ボルボ 940エステートに試乗

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▲クラシックカーでもなく、最新のボルボ車でもない、やや微妙な立ち位置に属する940エステートだが「買い」と思える1台に出合ったので紹介したい

過日、川崎市の某所にて「KLASSISK GARAGE TEST DRIVE」なる小規模な試乗会が開催された。

これは、ボルボ・カー・ジャパン直営のクラシックボルボ整備&販売拠点である「KLASSISK GARAGE(ボルボ・クラシック・ガレージ)」が、その取り組みと実力を一部メディアにアピールする目的で開催した試乗会だ。

当日用意されていたクラシックボルボは、走行35万kmの70年式122S アマゾンを含む計4モデル。

だがその中の1台である「94年式ボルボ 940エステート ポラール」について、まずは取り急ぎソッコーでレポートしたい。

なぜならば、他の3車が(少なくとも試乗会開催時点では)非販売車両であったのに対し、この96年式940エステートだけはれっきとした販売車両。それもいまこの瞬間、まだ「SOLD」になってなければカーセンサーnetにもごく普通に掲載されている個体だからである。

誰かに買われてしまわないうちに、すみやかに「96年式ボルボ 940エステート ポラール Refreshed By VOLVO KLASSISK GARAGE(支払総額252万円)」という商品車両の実相を貴殿にお伝えしたいと考えたのだ。

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▲こちらが2019年3月現在、まだ販売されているボルボ 940エステート。1996年モデル ポラールSX ワンオーナー車

ボルボ 940エステートという車自体に関する解説は少しで構わないだろう。

940エステートは、1990年から1997年まで販売された、当時のボルボのトップレンジである。

搭載エンジンは2.3Lの直4自然吸気または同2.3Lのターボ付きで、ターボにはマイルドな低圧ターボとパワフルな通常ターボの2種類がある。試乗車両の96年式ポラールは最高出力130psの低圧ターボだ。

そしてこの個体は、とある女性が新車時から11万kmまで乗り続けたワンオーナー車だという。

それをKLASSISK GARAGEが腕によりをかけて、そしてそのプライドにかけて、仕上げた1台である。

徹底的な整備と各種リペアを行い、替えるべきパーツはすべて交換した。灯火類は新品に交換し、エンジンは走行5万kmの個体から移植したという。そしてついでにポラールではなく「940ターボ」の外観へとプチカスタマイズも行った。

インポーターの公式拠点ではあるが、必ずしも「すべてがフルノーマル」であることにはこだわらないのが、KLASSISK GARAGEのニクいところだ。

そんなこんなの96年式940エステート ポラールに乗り込んでみると、いきなり過去の世界へタイムトリップしたような感慨に襲われる。

とはいえそれは新車当時、つまりこの個体でいう1996年への時間旅行ではない。もしもシートやステアリングなどすべての内装パーツが新品に交換されていたならば、もちろん「気分は1996年!(平成8年!)」になったことだろう。

だがこの個体はそうではなく、あくまで整備とリペア(と必要な部品交換)によって「リフレッシュ」された中古車だ。それゆえ「気分はだいたい2000年!」との感慨を、筆者は覚えたのだ。

つまりこの個体の風合いは、「新車から3~4年がほどよく経過した頃の96年式940エステート」のそれにきわめて近い。

筆者はちょうど2000年頃、とある中古車専門誌で編集記者をしていた。そのため「3~4年落ち940エステート」に関してはけっこう詳しい。

これはまさに2000年頃の中古940エステートだ。実際には、今は2019年だというのに。

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▲人間工学に基づき設計されたというシンプルなインパネ。シートの質感や雰囲気もまた“あの頃”を思い出させる
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▲運転席前のウインドウには独特の駐車チケット入れが。確かに、この当時のボルボ車はこうだった……とスタッフ一同盛り上がった
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▲ラゲージには、オプションのガードネットとトノカバーも付いていた

内外装のビジュアルや手触りだけでなく実際に走らせてみても、この「96年式940エステート in 2019年」は「96年式940エステート in 2000年」にしか感じられない。

エンジン、足回り、ブレーキ、エアコン、ウインカーのタッチ、その他もろもろ――のすべてが「せいぜい数年落ちのボルボ940」なのだ。実際は、数年落ちではなく23年落ちなのだが。

ちゃんと直すと、自動車というのはここまでシャキッとするものなのかと、今さらながらに驚愕した筆者@中古車記者生活23年目であった。

素敵な個体であることは分かったが……

さて。

この96年式ボルボ 940エステート ポラール Refreshed By VOLVO KLASSISK GARAGE(支払総額252万円)が「買い」か否かと問われれば……間違いなく「買いでしょう!」と筆者は答える。

カーセンサーに気を使ってそう言うわけでも、試乗会をセッティングしてくれたボルボ・カー・ジャパンにおもねるわけでもなく、単純にそう思う。

なぜならば、この種の年式の輸入車を「まともに走れる状態」まで持っていくにはけっこうなお金と手間がかかるもので、まともに走るだけでなく「満足できる感じ」にまで持ってくるには、さらにカネと手間がかかる。

それを考えると、この個体の車両本体価格238万円/支払総額252万円というプライスはきわめて妥当というか、「むしろちょっと安いかな?」と思うからだ。

もしも貴殿が良質な940エステートを探しているならば、「じゃあコレにしたらどうですか?」と、余計なおせっかいを焼きたくなる。

だが……そもそも「940エステートという車種自体がやや微妙である」との見方はあるだろう。

940は1990年デビューと、この種の趣味車としては(ある意味)新しい。それゆえ雰囲気としてのクラシック感にやや欠けることは否めないのだ。

その場合は、同じくKLASSISK GARAGEが仕上げているはずの「240エステート」を選べば万事解決する。240であればビジュアル、手触りともにクラシック感は100点満点である。

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▲こちらがボルボ 240エステート。いまだ人気の高い車種だ

問題は3月半ば現在、KLASSISK GARAGEには売り物としての240エステートがないことだ。

しかしこれも時間が解決するだろう。もう少し待てば、今回の試乗会にあった93年式の240エステート タックや、その他の240が(たぶん)売り物として出てくるはずだからである。

text/伊達軍曹
photo/尾形和美、田中宏幸

(提供:カーセンサー