つみたてNISAの投資対象は投資信託が一般的だが、実はETFも一部対象に入っている。ETFには投資信託にはない魅力があり、ポートフォリオに加えている個人投資家も多い。しかし、つみたてNISAにおいてはパッとしないようだ。その理由について解説する。
ETFは株と投資信託のいいとこ取り
ETFは「Exchange Traded Fund」の略で、日本語では「上場投資信託」と表記される。証券取引所に上場している投資信託で、イメージとしてはインデックス型の投資信託に似ているが、株式のようにリアルタイムで売買できることが大きな特徴だ。投資信託と株式の特徴を併せ持った商品と言えるだろう。
ETFのメリットは、以下の4つに集約できる。
1.簡単に分散投資
2.手数料が安い
3.値動きが分かりやすい
4.リアルタイムで売買できる
分散投資はリスク低減のために有効なテクニックだが、複数の商品に投資するには多額の資金を必要とする。その点でETFは、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)等の動きに連動する仕組みになっているので、指数に含まれる数百・数千の銘柄に分散投資するのと同じ効果が得られる。また、ETFは販売会社への手数料や事務費用が安いため、非上場の投資信託に比べて「信託報酬」と呼ばれる保有中にかかる手数料が安い。
株式はしばしば原因不明の値動きに悩まされることになるが、ETFは基本的に基準とする指数の動きに連動するため、値動きを把握しやすい。それでいて、取引時間中であれば株式のようにリアルタイムで取引をすることができる。
つみたてNISAではETFの取り扱いが少ない
多くのメリットがあるETFだが、つみたてNISAで運用できるのは現在のところダイワ上場投信の「JPX日経400」「トピックス」「日経225」の3銘柄しかない(2019年3月時点)。
届出されている投資信託が159本であることを考慮すると、つみたてNISAで採用されているETFは極めて少ないことが分かる。さらに、これらのETFの運用会社はいずれも大和証券投資信託で、大和証券のつみたてNISAでしか取引できない(一般NISAや通常口座であれば他の証券会社でも取り扱いがある)。
ここまで少ない理由は、金融庁の厳しい基準だ。連動する指数は指定されたものであることや、対象資産が株式であることなど多くの要件が設定されているが、特に最低取引単位が1,000円以下であることがネックとなり、対象商品に組み入れる証券会社が少ないのが現状だ。
ETFでなくともつみたてNISAの投資信託の手数料は十分に安い
つみたてNISA用に最低取引単位を下げたETFを開発すればよさそうなものだが、そこまでする証券会社は少ない。ETFの主なメリットである手数料の安さが、つみたてNISAではあまり目立たないからだ。
一般の投資信託には信託報酬が2%を超えるような高コストなものもあるが、つみたてNISAでは国内インデックス投信なら税抜0.5%以下、海外インデックス投信なら0.75%以下というように基準が定められている。登録されている投信の信託報酬の平均はさらに低く、国内インデックス型は0.27%だ。中には以下のようにもっと低コストのものも存在する。
・ニッセイ日経平均インデックスファンド 税抜0.159%
・eMAXIS Slim国内株式(日経平均)税抜0.155%
一方、先ほど紹介したダイワ上場投信のETFの信託報酬は以下の通りだ。
・ダイワ上場投信-JPX日経400 税抜0.18%
・ダイワ上場投信-トピックス 税抜0.11%
・ダイワ上場投信-日経225 税抜0.16%
これらのETFの手数料も十分に安いのだが、つみたてNISA向けの投資信託はどれも手数料が低めなので、相対的にメリットが薄れてしまっているのだ。
さらに、つみたてNISA対象の投資信託はすべてノーロード(購入時手数料ゼロ)であるのに対し、ETFは株式同様に購入手数料がかかる。つまり、ETFの特有の手数料の安さを感じられないのであれば、現存する投資信託で十分ではないか、というわけだ。
複利の効果が得られないETFはつみたてNISAに不向き
取り扱い銘柄の少なさや、投資信託の手数料との差があまりないことに加え、つみたてNISAのETFには致命的なデメリットがある。それは、「複利の効果」が得られないことだ。
ETFは、利益を内部に貯めず決算時に分配金を支払う仕組みになっている。そのため利益を次の元本に加えることはできない。よって、利益が次の利益を生む「複利の効果」が生まれないのだ。この複利の効果は長期投資の最大のメリットであるにも関わらず、分配金を支払うことで次の元本を減らしてしまうETFでは長期投資の恩恵が十分に受けられないことになる。そもそもETFは、長期投資を主な目的とするつみたてNISAのコンセプトに合っていないのだ。
非課税でETFを運用したければ一般NISAを
つみたてNISAには、ETFの分配金が非課税になるメリットもある。しかし、それは一般NISAも同様だ。むしろ、取り扱い銘柄が豊富であることを考えると、一般NISAのほうがETF運用に向いていると言える。国内ETFだけでなく海外ETFも取引できる。非課税期間が5年と短いことも、長期投資に不向きなETFに適している。
複利の効果よりも分配金の非課税効果を期待する場合は、ETFは一般NISAで運用するのがいいだろう。
文・篠田わかな(フリーライター、ファイナンシャル・プランナー)/MONEY TIMES
【関連記事 MONEY TIMES】
つみたてNISAを始める 金融機関選び 4つのポイント(PR)
40代でやっておきたい「投資・運用」3つのステップ
「つみたてNISA」(積立NISA)とは?メリットやデメリットも解説
「月1,000円から」「おつりで投資」スマホで投資できるアプリ4選
「1万円」でディズニーランドの株主になる(PR)