3月5日の外国為替市場まとめ
トランプ大統領がドル高をけん制し、アジア時間の取引開始時に米ドルは下落した。しかし、同氏の発言による影響は限定的であったため、その後すぐに反発した。今週は通貨、特にドルにとっては重要な週となるだろう。連邦準備制度理事会(FRB)のベージュブック(米地区連銀経済報告)においては労働市場の堅調さ、またその堅調さが経済に与える便益が強調される可能性がある。8日発表予定の非農業部門雇用者数(NFP)は、先月の目覚ましい伸びからは一転して成長が鈍化するはずだ。しかし雇用者数の伸びが18万人を超え、賃金が上昇した場合は、投資家はドル買いを行う可能性がある。NFPの主要指数である、ISM非製造業景況感指数は6日の発表予定であり、為替への大きな変動要因となりうる。さらには、他国の政策金利や経済指標も為替相場を大きく動かすだろう。
今夜にはオーストラリア準備銀行が政策金利の発表を行う。米中が合意に達した場合、中国製品に対する関税を撤廃するとの報道があり、豪ドルとNZドルは上昇している。2月の豪住宅許可件数やサービス業PMIが回復を見せ、豪経済指標は予想を上回っていた。先週のAUD/USDは急落していたが、豪中銀への期待感から政策金利の発表を前に安定している。前回の政策会合が行われた際、ロウRBA総裁は豪経済成長率とインフレ予想を下方修正した。海外リスクの高まりや住宅市場における需要に警戒感を示し、政策金利の見通しを中立としたことで、AUD/USDは急落した。
RBAの見解から投資家の間では2019年度の利上げは行われないとのハト派的な見方が強まった。下記の経済指標一覧から、経済状況は前回の政策決定会合時より改善していることが窺えるが、我々はRBAは引き続き警戒感を維持すると見ている。その背景としては、RBAは米中間での追加関税発動が延期されたことに対して楽観的であるが、合意がなされるまでは豪経済の見通しには引き続きリスクが残るということがある。今年度の金利がまだ公表されていないので、AUD/USDは下落基調であるものの、RBAが楽観的な見方を表明すれば反発する可能性がある。一方で、NZドルは豪ドルとの相関が強いため、NZ乳製品価格の発表はNZドルを大きく動かすとは考えられない。
英PMI統計も発表を控えており、ポンドは発表前に下落している。先週発表された製造業PMIでは2ヵ月連続で製造業の減速がみられたが、我々はサービス業も減速しているとみている。ブレグジット(英EU離脱)への不確実性によって投資や景況感が鈍化している。トレーダーは来週に行われる投票を前に、ブレグジットの動向に注目するべきだろう。ブレグジットまで1ヶ月を切った今、投資家は今まで以上に警戒感を強めている。
メイ英首相と、EUや他政党との交渉はほとんど進展を見せていない。同氏は3月12日に英国議会にて審議を行うと公表したが、リスボン条約第50条の延長を行い、ブレグジットの期限日を先延ばしする可能性が高い。ブリュッセルにおいては既に2年間の延長の話が出ている。トランプ大統領は先週、ブレグジットが行われた際の英国との貿易協定を例示した。米国は米国から英国への輸出品、特に農業製品に対しての障壁を排除して欲しいと希望しており、もし英国が中国のような「非市場経済国」と貿易協定を結ぼうとしたら「適切な対応」を取ると警告した。これは英国にとって不利であり、交渉において弱い立場に置かれることが明らかである。GBP/USDは下落しており、1.3050まで下落する可能性がある。生産者物価指数は予想を上回ったがEUR/USDは1.1350まで下落した。今週ECB会合が行われ、TELTRO(的を絞った長期資金供給オペ)の追加発表によってユーロの上昇幅は抑えられるだろう。(提供:Investing.comより)
著者:キャシー リアン