。
「天職は一つだけ」という誤解
あなたは「マルチ・ポテンシャライト」という言葉をご存知だろうか?マルチ(多くの)――ポテンシャル(潜在能力を持つ)――アイト(人)。本書の定義によると、「さまざまなことに興味を持ち、多くのことをクリエイティブに探究する人」のことだ。
あなたがもし「飽きっぽい」「興味の対象が多すぎる」「天職が見つからない」と悩んだ経験があるなら、マルチ・ポテンシャライトである可能性が高い。だとしたら、一つの道を究めるスペシャリストを重んじる世の中で、これまで肩身の狭い思いをしてきたかもしれない。でも実は、仲間は大勢いる。
古くは美術、音楽、数学、天文学、建築など多くの分野で才能を発揮したレオナルド・ダ・ヴィンチ、政治家/著述家/物理学者/気象学者として知られたベンジャミン・フランクリン。アップル社の共同設立者のスティーブ・ジョブズも、起業家で発明家で工業デザイナーだった。
国内なら、コメディアン/俳優/ボクサー/画家/ヨギとして知られる片岡鶴太郎さん、イラストレーター/作家/ミュージシャン/俳優/デザイナー/演出家など多彩な顔を持つリリー・フランキーさん、コメディアンで芥川賞作家の又吉直樹さん、サッカー選手で起業家で教育者でもある本田圭佑さんなど、数え上げればきりがない。
ただし、自分の周りを見回しても、複数のキャリアを持つ人は見つけにくいだろう。一般社会ではいまだに「天職は一つ」とされ、多くの人が大人になるまでに一つに絞ってしまうからだ。