もはや、退職金と公的年金だけでは、快適な老後生活はおぼつかないだろう。「自分で資産を作らなければ」という危機感を、多くの人たちが共有しているはずだ。日本銀行の超低金利政策が当面、見直される見込みのない今、貯蓄だけでは資産と呼べるだけのお金を生み出すことは不可能だろう。不動産投資を筆頭に、積極的な資産形成のアクションが求められている。そこで今回は、不動産投資や資産形成に必要な4つの技能「会計」「ファイナンス」「税務」「法律」について考えてみよう。

資産形成に大切な技能 1.会計

会計とは、金銭の出入りを管理すること。具体的には、「取引」を「仕訳」して、「仕訳」を「勘定」して、「財務諸表」を作成することである。不動産投資は「事業」だ。事業である以上、目先の「借り主が増えた」「減った」ということばかりに、一喜一憂していたのでは、先が危ぶまれる。年間の事業成績を検証し、次年度の事業計画を立てなければならない。

必要なのは「経済活動(事業)としてのお金の動きの記録」だが、それには会計が必要不可欠なのだ。期首から期末まで、365日もの間、すべての支出と収入を記録する。最後に会計を締めて、その年の投資の成果が「どうなったか」を、確認しなければならない。投資も資産形成も1年や2年で結果が出るものではなく、長期的な視野が必要だ。だからこそ、毎年のお金の動きについてチェックが欠かせない。

資産形成に大切な技能 2.ファイナンス

ファイナンスとは、日本語で「財政」というニュアンスがあるが、ここでの「ファイナンス」は、「現在のお金と未来に獲得するお金を使って、より良い未来を描く作業」という意味で捉えてほしい。不動産を例に考えてみよう。不動産投資はあくまでも投資だ。「ばくち」のように考えてはならない。投資である以上、投資目的・目標利益・投資期間・投資方法などを明確に設定する必要がある。

例えば、最低限でも次のような計画は用意しよう。

・投資目的:70歳時点での余裕資産の形成
・投資額:4,000万円
・投資期間:30歳~69歳
・目標利益:1,500万円(つまり元手の4,000万円を5,500万円にする)

30歳で4,000万円の現金を用意することは簡単ではない。しかし、不動産投資では、金融機関のローンを使える点が特徴だ。ローンの金利より不動産投資の利回りが上回れば、投資は成功する。

また、投資目的のマンションである場合、投資期間が完了して売却したときの益金も、目標利益(1,500万円)に含めることができる。将来的に投資マンションの買い増し、買い替えを検討することが必要かもしれない。

これが「投資判断」であり、会計とファイナンスを意識することで、投資判断は合理的に行うことができるようになる。

資産形成に大切な技能 3.税務

税務は複雑なうえに、正直に言って、「あまり歓迎できないもの」であるせいか、なかなか学習意欲がわかない。税務が苦手な個人投資家も多いのではないだろうか。とはいえ、資産形成に関係する税務はそれほど多くない。

資産形成に必要な税務の知識は、確定申告、所得税、住宅ローン減税、相続税。とりあえず、これだけ押さえておけば、数千万円規模の資産形成は十分だろう。

このような知識は「独学」も可能だが、それよりも早く確実な方法がある。それは、専門家にレクチャーしてもらうことだ。例えば、不動産投資なら、仲介業者の営業担当に教えてもらおう。彼らは不動産関連の税務に詳しく、そして、その知識を顧客に提供することを惜しまない。

資産形成に大切な技能 4.法律

法律といっても投資家自身が難しい法律を扱うわけではない。しかも、重要な法律のいくつかは税務の中に含まれている。例えば、賃貸経営をするなら、入居者とのトラブルに備えて賃貸契約に関する法律の知識は持っておいたほうが良い。

もし、あなたが副業で不動産投資を行うつもりなら、勤務先の規則を確認しておくべきだろう。最近は、企業も社会も、コンプライアンス(法令順守)には非常に厳しくなっている。しかし、副業禁止の会社でも、親から相続した住宅を賃貸・管理するケースは副業とみなされない場合もある。いずれにせよ、税務と法律は一体で学習したほうが良い。

まずは学ぶことから始めよう

今回はお金に関する4つの技能について考えてみた。いずれも突き詰めればきりがないが、個人の資産形成のために必要なものと考えれば、その知識の習得はそれほど難しくないだろう。そしてこれらの技能を習得しているかどうかは、将来に大きな影響を与えるに違いない。あなたが一流の投資家、資産家になるうえで、必須の「技能」かもしれない。