多くの資産クラスで資金流出
2019年2月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く)の推計資金流出入をみると、多くの資産クラスで資金流出があった【図表1】。特に外国株式と外国債券の資金流出が1,000億円を超え、投信全体でみると3,000億円に迫る資金流出があった。国内債券、国内REIT、バランス型には資金流入があったが、国内債券と国内REITは流入金額が100億円以下と小規模であった。また、バランス型には毎月分配型(【図表2】青太字)を中心に300億円を超える資金流入があったが、1月の600億円から大きく鈍化した。
外国株式から1,000億円を超える資金流出があったのは、2012年10月以来のことである。一部の外国株式ファンド(【図表2】赤太字)には資金流入があったが、その一方でAI関連ファンドを中心にハイテク系のテーマ株ファンドから900億円以上の資金流出があった。また、新興国株式ファンドからも300億円を超える資金流出があり、外国株式全体で流出金額は1,000億円を超えた。また、外国債券は、引き続き毎月分配型を中心に1,100億円の資金流出があった。
国内株式は様子見の投資家が多かった
国内株式は、流出金額自体は230億円と小額であったが、資金流入から資金流出に転じた。インデックス・ファンドが1月160億円の資金流入から2月200億円程度の資金流出に転じた影響が大きかった。また、中小型株ファンドも資金流入が鈍化した。
日次のインデックス・ファンドの資金動向をみると、従前どおり逆張り投資の傾向がみられたが、動く資金は小額であった【図表3】。2月上旬は株価の方向感の乏しかったこともあり、日々の資金流出入が10億円以内に納まっており、大きな資金の動きがなかった。中旬以降は大きく下落した翌営業日の12日と18日にまとまった資金流入があったが、それでも両日とも50億円に届かなかった。また資金流出も日経平均株価が21,000円台を回復した翌営業日の14日が最大であったが流出金額は70億円程度であった。下旬も日経平均株価が一時21,500円に乗せるなど株価は堅調であったが、資金流出傾向はあったものの小規模であった。2月はインデックス・ファンドの動向をみる限り、株価は上昇したが、売りも買いもせずに様子見をする投資家が多かったことが示唆される。
外国REITも再び資金流出に
1月に約2年ぶりに資金流入に転じた外国REITであったが、2月は再び500億円に迫る資金流出があった。
外国REITでは、2月に純資産残高が大きい毎月分配型のファンドからの大規模な資金流出が相次いだ。それらのファンドからの資金流出は1月に鈍化していたため、売却が一巡したと思われたが再びの大規模な資金流出となった。
再び資金流出に転じた背景には、外国REITファンドのパフォーマンスが関係していると思われる。2010年以降の外国REITファンドの累積平均収益率をみると、2015年以降、パフォーマンスが伸び悩んだことが分かる(【図表4】線グラフ)。それが足元の外国REITの反発によって、2015年初のピークの水準まで回復した(点線)。そのため、2015年以前に外国REITファンドを購入し塩漬けにしていた投資家にとっては、2月は絶好の売却機会となった可能性がある。足元と同様に累積平均収益率が2015年初の水準まで回復した2017年11月、12月が他の月と比べて資金流出が膨らんでいたことからもそのことがうかがえる(赤点線)。
中国本土株ファンドが好調
2月は、中国本土株ファンドが総じて高パフォーマンスであった(【図表5】赤太字)。中国本土株ファンドは、過去1年の収益率はマイナスであったことから分かるように、低迷していた。それが2月は、それまで重しになっていた米中貿易協議の進展に期待が膨らみ、さらにMSCIエマージング・マーケット・インデックスの見直しに伴う資金流入にも期待が膨らんだため、中国本土株が大きく上昇した。
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前山裕亮(まえやまゆうすけ)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 准主任研究員
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