受け継がれるドライバー重視と柔らかなプレスライン
車は新しいモデルが出るたびに進化する部分が多いが、時間を超えても基本にある哲学を変えずに作り続けているメーカーは希だ。
そのひとつがBMWである。
中でも3シリーズは、初代からドライバーオリエンテッドのレイアウトを貫く象徴的なモデルだ。
初代が登場したのは1975年。
そして2019年、7代目となるニューモデルがベールを脱いだ。
スタイリングは抑揚をつけない柔らかなプレスラインで巧みに陰影をつけ、エモーショナルなデザインを追求するフォルムだ。
このようなスタイルは長く所有をしていても飽きのこないデザインになるが、取り入れてきたのはBMWと弩級のサルーン、それとラグジュアリースポーツカーメーカーだけである。
イノベーションがあるからこそ流行にとらわれることなく、段階的な進化を我々に披露していくのである。
運転する前からまったく新しい車であると体感できる
さて、新たな3シリーズのファーストモデルは330i Mスポーツである。
幅広く堂々としグリルとヘッドライトが象徴的だ。
横から見ても、先代よりも路面をとらえるにふさわしいフェンダー部分の肉付きが頼もしい。
リアのデザインは、空力的に安定感を作り出すような造形になっている。
ドアを開けてシート位置を合わせると、ポジションが低く感じられ安定感が増した。
伝統的でドライバーが扱いやすいメータークラスターやインフォテイメントも、構造が一新されて次世代を視野に入れた雰囲気が満載である。
エンジンを始動すると、4気筒ユニットであるが静粛性は高い。
それだけでもシャシーの違いが感じられる。
今回試乗したMスポーツには19インチのホイールが装着されていて、フロントとリアの扁平率が異なっている。
後輪駆動のためリアの扁平率を低くして、グリップ力を高める意図があるのだ。
見た目のスポーティさは良い意味で裏切られた
このホイールを見ただけでも乗り心地はハードな印象であることは否めない。
しかし発進していくつかの段差を越えたが、驚くほどしなやかで衝撃の収束も速い。
これならばスポーティさを保ちつつ、ハンドリングに神経質になることはない。
路面に対して柔軟に対応するサスペンションなのだ。
高速で走ると、さらにその乗り心地のよさを感じることができる。
大径のホイールに扁平率の低いタイヤはとにかくかっこいいが、乗り心地やハンドリングが犠牲になる場合もある。
しかし、新型3シリーズのMスポーツは違った。
シャシー性能のポテンシャルを上げているからこそ、これだけのサスペンション設定ができるのである。
しなやかでもサスペンション機能に曖昧さはない。
だからこそハンドリングが正確なのだ。
2リッターターボユニットから258psを発揮するが、馬力よりも40kgf・mを超えるトルクの方がこの車のポテンシャルの高さを物語っている。
その性能は伸びやかというよりも、パンチを生かした加速感が特徴である。
箱根ターンパイクのワインディングの上りは扱いやすく、どこから踏んでも不満のない加速がドライバーとしては悦に入る瞬間だ。
ステアリングフィールは重めでしっとりとしていて、絶えず路面とのコンタクトを取れている雰囲気が伝わる。
こういった部分もBMWの真骨頂と言うべき、駆け抜けるためのハンドリング性能である。
下りでのフィールも試してみたが、ブレーキを強く踏んだときでもサスペンションの取り付け剛性が高く不安要素がまったくない。
ペダル剛性もキャリパー剛性も申し分ない。だからコントロールしやすいのだ。
他メーカーに比べてこのサイズのセダンでは、一歩先を行くドライビングを披露してくれた。
ミディアムFRセダンでは、排気量や気筒数を超えた価値を伝えるモデル。それが330i Mスポーツだ。
photo/尾形和美
【諸元・スペック表】
■グレード:BMW 330i Mスポーツ
■乗車定員:5名
■エンジン種類:直列4気筒DOHC+ターボ
■総排気量:1998cc
■最高出力:190(258)/5000 [kW(ps)/rpm]
■最大トルク:400(40.8)/1550-4400[N・m(kgf・m)/rpm]
■駆動方式:FR
■トランスミッション:8AT
■全長x全幅x全高:4715 x 1825 x 1430(mm)
■ホイールベース:2850mm
■ガソリン種類/容量:ハイオク/59(L)
■WLTCモード燃費:13.2(㎞/L)
(提供:カーセンサー)