「2019年の日経平均の上値は2万1,000円、下値は1万8,000円」−−。個人投資家向けのイベント「STREAM CAMP」で、株式会社マネネCEOで経済アナリストの森永康平氏と個人投資家の松本じょーじ氏(ニックネーム)が対談。冒頭の発言は、松本氏が2019年の相場の先行きについて問われて答えたものだ。

森永氏は運用会社や証券会社でアナリストやストラテジストを務めた後、フィンテック企業を経て、金融教育を推進するベンチャー企業マネネを創業。会社経営のかたわら、個人投資家としても株を取引している。松本氏は、会社員との兼業で6年以上の株取引経験がある、若手実力派の個人投資家だ。2人の対談内容の一部をお届けする。(構成・古田拓也、Finatextグループ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士/この対談は2019年1月下旬に行われました)

日経平均の上値は2万1000円、下値は1万8000円を想定

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マネネCEO、経済アナリスト 森永康平氏(写真=筆者)

森永 早速で恐縮ですが、2019年のマーケットはどのように見ておられるのでしょうか。

松本 ダウと日経先物が強い感じで上がっているので、テクニカル的には、そろそろ戻り売りの基調に一旦転じるのではないかと思っています。その水準は2万1000円くらいと想定しています。僕は、そこで一旦利益を確定すると思います。ただし、その水準を抜けるのであれば2万1800円程度まで上昇してもおかしくないと思います。

森永 強気ですね。下値についてはどれくらいを想定されていますか。

松本 下値については1万8000円くらいかと見ています。

森永 1万8000円に至るとすると、そのきっかけはなんでしょうか。

松本 そろそろ各社の決算を踏まえた業績相場に入ってくることがきっかけになるのではないでしょうか。ファンダメンタルズの観点から言えば、原材料の値上がりや人件費の増加によって、大企業のEPSが下がるかもしれません。EPSが下がると、その逆数であるPERが上がってしまうので、日本株が割高と判断されて下落してしまうというシナリオが考えられます。

地政学的リスクの観点では、米中貿易戦争やEU離脱問題も目が離せません。これらが火種になって下がるということは十分想定されると思います。

消費増税が2019年最大の争点に?

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個人投資家の松本じょーじ氏(写真=筆者)

森永 なるほど、よく分かりました。

ちなみに私は、昨年の9月頃からGAFAに代表されるアメリカのテクノロジー系企業の株価が明らかに高すぎると過熱感を覚えていて、ちょうどその頃にそろそろ相場が下がるのではないかと記事も書きましたし、Twitterでもつぶいていました。この時期は世界的に過剰流動性相場で、ほとんどの投資家がリスクオンの基調だったと思います。さすがに、そろそろ調整が入るころだろうなと思っていました。

たしかに、昨年10月からの大幅下落を受けて、今は当時と比較して株価が下がっています。しかし、僕が懸念しているのはこの先の下落相場です。日本国内の株式市場でいえば、一番の懸念ポイントは消費増税ではないでしょうか。これまでも増税がきっかけとなり消費が冷え込んだ例があります。これが起因となり、持ち直しつつあった日本経済も停滞を引き起こすのではないかと思います。

これは僕が考えている悪いシナリオです。では良いシナリオとは何かというと、安倍首相が消費増税を再度延期するというシナリオですね。

松本 しかし、安倍首相は2019年の消費増税は実施する方針だと思うのですが、再延期ということはあり得るのでしょうか。

森永 たしかに、これまで安倍首相は消費増税を実施する姿勢だったと思います。しかしながら、日銀の物価目標がいまだに達成されていなかったり、労働市場において人手不足のわりに実質賃金の上昇がそれほど見られていなかったりという状況で増税を行えば、景気の回復を腰折りすることにもつながりかねません。

消費”減”税というウルトラCにも備えが必要

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参加した個人投資家らは熱心に話に聞き入っていた(写真=筆者)

森永 そこで、安倍首相が消費税8%から5%へ減税することも頭の片隅に入れておくべきでしょう。このようなウルトラCが見られた場合は、日経平均が3万円まで上がってもおかしくないと思います。

ちなみにこの話は、ほぼありえないシナリオです。しかし、投資で大きな損失を被る時は大抵、これまでは有り得ないと考えられていたシナリオが実現してしまった時です。逆もまた然りで、誰も気づいていない材料を見つけて一足早く仕込むことこそ、大きなリターンの源泉となるのです。

まとめますと、消費税関連のシナリオとして、ポジティブシナリオは、消費増税の延期ないしは消費減税の実施。ネガティブシナリオは、このまま増税を行って景気が停滞するというものになります。このように、1つのイベントに対して複数のシナリオを想定しながら、機動的にポジションを調整する必要があると思います。