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(望月清登氏(左)と大本陽介氏(右)、『日和』のスタッフの方々)

2018年6月、渋谷区神泉におでんと自然派ワインを提供する居酒屋『日和(hiyori)』がオープンした。同じ神泉にある自然派ワインとイタリア郷土料理の店『AURELIO(アウレリオ)』の大本陽介氏と、おでん居酒屋『mochi(モッチ)』の望月清登氏がタッグを組んだ店だ。オープンから8か月、週末は予約でいっぱいになるほどの人気となっている。

和食とイタリアン、世代も異なるニ人が手を組んだきっかけ

大本氏は、カフェやイタリアンレストランなどで経験を積み、2016年に『AURELIO』をオープン。一方、望月氏は、大学卒業後から35歳までサラリーマンをしていたという。その後、アルバイト経験があり興味のあった飲食の仕事がしたいと、一念発起。数年間、和食店で修行した後、独立を果たす。イタリアンと和食、そして世代も違うニ人が、新たな店でスタートするようになったきっかけは何だったのだろうか。その理由を大本氏に聞いた。

「僕が店をオープンさせたのは2016年なのですが、望月さんはその3年半くらい前からお店をやってらして。近所のお店同士ということで仲良くさせてもらっていて、どちらかのお店が終わったらどちらかの店に行く、という関係でした。例えば、望月さんが仕事後にお出汁を持ってきてくれて。望月さんはワインを飲めなかったんですけど、『こういうのなら飲めるんじゃないですか?』とか『この出汁にこのワイン合いますよ』なんて提案しながら朝方まで飲んだりしていましたね」

最初はご近所で飲食店を営む仲間として交流が始まったというお二人。その後、どのように『日和』オープンに繋がっていたのだろう。

「2016年の12月、望月さんと一緒に『AURELIO』でおでんとワインのクリスマスイベントをやったんです。それが好評だったこともあり、『それから組織として一緒にやってみるのはどうだろう』という話になっていきました。お互いに飲食業を長く続けたいけど一人でやる難しさも痛感していたし、給料のことや働く時間が長いとか、すごく素敵な仕事なのにいろいろ大変な部分があって、協力して助け合いながらやっていけたらいいなと。何度か話し合い、最終的に一緒にやってみようということになりました」

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(おでんは単品が300円〜。5品盛り合わせが1200円)

「せっかく独立したのになぜ?」という声も

現在は大本氏がオーナー、望月氏は『mochi』を閉店させて『日和』の料理人兼店長となり、ほか2つの店舗にそれぞれ2~3名のスタッフを配置して運営している。望月氏は、前店の経営も順調だったこともあり「みんな独立したくてがんばっているのに、また雇われになるの?」という周りの声も少なくなかったそうだ。

「前のお店を閉めることに関しては、『せっかく独立したのに』という意見がほとんどでしたね。でも、毎日のように朝方まで仕事していて、このままずっと一人でやり続けて、長く続けられるのかな?と漠然とした思いがあって。あとは、大本さんに教えてもらって自然派ワインが大好きになっちゃって。でも、なかなか自分で目利きするまでにはなれない。一緒にやれば、美味しいワインも提供できる。一度だけの人生だし新しいこともやってみたいなとか、トータルでいろいろ考えた結果ですね。それに、いつかまた機会があれば独立してもいいわけですし。決めるまではかなり迷いましたけど、一緒にやると決めた後は周囲に何を言われても迷いはなかったです」

望月氏はこのように語る。大本氏については「若いんですけど、考え方が僕ら世代というか、頑固ものの親方みたい」とのこと。それに対して「美味しいものを出すとか、楽しんでもらえる接客をちゃんとするとか。現場が一番大切だと思ってますから。あまり奇抜なことをしようとは思わないんですよね」と、大本氏。

ちなみに、ニ人はよくケンカもするそう。ジャンルの違う店のオーナーではあったが、飲食業に対する根本的な部分で共鳴し本音で語り合える関係になったことも、『日和』誕生への大きな理由となったようだ。

組織として店を運営し感じたメリットを伺うと、望月氏は、一人のときでは手が回らなかったことができるようになったことや、料理により力を入れられるようになったことを実感しているとこのこと。大本氏は、例えば魚の調理法など望月氏の技術や知識に刺激を受けるなど『AURELIO』のスタッフにとっても勉強になることも少なくないと感じているそうだ。また、経営面では、歩いてすぐの距離にある『AURELIO』と『日和』の2店舗を、お客に行き来してもらえるというメリットがある。