2020年春、JR山手線に40年ぶりに新たな駅が誕生します。品川-田町駅間で、名称はまだ決まっていません。都内ではほかにも、霞が関駅と神谷町駅の間に地下鉄の新駅が同じく2020年に誕生します。
新駅の駅名は「高輪ゲートウェイ」と発表されました。(2018年12月5日)

新駅はその地域の利便性を高めることはもちろん、新たな人の流れを生み出します。東京に限らず全国で新しい駅が計画・建設されており、各地で大きな経済効果が見込まれています。一体どのような経済効果や変化が見込まれるのでしょうか。

新駅により周辺の地価は上昇する可能性

山手線
(画像=PIXTA)

新駅ができると利便性の向上が見込まれるため、周辺の地価は上昇することが予想されます。新駅開発にともない、その一帯で再開発が行われることもあるからです。

山手線新駅の場合は、周辺の約13ヘクタールの土地に高層ビル8棟(3棟がマンション、5棟がオフィスや商業施設の入る複合ビル)を建設する計画があります。再開発地区で働く人の数は10万人規模を見込んでいるそうです。

働く人が増えれば駅周辺にお店が増え、買い物や食事の利便性が向上します。雇用も増え、消費も拡大。この再開発は六本木ヒルズ(11.6ヘクタール)や東京ミッドタウン(10.2ヘクタール)をしのぐ規模で、経済効果は1兆4,000億円とも試算されています。

全国各地でも進む新駅の計画

新駅構想は東京以外の全国各地でも進んでいます。

鹿児島市の磯地区ではJRの新駅が検討されています。磯地区は臨海部で観光名所や施設が多いことから、観光客の利便性向上が期待されています。鹿児島経済同友会は、近くの仙巌園など観光施設での消費が拡大することで、ホテル従業員などの新規雇用者を599人と見込み、、新駅設置による経済効果を57億円と試算しています。

秋田市では、JR奥羽線に泉・外旭川新駅(仮称)を設置する構想があります。予定されている秋田-土崎間は7.1kmあり、東北6県の県庁所在地で最も中心駅との駅間距離が長い区間だそうで、「新駅は周辺住民の悲願」と地元紙は報じています。総事業費は20億5,000万円ですが、市の試算では中心市街地への渋滞緩和、買い物客の増加や周辺の地価下落の抑制などが期待され、開業から50年間の経済効果は48億3,000万円にのぼるといいます。

最近明らかになった計画には、富山市の富山地方鉄道があります。2019年4月に県立大学看護学部が新設される予定で学生の通学需要を見込んだもので、約6,800万円を投じる計画です。通学する学生や地域住民のほか、訪日外国人の利用による経済効果も見込んでいるようです。

これらの例はあくまで計画段階ですが、新駅の設置によって費用を上回る経済効果が期待でき、地方活性化の足掛かりとなる可能性は十分ありそうです。

都市機能維持のためにも新駅が与える影響は大きい

新駅設置となると費用は誰が負担するのか、その負担に見合った効果が得られるのかどうかが大きな課題です。特に地方では都心よりも早く人口減少と高齢化が進んでおり、利用者が少ない路線の中には廃止されるものもあります。

そうした中で新駅を設置することは、コンパクトシティ化を進めたり、都市機能を維持したりする施策といえます。先述した秋田の例でも、新駅の設置は高齢化が一層進むことを見据えて、過度なマイカー依存からの脱却を図るという狙いもあるそうです。

新駅の整備は、都心部と地方、観光地と住宅地ではそれぞれ意味合いが異なります。都心部や観光地など外部から人が流入し集まる地域では、消費の拡大が期待されます。一方で地方の住宅地などでは、“住民や学生の足”としての期待が大きいと考えられます。

いずれにせよ、新駅の設置には巨額の投資が必要です。消費拡大や活性化といった経済的な側面だけでなく、住民など利用者の利便性もあわせて効果やその要否を考える必要がありそうです。(提供=auじぶん銀行)

執筆者:伊藤亮太(ファイナンシャルプランナー)

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