前週末の海外時間では、米中通商協議の延長が決まったことで貿易摩擦解消に向けた動きが前進したのではないかとの思惑が強まり、110.20円台まで下落していたドル円が110円半ばまで回復しました。兼ねてから、トランプ大統領が「もし本当の合意ができると思えば、少し期限を延ばしてもいい」と述べ、3/1までの期限の延長を示唆していましたが、延長が決まったということは、合意への可能性が高まったと判断してよさそうです。
トランプ大統領は、事前の報道通り予算案に署名し、政府一部再閉鎖を免れました。ただ、メキシコ国境の壁建設のため、国家非常事態を宣言したことが民主党の反発を招いており、「憲法および法律上の問題」に関して調査が行われる事が明らかになっています。引き続き対立激化となれば、ドル円の上値111円は明確に遠のいていくでしょう。
独・第4四半期GDPにおいて、辛うじてドイツのリセッションを免れたユーロですが、ここにきてクーレ・ECB専務理事が「ユーロ圏の景気減速は想定より明らかに強く、広い範囲に及んでいる」「新たな貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)についてECB内で再開が議論されている」と述べたことをきっかけにユーロ売りが強まりました。NY時間に米国の経済指標悪化を受け、ユーロドルが1.12ドル半ばから1.13ドルまで買い戻されましたが、協議の結果、TLTROへ舵を切るようであれば、ユーロは再び急落するでしょう。
今後の見通し
本日は、米国がプレジデンツデーでNY市場が休場のため、全体的に動意薄な展開になりそうです。ただ、時間は未明ですが、米商務省が米安全保障に絡んだ自動車輸入に関する調査報告書を提出します。俗に言う、米国通商拡大法232条に基づく調査報告書の発表です。この報告書を受け、トランプ大統領は90日以内に関税発動の是非を判断するため、即効性のあるものではないですが、注目すべき点としては、米国が対日貿易赤字の削減を優先課題としており、自動車関税や対米輸出の数量制限、意図的な通貨安を禁止する「為替条項」の導入が警戒されています。米国家安全保障上の懸念から、日本からの自動車輸入に対し更なる関税を課すべきとの報告書が提出されるようであれば、多少ドル売り円買いが強まりそうです。
ユーロについては、一旦下落後の反発という動きになっていますが、新たな貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)への警戒感に加え、フランス、ドイツ、スペインの政治への先行き不透明感が上値を抑制しそうです。また、依然としてフランスの反マクロン改革の抵抗運動(イエロージャケット)も落ち着く様子が見られません。ここにきて、スペインの解散総選挙が重なったことで、ユーロを積極的に買い進める動きは限定的になったと考えられます。スペイン解散総選挙の投票日は4/28です。テクニカル的にも、1.13ドル半ばからは戻り売り基調が強まりそうです。
ユーロドルロングは1.1340ドルを目標に早期撤退予定
米国の経済指標悪化に助けられた感はありますが、損切りは回避、利食いまでもう少しの水準まできています。クーレ・ECB理事がTLTROの話題を出してきただけに、いつユーロ売りが再開されてもおかしくないので、早々にこのポジションは手仕舞う予定です。1.1250ドルのユーロドルロング、1.1340ドルでの利食いは変わらず、逆指値を1.1280ドルに引き上げ、利食いの逆指値とします。
海外時間からの流れ
豪ドル円がじりじりと上値を拡大しており、79円の水準を回復しています。直近高値79.20円に到達すれば急落前の水準である79.80円付近が見えてきそうです。豪ドル自体の地合いが強くなったわけではないため、それだけリスク選好地合いが強まっていることを示唆しているのだと考えられます。
今日の予定
本日は、主要な経済指標は予定されておりません。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。