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(笑顔がほっこりと優しく、お客にも気さくに話しかけるアモビさん)

日本では和食をはじめ、フレンチやイタリアン、そして中国料理、さらにはタイ料理やスペイン料理など、じつに多種多様な料理が食べられる。我々日本人は当たり前のように食しているが、日本は世界一多国籍な料理が堪能できる国として、諸外国の人々から注目されている。

日本人が経営する多国籍料理の店も多々あるが、忘れてはならないのが、日本に在住し、お店を切り盛りする外国人オーナーやシェフの存在。彼らはなぜ母国を離れ、この日本の地で礎を築くことになったのか? ナイジェリア人でありながらイタリアンレストランを東京・池袋にて開き、人気店へと育てあげた『トマト・トマト・デ・ルーチェ』のオーナーシェフ・アモビさんに話を聞いた。

兄に誘われたことがきっかけで日本に

まず、なぜ日本に移住することになったのかを聞くと……。

「僕にはお兄さんがいて、日本で輸出業の仕事を営んでいたんです。で、彼に誘われて、来日しました。その仕事を一緒にやるようになったのが、きっかけです」

今から遡ること19年前だという。そんな異業種から、どういった経緯で飲食業に就くことになったのか。

「輸出業の仕事は、あまり自分に向いてないと思いながらやっていたんですね。そして、思い返していたら、母国にいた時はよくお母さんの料理を手伝ったりして、好きだったんです。だから、やってみたいなと思って」

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(テーブル席のみの店内だが、客とのコミュニケーションは積極的に行うという)

その後、白金台や表参道などのイタリアンレストランで数年ずつ修行し、このお店を開いたのが、7年前のこと。しかし、なぜイタリアンを選んだのだろう。

「ナイジェリアではイタリアンは一般的ではないんだけど、日本に来て色んなパスタを食べて、こんなに美味しくて手軽に作れる料理っていいなと惹かれたんです。トマトも元々大好きでしたので、トマト料理専門のイタリアンにしようと思いました」

理由はいたってシンプルなようだ。好きなものを追求した結果、ナイジェリア人シェフが日本で腕を振るう、トマト料理専門のイタリアンレストランという唯一無二の存在となり、女性を中心に瞬く間に人気店となった。

特に人気のメニューは「オリジナルカルボナーラ」。濃厚でありつつ、トマトの酸味で爽やかさが口の中に広がる。黒コショウの風味と、女性でも食べやすい形状に切られたブロック状のベーコンの食感も絶妙だ。

各メニューに日本人向けのアレンジをしているのかと聞くと、「もちろん、していますよ。でも、隠し味的なことなので企業秘密です(笑)。ただ、醤油は一切使っていません」とのことだ。

そして、現在はほとんど日本産のトマトを使用している。

「日本のトマトは甘くて美味しい。種類も豊富なので、常時、10種類ほど扱っていますね。産地は熊本や千葉など、色々と。日本は四季があるので、季節に合わせて、その都度、日本全国から状態や鮮度のいいものを選んでいます」

このあたりも日本ならではの飲食店経営の文化だと、アモビさんは語る。

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(人気メニュー「オリジナルカルボナーラ」1,300円)

税金の高さと仕入れの種類の多さは大変

それでは、日本で飲食店を経営するにあたり、難しいと思うこととは、何か?

「大変なのは税金が高いことと、仕入れの種類が多いことかな。税金はともかく、仕入れの種類の多さは、食材にこだわればこだわるほど大変になるのはしょうがないことなのですが……」

確かに、食材にこだわるほど、仕入先は細分化される。また、「掛売り・掛買い」ができるのも日本ならでは。ありがたくもあり、収支の算段が難しいという声がよく上がるのは、日本人以上に諸外国人経営者は実感するところなのであろう。

「でも、大変なことも含めて、日本でお店を経営するのは面白い。この国で料理を学んで素晴らしいと何よリ思ったのは、和食に限らずどんな料理でも盛り付けがしっかりしていて、美しいこと。まず、料理の見た目で喜んでくれるように意識しています。その後、お客さんが口に入れた時の美味しい表情を見るのが最高ですね」とアモビさんはニッコリと笑みを浮かべる。

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(「日本のトマトは甘くて美味しい」とアモビさん)

日本に惹かれる理由とは?

飲食店経営という立場とは別に、日本の魅力について聞いた。

「とにかく、人が優しいんですよね。あと、法律がしっかりしていて、安心に安全に過ごせるところが何よりの魅力。このお店がある栄街通りの他店のみなさんとも、仲がいいですよ。自然もキレイですし、知らない土地もまだまだあるので、行ってみたいです」

では、母国・ナイジェリアに帰国し、お店を開く予定はないのであろうか?

「今のところはないですね。先のことは、まだわかりませんが。もちろん、母国も愛していますよ。でも今は、昔からよく来ていて好きだった“池袋”という街でお店をやっていることが、生き甲斐になっています!」

ナイジェリア人オーナーシェフの感性×イタリアン×日本という舞台=唯一無二の個性。アモビさんが自然と編み出したこの公式は、ますます化学反応を起こしそうだ。

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(画像=池袋駅東口・栄町通りにひっそりと佇む)

『TOMATO TOMATO DE LUCE(トマト・トマト・デ・ルーチェ)』
住所/東京都豊島区東池袋1-13-13 2F
電話番号/03-6914-1411
営業時間/11:30~14:30、17:00~23:00
定休日/日曜
http://tomato-de-luce.com/

執筆者:山崎光尚

(提供:Foodist Media