2018年12月のソフトバンク上場を機に、IPO投資に興味を持った人もいるのではないだろうか。IPOとはどんな投資なのか、どうしたら当選できるのかなど、IPOに関する疑問や実態を解説すると同時にIPO主幹事ランキングについても紹介する。
IPOで株式公開する意味とは?
IPOとは、Initial Public Offering=株式公開の略称であり、未公開会社が株式市場に株式を上場させ、自由な株式売買を可能にする公開会社になることだ。
未公開会社はオーナーや少数の株主が株式の大半を保有しているが、IPOでは新株を発行して資金調達を行う「公募増資」と、オーナーなどが保有する株式を売却する「売出し」が行われる。
未公開会社は、株式公開をすることにより資金調達方法が多様になり、会社の知名度が上がる、求人しやすくなるといったメリットがある。一方、IPOで公募・売出しされる株式は上場後高騰することもあるため、新規上場株式は投資家からの人気が高い。
主幹事証券の役割は絶大
IPOの際に株式の販売・引受を行なう幹事会社のうち、中心となってIPO全体の運営やスケジュール管理、公開価格の決定などを行うのが「主幹事証券会社」である。主幹事証券会社は、上場申請前には企業の社内体制整備・資本政策策定のアドバイス、事務手続きのサポートや引受審査を行う。そして、IPOでは多くの株式を引受けて販売する。さらに、上場後は資金調達などで助言・指導する重要な役割も担っている。
ネット証券のIPO主幹事ランキングトップ4 野村證券がNo.1、SBI証券も上位台頭
後述するが、IPOはさまざまな抽選方法で購入者を決める。当選確率をアップさせる多くの方法があるが、当選確率アップの条件となる主幹事案件を多く保有している証券会社を選ぶというのもその一つだ。
主要証券会社においてその条件に当てはまるのはどこなのか?トムソン・ロイター『日本株式資本市場レビュー マネジングアンダーライター』で、2018年第4四半期(2018年1月1日~12月31日)の新規公開主幹事会社トップ10を確認しておきたい。
順位 | 証券会社名 | 取引金額 (単位:百万円) |
占有率 (%) |
案件数 | 占有率(%) |
1 | 野村證券 | 576,936.0 | 17.8 | 25 | 25.8 |
2 | SMBC日興証券 | 551,210.2 | 17.0 | 27 | 27.8 |
3 | みずほ証券 | 516,815.4 | 15.9 | 27 | 27.8 |
4 | 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 | 495,439.7 | 15.3 | 7 | 7.2 |
5 | 大和証券 | 485,021.9 | 14.9 | 13 | 13.4 |
6 | SBI証券 | 397,548.1 | 12.3 | 11 | 11.3 |
7 | JPモルガン | 34,028.3 | 1.1 | 2 | 2.1 |
7 | バンクオブアメリカ・メリルリンチ | 34,028.3 | 1.1 | 2 | 2.1 |
9 | UBS | 30,399.3 | 0.9 | 2 | 2.1 |
10 | ドイツ銀行 | 22,050.8 | 0.7 | 1 | 1.0 |
10 | クレディ・スイス | 22,050.8 | 0.7 | 1 | 1.0 |
10 | シティ | 22,050.8 | 0.7 | 1 | 1.0 |
10 | クレディ・アグリコル証券 | 22,050.8 | 0.7 | 1 | 1.0 |
10 | ゴールドマン・サックス | 22,050.8 | 0.7 | 1 | 1.0 |
市場合計 | 3,246,513.1 | 100.0 | 97 |
※上記一覧は、トムソン・ロイター『日本株式資本市場レビュー マネジングアンダーライター』より、執筆者が該当箇所を抽出して作成
40代のビジネスパーソンが実際にIPO投資に利用するのは、ネット証券である場合が多いだろう。具体的には、ネット取引に積極的な総合証券やインターネット専業証券が想定される。こうした観点から見た、ネット証券によるIPO主幹事実績トップ4は次の通りだ。
第1位 野村證券
第2位 SMBC日興証券
第3位 大和証券
第4位 SBI証券
上位3社は、総合証券・ネット証券としての実績と、IPO主幹事実績を兼ね備えた総合証券だ。注目したいのはネット専業の第4位のSBI証券だ。IPO取扱件数だけでなく、主幹事証券としての実績も上げている。今後もIPO当選確率の高いインターネット専業証券の筆頭といえるだろう。
上記4社に証券口座を持っている、または口座開設を検討している人は、主幹事として引受数量が多い銘柄の場合、当選確率が通常より高くなるので、ぜひとも抽選に参加してほしい。
IPO抽選の仕組みと方法を紹介
ではIPOへの抽選方法は実際にはどのように行われるのだろうか?先に説明した通り、IPOの公募・売出しは人気が高いため、各証券会社の個人投資家向けの配分のうち一定割合を抽選枠に設定して当選・購入者を決めている。抽選方法は各社によって異なるが、主に完全平等制・ステージ優遇制・ポイント加算制などの方法のうちいずれか、または複数を組み合わせて行われる。
完全平等制:抽選参加者1名につき1口で行われるシステム抽選
一般的な抽選方法であり、1人の抽選参加者ごとに乱数を付して、その乱数を対象に抽選を行う。参加した人1人につき1口で機械的に抽選を行うため、当選確率は全ての参加者に平等だ。完全平等制とほかの抽選方法を併用する証券会社もある。(野村證券・SMBC日興証券・大和証券・SBI証券・楽天証券・マネックス証券・松井証券・カブドットコム証券)
ステージ優遇制:ステージが上がるにつれて当選確率が上がる優遇型抽選
上級ステージに属する顧客がIPO抽選に参加する場合、ステージに応じて当選確率が高くなるように調整してから抽選を行う方法。システム抽選に落選した優良顧客に対して、再度抽選機会を与える目的がある。(大和証券)
ポイント加算制:充当するポイントに応じて当選確率が上がる優遇型抽選
取引で蓄積されたポイントを抽選機会に充当して、当選確率をアップさせる抽選方法。これによって、システム抽選で落選した優良顧客の当選確率が優遇される。(大和証券)
IPOの抽選に落選すると、IPOチャレンジポイントが1ポイントずつ付与される。次回以降のIPO抽選で貯まったポイントを使うと、IPOチャレンジポイント優先枠での抽選となり、ポイント分だけ当選確率が上がる。(SBI証券)
IPO抽選の当選確率を上げる定石は?
IPO抽選の当選確率を上げるには、引受数量の多い主幹事証券会社に口座を開設してIPO抽選に参加する、抽選口数を増やして当選のチャンスを増やす、各証券会社の抽選システムを十分に理解して日頃から当選確率が優遇されるような対策をとることが重要になる。
主幹事証券会社でIPO抽選に参加する
IPOの公募・売出しでは、主幹事証券会社の引受比率は80%前後を占める。そのため、その他の幹事証券会社で抽選に参加するより、引受数量の多い主幹事証券会社から抽選に参加したほうが、相対的に倍率が低くなり当選確率が格段に高くなる。主幹事案件の多い証券会社をチェックすることは、IPO当選確率を上げるための必要条件と考えるべきだろう。上記の表も参考にしてほしい。
抽選口数を増やして当選のチャンスを増やす
一般的には、1銘柄につき、証券会社1社でIPO抽選に参加できるのは1名義人=1口だ。システム抽選を採用する証券会社では、1社に複数の口座を開設していても、名寄せされて1口として抽選にかけられる。そこで、IPO取扱件数の多い複数の証券会社であらかじめ口座を開設しておいて、同一のIPO銘柄を販売する際には、忘れずに複数の証券会社から抽選に参加することをおすすめしたい。
ポイントなど、当選確率が優遇されるように対策をとる
大和証券のように、ステージ優遇制やポイント加算制の抽選方法も併用している証券会社を利用する場合は、上級ステージとして判定されるための条件やポイント合計ごとの当選チャンス回数を確認しておくとよい。資産評価額が一定金額以上であることや提携銀行口座と連携させていることなど、条件を満たすとステージが上がる。システム抽選で落選しても、各ステージに応じて当選確率が上がる仕組みなので、IPO抽選に当選する確率が確実に高くなるので要チェックだ。
SBI証券のIPOチャレンジポイントは落選のたびに1ポイントずつ付与されるので、IPOの抽選機会がある都度参加して、ポイントを貯めておきたい。当選確率を上げたい銘柄の抽選に参加する際には、累積ポイントの使用を忘れずに指定してほしい。
IPO当選には根気が必要
ネット証券でIPO当選確率をアップさせるには、まずは上述のような主幹事案件の多い証券会社を選ぶことなどが最優先となる。
加えて、主幹事でないため当選確率が低くとも、IPO取扱件数が多い証券会社にも口座を持って抽選機会を増やしたり、落選が続いても諦めずに継続してIPO抽選に参加したりする根気も必要になるだろう。
文・近藤真理(フリーライター)/MONEY TIMES
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