(本記事は、野口吉昭氏の著書『人生を変える自分の磨き方 思考・言葉・行動・習慣・人格・運命の法則』かんき出版、2018年9月10日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
言葉に体温と体重をのせる
街頭演説にいちばん人を呼べる政治家は誰か。
それは、自民党の若手ホープ、小泉進次郎代議士だろう。
現役の総理大臣やほかの大臣よりも、老若男女からの支持が高い。元総理である小泉純一郎氏の次男。1981年生まれ。父親の選挙区を継承した。
選挙区での支持率は恐ろしく高い。得票率は80%超。日本の政治家としてはまだまだ若いが、間違いなく自民党の切り札であり、日本の政治家としてのホープでもある。
彼が好きな言葉として掲げているのが、「意志あるところに道はある」である。彼らしい想いが伝わってくる。
ある大学生向けのセミナーで彼は、
「最も伝わるメッセージを発するためには、その言葉に体温と体重をのせよ」
と訴えた。
その際小泉氏は、「アメリカ大統領候補のヒラリー・クリントン氏の敗北宣言の演説は、それまでのヒラリー氏のイメージである“知的であるが、あくまで上層階級の人”というものではなく、ヒラリー氏自身の体温と体重がかかったスピーチだった」と学生たちに説明した。
さらに「もし、その敗北宣言のスピーチのような演説をもっと選挙期間中に行っていれば、結果は違ったのではないか」とも述べている。
小泉進次郎氏の父親、小泉純一郎氏も言葉に体温と体重をのせていた。親譲りなのだろう。
純一郎氏が総理大臣だった2001年夏場所。当時の横綱だった貴乃花は、千秋楽で優勝決定戦まで進んだ。しかし、貴乃花は、半月板損傷という大怪我をしていた。
のちに、“阿修羅の形相”と言われた横綱は、そんな状態で武蔵丸に勝利した。
その日、賜杯を授与した際に小泉総理大臣(当時)が発した言葉は、いまだに名言として残されている。
「痛みに耐えてよく頑張った!感動した!おめでとう!」
拙著『3つの魔法』(幻冬舎)にも書かせていただいたが、この名言は、わかりやすいケースの典型として引用させてもらった。
小泉純一郎氏は、論点を絞り込み、シンプルでわかりやすい言葉を使い、人々の心をつかみとる技に長けた政治家だった。その父親にしてこの息子という感じだ。
しかも、その息子には父親にはない「人々に寄り添う政治家」という新しい意味合いを感じるので、さらに多くの国民を魅了しはじめている。
東日本大震災の被災地に、何度も何度も足を運び、真に被災地に寄り添ってきた政治家の一人でもある。しかも、現状への問題意識を持った「変革を起こすイノベーター」でもある。
小泉進次郎氏は、「言葉に体温と体重をのせる演説」という政治家としての武器を携えて、いずれ日本のリーダーになることだろう。
リーダーは言葉が命
世界を代表するリーダーの多くは、時代を超えた名言を残している。
あなたは、誰の、どんな名言を思い出すだろう。
「人民の人民による人民のための政治(エイブラハム・リンカーン)」
「国があなたのためにしてくれることを問うのではなく、あなたが国のために何ができるかを問うてほしい(ジョン・F・ケネディ)」
「あなたがたは、進歩し続けなければ退歩することになるのです。高い目的を掲げなさい(フローレンス・ナイチンゲール)」
「もし今日が、人生最後の日だったら、今日やろうとしていることは、本当にやりたいことなのだろうか?(スティーブ・ジョブズ)」
「何の志も無きところに、ぐずぐずして日を送るは、実に大馬鹿者なり(坂本龍馬)」
「商売とは、感動を与えることである(松下幸之助)」
「成功は99%の失敗に支えられた1%だ(本田宗一郎)」
「鍬を持って耕しながら、夢を見る人になろう(井深大)」
歴史的なリーダーも、身近にいるまわりの人を牽引しているリーダーたちも、例外なく言葉を大切にしている。
リーダーにとって、言葉こそ最も重要な経営の武器であり、人を惹きつけるメディアである。言葉を大切にしないリーダーは、真のリーダーとは言えない。
また、やたら失言をしたり、人の心を傷つけたことを自分で理解できない人も、リーダーとは言えない。
リーダーとは、自分軸よりも圧倒的な相手軸で物事を判断して、決断している人間である。
思考が素晴らしいけれど、それを言葉にすることが得意ではないリーダーもいるだろう。しかし、それではリーダーとして未熟である。
演説がうまい、スピーチがうまい、プレゼンテーションがうまいということよりは、そのリーダーが語るミッション(理念)とビジョン(目標)が明確であり、コンセプト(戦略)が鮮明でわかりやすいことが何よりも重要である。
もし、あなたがリーダーの立場であるならば、自分の名言集をつくることをおすすめしたい。人の言葉でもかまわない。それが自分のものになっているのなら、もう自分の名言の一つなのだ。
リーダーは、言葉が命なのだから。